モデルの概要
坂上式[1]は、市街地構造を考慮した伝搬損の推定モデルである。市街地構造とは、道路幅や建物の高低等の市街地の状況である。坂上式が適用できる周波数範囲は450MHzから2,200MHzまでである。この坂上式を基にして、周波数特性を一部変更して、周波数範囲を450MHzから2,600MHzに拡張した推定式が拡張坂上式[2]である。
文献[3-6] では移動局アンテナ高補正が検討された。文献[3]では、3, 5, 8GHzの測定データを用いて拡張坂上式を評価して、拡張坂上式がこれらの周波数帯、また移動局アンテナ高補正についても適用できることが示されている。
数式
文献[2]の拡張坂上式は次のとおり。
\begin{multline}
L = 100−7.1 \log W + 0.023 \theta + 1.4 \log h_s + 6.11 \log <H> \\
− \{24.37−3.7(H/h_{b0})^2\} \log h_b +(43.42−3.1 \log h_b) \log r + 20 \log f
\tag{1}
\end{multline}
文献[3-6]では、移動局アンテナ高の補正値\(a(h_m)\)が検討されている。式(1)に\(a(h_m)\)を減算することで求められる。
\(
a(h_m)=3.2 [ \log (11.75 h_m)]^2 − 4.97
\tag{2}
\)
<メモ>
周波数特性に関連して、文献[7]は都市内のマイクロセルとマクロセルの両方で450MHz~15GHzの伝搬損失を測定して、周波数特性が\(20 \log f\)であることを示している。実環境での測定に基づいて、この高い周波数帯の特性が示されたのはこれが初めてである。
パラメータ
記号 | パラメータ説明[単位] | 適用範囲 |
\(L\) | 伝搬損 [dB] 約80m区間の中央値(市街地構造が一定とみなせる区間) | |
\(f\) | 周波数 [MHz] ※文献[3]では8,000MHzまで適用可能であることが示されている。 | 450~2,600MHz |
\(r\) | 送受信間距離 [km] | 0.5~10km |
\(<H>\) | 平均建物高(移動局がある地面からの高さ)[m] 送受信間にある建物平均値 | 5~50m |
\(h_b\) | 基地局アンテナ高(移動局がある地面からの高さ)[m] | 20~100m |
\(h_{b0}\) | 基地局アンテナ地上高(基地局の地面からの高さ)[m] | |
\(H\) | 基地局近傍の建物高(基地局の地面からの高さ)[m] 基地局から半径100m以内の建物高の平均値 | \(H≦h_{b0}\) |
\(W\) | 移動局近傍の道路幅 [m] | 5~50m |
\(\theta\) | 道路角(基地局と移動局を結ぶ線と道路の方向とのなす角)[度] | 0~90度 |
\(h_s\) | 道路際の建物高 [m] 道路の直線区間にある建物高の平均値 | 5~80m |
\(h_m\) | 移動局アンテナ高[m] | 1~10m |
計算例
文献[2]の拡張坂上式の計算例は次のとおり。