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モデルの概要
屋内伝搬とは建物内に送信局と受信局がある場合の伝搬である。ここでは、ITU-Rに記載されているP.1238[1]とM.1225[2]を取り上げて説明する。これらが対象としている環境は、建物としてはビルや一軒家であり、ビルの中の部屋としてはオフィスや会議場などである。また商用施設のように広い空間もある。送信局と受信局の位置としては、同一フロア内にある場合や異なるフロアにある場合がある。ここでは、屋内伝搬特性として伝搬損失を対象にしおり、その他の多重波伝搬や交差偏波識別度等は扱わない。P.1238は文献[3,4]で、 M.1225は文献[5]でも紹介されている。また、文献[6]には屋内での伝搬特性が解説されている。

(1)ITU-R P.1238モデル
ITU-R P.1238には屋内伝搬のサイトージェネラルモデルとサイトースペシフィックモデルの2つが示されているが、ここではサイトージェネラルモデルを紹介する。この伝搬損失\( L_b(d, f) \)の式は次のとおり。
\(
L_b(d, f) = 10 \alpha \log_{10} d + \beta + 10 \gamma \log_{10} f \qquad {\rm (dB)}
\tag{1}
\)
ここで、
\( d \):3次元の送受信間距離(m)
\( f \):周波数(GHz)
\( \alpha \):距離に対する係数
\( \beta \):オフセット係数
\( \gamma \):周波数に対する係数
なお、式(1)には短区間変動として平均0で標準偏差\( \sigma \)(dB)のガウス分布が加えられる。表1に推奨される係数値を示す。

(2)ITU-R M.1225モデル
ITU-R M.1225はIMT-2000のテストを行うために作られたモデルである。M.1225の中の屋内のオフィスの伝搬損失モデルはCOST231の屋内モデルを元に作成された。伝搬損失\( L \)は次のとおりである。
\(
{\displaystyle L = 37 + 30 \log_{10} R + 18.3 n^{ \left( \frac{ n+2 }{ n+1 } – 0.46 \right) } } \qquad {\rm (dB)}
\tag{2}
\)
ここで、\( R \)は送受信間距離(m)、\( n \)は送受信間にあるフロアの数である。
・伝搬損失\( L \)は自由空間損失より小さくならない。
・12dBの対数正規分布の標準偏差が予想される。
・IMT-2000用なので周波数は2GHzである。
・見通しの有無による区別はない。
・フロア数\( n \)に対するフロア間損失は、\( n \)=0で0dB、\( n \)=1で18.3dB、\( n \)=2で33.5dB、\( n \)=3で43.6dBとなる。
計算例
ITU-R P.1238とITU-R M.1225の屋内伝搬損失の計算例を示す。

参照
[1] Rec. ITU-R P.1238-12, “Propagation data and prediction methods for the planning of indoor radiocommunication systems and radio local area networks in the frequency range 300 MHz to 450 GHz,” ITU-R, 2023.[2] Rec. ITU-R M.1225-0, “Guidelines for evaluation of radio transmission technologies for IMT-2000,” ITU-R, 1225.
[3] 井原俊夫, 真鍋武嗣, “屋内通信/無線LANの伝搬,” 電波伝搬ハンドブック, 細矢良雄(監修), 第24章, (株)リアライズ社, 東京, 1999.
[4] 北直樹, “高周波数帯における無線ゾーン設計のための電波伝搬,” アンテナ・伝搬における設計・解析手法ワークショップ(第71回)テキスト, pp.86–91, 信学会AP研専門委員会, May 2024.
[5] 岩井誠人, “移動通信における電波伝搬,” pp.145–152, (株)コロナ社, 東京, 2012.
[6] 明山哲, “移動通信回線の伝搬,” 無線通信の電波伝搬, 進士昌明(編著), 第12章, pp.239–242, (社)電子情報通信学会, 東京, 1992.


