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電気系6学会の情報化社会の発展に向けた提言

 我が国は、経済活動のグローバル化、ボーダレス化による競争の激化、急速に進む高齢化等による産業労働力の低下、或いは地球環境・資源問題等地球規模の課題に直面しており、これらの課題解決には社会、経済システムの抜本的改革が不可欠であり、その牽引役として科学技術が果たす役割は大きくなっています。

 このような状況にあって‘95年に科学技術基本法が公布・施行され‘96年に科学技術基本計画が閣議決定されました。その中で「我が国の科学技術を巡る環境を抜本的に改善し、産官学全体の研究開発能力を引き上げるとともに、それが最大限発揮され、またその研究成果が円滑に国民や社会、経済に還元されるような施策を講ずることが、科学技術振興を目指す我が国の最優先課題である」とされています。これを受け、産官学連携の強化、研究開発についての厳正な評価など、新たな研究開発システム構築のための制度改革等の推進、また、研究開発基盤整備も含め政府研究開発投資の拡充等の施策が打ち出されています。

 中でも、近年飛躍的に進展を遂げ、現在、熾烈な国際競争を強いられている情報・通信技術は、今後の我が国を支える中核技術として、「人々の円滑なコミュニケーションの実現、情報公開の支援、行政サービスの電子化及び高度な防災ネットワークの構築等による豊かで安心できる社会の実現」、「地理的・時間的制約を超えたネットワークの実現による産業構造の変革とライフスタイルの変化」、「地球環境保護への貢献」など、社会、経済、生活、文化等の様々な分野において中心的な役割を果たすことが期待されています。

 また、欧米においては、爆発的に普及するインターネットの次世代技術を、将来の経済発展のコア技術として位置付けた国家戦略的プロジェクトが進行しています。従って我が国においても21世紀における情報化社会に向け、情報・通信技術の発展に向けた産官学連携による国家的取り組みが不可欠かつ急務となっています。

 以上のような背景から情報・通信に関わる6学会は、科学技術基本法の精神に則り、これまで長年に亘る研究会や学会発表など国際的かつ産官学横断的な技術交流を通して培われた技術評価能力と幅広い分野からの人材を活用し、我が国が抱える課題の解決に貢献していきたいと考えています。

 具体的には、「社会・経済システム改革の牽引役となる社会インフラとしての情報・通信基盤の整備促進」、「情報・通信がもたらす社会的効用を誰もが享受するために不可欠な情報リテラシー(注)醸成」、「我が国の科学技術が抱える課題の効率的解決に向けた産官学の連携強化」という3つの視点に立って、下記の通り、国・産業界に対して各種施策の取り組みを要望するとともに、学会自らも施策に取り組んでいきたいと考えています。

注:情報リテラシーとは、パソコン等のメディア或いは情報通信ネットワークを活用して、真に必要な情報を取捨選択し、自ら情報を発信し得る能力を示します。

別紙参照

 

 

1.国及び自治体の取り組みへの要望

(1)情報・通信利用環境の整備

 将来を担う若者に対する情報リテラシーの醸成と教育への情報・通信の活用を狙いとした小中高等学校、大学における情報・通信環境の整備拡充を要望します。 また、次世代の超高速研究情報ネットワークの構築、及び先端的なアプリケーションの開発を要望します。 更に、国及び自治体が自ら行う行政サービスの電子化、ネットワーク化等の公的アプリケーションを先導的に導入することによる社会全体の情報化を促進するなど、これらの環境整備を国家的プロジェクトとして推進することを要望します。

(2)情報化促進のための法制度の整備

 産業界が取り組む情報・通信インフラの整備拡充を促進する制度の充実、或いは情報化社会にふさわしい、教育、医療、電子商取引等に関する法律や著作権法の整備などを要望します。

(3)産官学の連携・交流の促進

 産官学の研究者が自由に交流し、相互に知的刺激を与えることによる研究活動のより一層の活性化を図るとともに、産官学のイコールパートナーシップに基づく共同研究の更なる推進を要望します。

2.産業界の取り組みへの要望

(1)情報・通信インフラの整備・拡充、利用環境の整備支援

 光ネットワーク技術、次世代インターネット技術、モバイル通信技術による高速で多様な情報・通信を可能とするインフラの早期整備、学校等教育機関に対する情報・通信環境の整備支援及び技術支援を要望します。

(2)情報倫理への対応強化

 官学が進める情報化社会におけるルール(情報倫理)作りに対して、プライバシーの保護や有害情報対策など、具体的対応の強化を産業界に要望します。

(3)産官学の研究リソースの相補的連携

 産業界が有する技術開発力に、国の研究機関が担う基盤研究の力と、知的集団としての大学等の基礎科学研究の力を相補的に組み合わせることにより、基礎科学から新技術開発に至る研究開発力のトータアップを要望します。

3.学会自ら取り組む施策

(1)学会からの多様な情報発信

 情報ネットワークにより学会から多様な情報発信を行い、学会と一般社会との情報交流を活性化していきます。このような活動を通して学会が有する技術情報を世の中に提供し、技術が社会と融和しながら広く普及していくことに貢献します。

(2)ボランティア活動による情報リテラシー醸成への貢献

 学会は、子供、学生、社会人を対象とした公開教育講座やセミナーなどを開催し、社会全体の情報リテラシーの醸成に貢献していきます。特に、将来を担う小中学校の児童を対象とした、ボランティアによる情報・情報手段の活用能力の修得支援や、情報倫理に関する自主基準の雛形の提示などを行いたいと考えています。

(3)学会が有する技術評価能力の活用

 学会は、論文誌、研究会、発表会などの活動を通して、学会が有する技術評価の能力を積極的に活用し、産官学が行う様々な分野での研究活動が効果的且つ効率的に推進されるよう支援し、急激な技術革新に対応して行きます。

以上

(社)電気学会 会長 正田 英介
(社)照明学会 会長 板谷 良平
(社)応用物理学会 会長 伊藤 良一
(社)映像情報メディア学会 会長 長谷川 豊明
(社)情報処理学会 会長 戸田 巖
(社)電子情報通信学会 会長 金子 尚志

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