報告
News letter No.192(2024年1月)
【報告】

「第35回国際電波科学連合総会(URSI-GASS 2023)開催報告」

URSI日本国内委員会 / 委員長 八木谷 聡(金沢大学)/副委員長 小林 一哉(中央大学)/主幹事 芳原 容英(電気通信大学)

委員長 八木谷 聡(金沢大学)/副委員長 小林 一哉(中央大学)/主幹事 芳原 容英(電気通信大学)

URSI総会(URSI General Assembly and Scientific Symposium: URSI GASS)は国際電波科学連合(International Union of Radio Science: URSI)が3年ごとに開催する電波科学分野における世界最大の国際会議です。電磁波伝搬・計測から環境電磁工学、エレクトロニクス、フォトニクス、地球、宇宙、天文、生体を含む広範な分野にわたる電波科学関連技術の研究領域において世界各国の研究者・技術者が一堂に会して研究発表ならびに情報交換を行う国際的な場を提供し、世界の電波科学ならびに関連の研究・開発の一層の活性化と発展に資することを目的としています。URSI総会は過去に日本で2回開催され(1963年東京、1993年京都)、共に大成功を収めてきました。

第35回国際電波科学連合総会(URSI GASS 2023)はわが国での30年ぶり3回目の開催となる記念すべきURSI総会であり、電子情報通信学会の主催ならびにURSI及び日本学術会議の共同主催により、2023年8月19日~26日に札幌コンベンションセンター(北海道札幌市)にて開催されました(https://www.ursi-gass2023.jp/)。参加者数は49カ国から1,434人(国内447人、海外987人)で、投稿論文数は1,682件(うち採択1,680件)、発表論文数は1,443件に上りました。これは当初の想定を大幅に上回り、参加者数、論文数ともに、コロナ禍以前の2017年にカナダ・モントリオールにて開催された第32回URSI総会の投稿論文数、参加者数をも上回る規模となりました。

2023年8月20日には、秋篠宮皇嗣殿下の御臨席のもと多数の来賓を迎えて開会式を開催しました。約1,000名もの会議参加者及び同伴者が出席し、盛大かつ印象深い開会式となりました(図1)。開会式に引き続き、URSI 100年の歩みについての動画上映、及び2023年URSI学術賞授賞式を実施しました。

図1 URSI GASS 2023開会式

会議では、基調講演3件、公開講演1件、ワークショップ2件、A~K分科会チュートリアル10件、ECRチュートリアル3件、オーラルセッション131件、女性研究者セッション4件、学生論文コンテスト特別セッション3件、及びポスターセッション2件が実施され、電波科学分野における最先端の研究成果に対する活発な議論がなされました。オーラル及びポスターセッションの様子を図2及び図3に示します。

図2 オーラルセッション
図3 ポスターセッション

URSI GASS 2023ではこれまでのURSI総会と同様に、電波科学分野における優秀な若手研究者を発掘、支援すべく、2つの若手研究者プログラムである学生論文コンテスト(Student Paper Competition: SPC)及び若手研究者学術賞(Young Scientist Award: YSA)を実施しました。これらのプログラムには多数の応募(SPC 62名、YSA 186名)があり、SPC受賞者11名、及びYSA受賞者97名を選考し表彰しました。YSA受賞者を図4に示します。また若手研究者向けのプログラムとして、若手研究者スクール、若手研究者ネットワーキングイベント、及び若手研究者パーティ―を実施し、学生を含む数多くの若手研究者が参加、交流する場を提供しました。

図4 URSI GASS 2023 YSA受賞者

また特別プログラムとして、「電波科学における女性研究者(Women in Radio Science: WIRS)ワークショップ」、及び「災害リスク軽減と管理ワークショップ」を開催しました。いずれも時宜を得た世界的に関心の高いテーマであり、多数の参加者が熱心に討論を行いました。

会場には電波・情報通信関連の企業展示ブースが22件設けられ、多くの会議参加者が展示に立ち寄り、ブース担当者と熱心に情報交換を行う姿が見られました。

併せて、会期中にはURSI役員会やURSI理事会などの各種ビジネスミーティングが開催されました。特にURSI加盟各国の代表者らが参加するURSI理事会においては、次期(2023年~2026年)URSI役員の選出、2029年URSI総会開催地の選定、各国におけるURSI分担金の再設定などの重要議題について審議がなされました。

さらに本国際会議の関連イベントとして、会期中の2023年8月24日には「持続可能な社会を目指した電波科学が拓く未来」と題する市民講座を開催し、札幌市内の中高生・一般市民及び関連企業の研究者・技術者に広く参加いただきました。本市民講座では、電波科学研究の最前線で活躍する著名な研究者を2名招聘し、最新の研究成果について分かりやすい講演がなされました。また会期終了翌日の2023年8月27日には小学生を対象とした体験型イベント「科学教室 -見えないでんぱを感じてみよう」として、ゲルマニウムラジオの製作教室を行いました(図5)。札幌及び陸別の2会場に教室を設け、両者をインターネットで接続することで、札幌会場と陸別会場の小学生が交流する機会を作りました。以上のイベントは参加費無料で実施し、子どもから大人まですべての世代の方々に将来の社会生活における電波科学関連技術の重要性を強く発信し、電波科学への理解を深めてもらうことができました。 URSI GASS 2023は多数の参加者を得て大成功裏に終了しました。札幌から世界に向けて最先端の研究成果が発信されたことにより、国内外における電波科学研究の飛躍的発展につながるものと期待しています。引き続き世界のURSIコミュニティにおける我が国のプレゼンスを高めるため、私たちURSI日本は組織的に電波科学関連活動を推進していく所存です。最後になりますが、URSI GASS 2023の開催に対してご支援・ご協力頂いた関係各位に厚く御礼申し上げます。

図5 体験型イベント

なお、URSI GASS 2023の記録動画を以下のサイトで公開しています。ぜひご覧ください。

(1) URSI GASS 2023メモリアル動画

(2) URSI GASS 2023開会式(第1部:開会式)

(3) URSI GASS 2023開会式(第2部:URSIの歴史)

(4) URSI GASS 2023開会式(第3部:学術賞授賞式)

(5) URSI GASS 2023閉会式https://www.youtube.com/watch?v=l9TzukYBClY

著者略歴:

八木谷 聡:1993金沢大自然科学研究科修了、博士(工学)。同年同大助手。1997~1998米国ミネソタ大客員研究員。現在、金沢大理工研究域教授・先端宇宙理工学研究センター長。日本学術会議連携会員。2018北陸総合通信局長表彰(電波の日功労)受賞。

小林 一哉:1982早稲田大理工学研究科修了、工学博士。同年中央大専任講師。現在、中央大理工学部教授。日本学術会議第22~25期連携会員、日本政府観光局MICEアンバサダー、URSI副会長・副事務局長。国際会議MMET*2016でM. A. Khizhnyak Award受賞。 芳原 容英:1997電気通信大学電気通信学研究科修了、博士(工学)。同年応用物理研(露)客員研究員。現在、電気通信大情報理工学研究科教授、宇宙・電磁環境研究センター長。日本学術会議第25期特任連携会員。2012日本大気電気学会学術研究賞受賞

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