会長挨拶
電子情報通信学会
エレクトロニクスソサイエティ会長
加藤 和利(九州大学)

電子情報通信学会 エレクトロニクスソサイエティ会長
加藤 和利(九州大学)

このたび、電子情報通信学会エレクトロニクスソサイエティの会長を務めさせていただくことになりました。長年にわたり本ソサイエティの活動を支えてこられた会員の皆様、研究専門委員会や論文誌、国際会議などの運営に携わってこられた皆様に心より感謝申し上げます。微力ではありますが、エレソのさらなる発展に向けて尽力してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

私は半導体デバイスの研究に携わってから約40年になります。その間、日本の半導体産業が世界をリードした時代、通信バブル崩壊後の厳しい時代、そして近年の復活の機運まで、その浮き沈みを研究者として現場で経験してきました。そのような変化の激しい時代の中でも、常に私を支えてくれたのは研究仲間との交流であり、学会という場でした。研究会での議論や学会での出会いは、新しい研究の方向性を与えてくれるだけでなく、多くの共同研究や人的ネットワークのきっかけにもなりました。振り返ってみると、私自身の研究人生は学会活動とともにあったと言っても過言ではありません。

若い頃は所属する組織のため、そしてそれを通じて社会に貢献したいという思いで研究に打ち込んできました。大学に籍を移してからは、研究と同じくらい学生教育に力を注ぐようになりました。学生たちは研究会や大会での発表を目標として研究に取り組み、発表の場で多くの刺激を受けながら成長していきます。発表を目指して研究を進め、議論を通じて新たな着想を得て次の研究につなげる。この好循環の中で、多くの学生が研究者や技術者として大きく成長していく姿を見てきました。現在、卒業生の多くが大学、研究機関、企業において活躍し、この分野の発展を支えています。学会は研究成果を発表する場であると同時に、人材を育成する場でもあることを私は強く実感しています。

近年、生成AIをはじめとする情報処理技術の発展は目覚ましく、社会のあらゆる場面でデジタル化が進んでいます。しかし、その一方で、AIや情報技術だけで社会が成り立つわけではありません。現実世界の情報を取得するセンシング技術、それらを高速かつ効率的に伝送する通信技術、そしてそれらを支える半導体、光デバイス、高周波技術、実装技術などのハードウェアがあってこそ、情報社会は成立します。むしろAI時代になればなるほど、それを支えるハードウェアの重要性は高まっていくと考えています。

エレクトロニクスソサイエティは、そのようなハードウェア技術を中心とした研究者・技術者が集う場です。半導体材料、電子・光デバイス、集積回路、マイクロ波・ミリ波技術、実装技術、計測技術など、多様な分野を包含しており、日本が国際的な競争力を持つ分野も数多く含まれています。これらの技術は、今後の情報通信社会を支える基盤技術であり、その発展においてエレソが果たす役割はますます大きくなると考えています。

私は昨年度、次期会長として国際委員会の活動に参加する機会をいただきました。その中で、学会の国際化に向けて多くの関係者が熱心に活動されていることを改めて知ることができました。一方で、研究活動の国際化が急速に進む中、海外会員数はむしろ減少傾向にあり、学会としての国際的な存在感をどのように高めていくかという課題も感じました。しかし、その活動に参加する中で多くの示唆を得ることもできました。今後はそれらの経験を活かし、具体的な施策として実行に移していきたいと考えています。

電子情報通信学会では、国際化推進の一環として各ソサイエティにフラグシップ国際会議の創設を推奨しています。しかしエレクトロニクスソサイエティは以前から国際会議活動に積極的に取り組んできました。既に国際的に高い評価を受けている会議を有しており、この点では学会内でも先進的な立場にあります。

さらにエレクトロニクスソサイエティの強みは、大規模国際会議だけではありません。研究会レベルでも国際化への取り組みが着実に進んでいます。昨年度にはMWPTHz研究会およびPICS研究会がそれぞれ台湾において研究会を開催しました。また、LQE、OPE、PICSの各研究会が中心となって毎年開催しているPhotonics Device Workshopは、日本国内で開催されながらも著名な海外研究者が参加する国際的な研究会として継続しています。このような活動は、海外の研究者との交流機会を提供するとともに、若手研究者や学生が国際的な研究環境に触れる貴重な機会にもなっています。今後はこれらの活動を基盤として、研究会レベルでの国際交流をさらに促進できるよう支援していきたいと考えています。

国際化は、単に海外へ出ていくことだけを意味するものではありません。海外の研究者や学生を日本に招き、日本の研究会や国際会議に参加してもらうことも重要です。一つの大学や企業だけで国際交流の機会を十分に確保することは必ずしも容易ではありません。しかし学会という枠組みを活用すれば、多くの研究者や学生が国際的な交流を経験することができます。エレクトロニクスソサイエティとしても、そのような機会を積極的に提供していきたいと考えています。

今年度から第二種研究会の収入の一部を共通費として本部へ供出する制度が始まりました。さらに来年度からは国際会議についても同様の制度が適用される予定です。国際会議や研究会活動を活発に展開しているエレクトロニクスソサイエティにとっては、運営面で大きな影響を受ける可能性があります。しかし、学会全体の持続的な発展を考えれば、ソサイエティと本部が協力しながら最適な仕組みを模索していくことが重要です。本部、ソサイエティ、そして会議主催者のすべてにとって有益な制度となるよう、引き続き対話を重ねていきたいと思います。

もっと本質的な課題に目を向ければ、会員数の減少こそが様々な問題の根源にあります。制度変更や経費削減だけでは根本的な解決にはなりません。学会の価値を高め、会員を増やしていくことが最も重要な対策です。そのためには、研究会、論文誌、国際会議を通じた会員サービスの向上が不可欠です。もちろん、これまでも多くの関係者が大変な努力を重ねてきました。エレクトロニクスソサイエティとしては、その努力がより大きな成果につながるよう、費用対効果という観点から活動全体を見直し、限られた人的・財政的資源を最大限有効に活用できる仕組みづくりを進めていきたいと考えています。

また、次世代を担う若手研究者や学生の育成も極めて重要です。エレクトロニクスソサイエティの各研究専門委員会では、これまでも学生を主役とした研究会や若手研究者向けの企画が数多く実施されてきました。学会や研究会は、研究成果を発表する場であるだけでなく、研究者として成長する場でもあります。新しいアイデアとの出会い、異分野研究者との交流、将来の共同研究者との人脈形成など、学会で得られる経験は非常に大きなものです。私自身が学会に育てていただいたように、今度は次の世代を育てる側として、若手研究者や学生が成長できる環境づくりに貢献したいと考えています。今後は国際化施策とも連携しながら、若手研究者や学生がより広い視野を持ち、世界に羽ばたくための機会を提供していきたいと思います。

ハードウェア技術は日本が長年培ってきた強みであり、今後も国際社会に貢献できる重要な分野です。そして、その中心的な役割を担うのがエレクトロニクスソサイエティです。国際化の流れの中で、エレクトロニクスソサイエティは単に世界に追随するのではなく、自らがリーダーシップを発揮し、日本発の技術と人材によって国際的な研究コミュニティを牽引していく存在でありたいと考えています。

エレクトロニクスソサイエティは、多様な専門分野をつなぎ、人と人をつなぎ、そして日本と世界をつなぐ場です。この価値ある活動を次世代へ引き継ぎ、さらに発展させていくためには、会員の皆様のご協力が不可欠です。皆様とともに、より魅力的で活力あるソサイエティを築いていけることを楽しみにしております。今後ともご支援、ご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。