大会名称
2005年 情報科学技術フォーラム(FIT)
大会コ-ド
F
開催年
2005
発行日
2005/8/22
セッション番号
14
セッション名
暗黒時代の大学に夜明けは来るか -黒船来航!官民連携の大学評価結果公表-
講演日
2005/9/8
講演場所(会議室等)
第3イベント会場
講演番号
N-1
タイトル
暗黒時代の大学に夜明けは来るか -黒船来航!官民連携の大学評価結果公表-
著者名
阪田 史郎
キーワード
抄録
1992年に210万人を数えた18歳人口は年を追うごとに減少し,2010年には120万人まで落ち込むと予測される.この動きは大学を直撃し,2007年には大学志願者数が入学定員を下回る,いわゆる「全入時代」に突入するのは必至だ.つまり,大学が入学者を選抜するのでなく,大学が選ばれる側に廻るのである. 90年代初めの大学設置基準大綱化を皮切りとして,「個性輝く大学」のあり方が議論され,大学を研究・教育の内容で選ぼうとする動きが高まったと言われる.学部の改組が進み,情報系の学部が急増したのもこの頃だ.しかし,この間受験生は,実際に学部の教育や研究の内容を見て大学を選んできただろうか.関心が高まったのは学部の内容ではなく,単なる学部のイメージだったのではないか.現に,90年代後半は右肩上がりだった情報系学部の人気は,ITバブルの崩壊がささやかれるとともにあっけなく後退した.学生に人気のあるのはコンテンツ制作やロボットなど,産業の実態とは結びつかないところばかりである.しかし,大学側は受験生を集めるためにこういった講座を揃えようとするため,実際に産業界で必要なネットワークや組込み系,ソフトウエアエンジニアリングなどの人材は不足するばかりだ.教育の内容で見ても,岩手県立大学や静岡大学など,情報分野で「特色ある大学教育プログラム」を取った大学ですら,受験生の減少が続いている. ITは21世紀の産業の基盤であり,ここを担う人材の質は産業競争力全体に影響すると言っても過言でない.にもかかわらず,大学での教育は,昨年度の報告でも述べたとおり産業界とは乖離した状態にあり,先端をリードするエリート人材も,現場の即戦力となる技術者人材も生み出せていない.このような事態は,欧米のみならず,ITによる産業技術立国を目指して,産業界と大学とが一丸となって人材育成を目指すアジア諸国と比較しても大きく遅れを取っており,今後国際競争力のますますの低下は避けられないとも言える.今こそ,産業界と大学がともに真摯にこの現状と向き合い,人材育成問題に取り組むべきである. 河合塾と三菱総合研究所は,2004年度に経産省の委託事業で「学力プロファイルのミスマッチ実態調査」を行い,産業界の求める知識・技術と大学教育の内容とのミスマッチの存在を明らかにした.今回はこの手法をIT分野にも応用して,昨年度報告したIT分野の大学活動評価の具体的なランキング結果を報告する.さらに,この手法を大学活動の自己診断カルテとして活用する方法も紹介する.また,事業の一環として調査した,海外における産業界と大学とのコラボレーションによる人材育成への取り組みについても報告する. 厳しい時代の中で大学がいかに再生を図るかに資する提言を,産業界・大学の両方の立場から行っていきたいと考える.