寄稿
News letter No.192(2024年1月)
学生奨励賞受賞記

「極低温下での67-116 GHz帯 導波管回路の損失測定」

(国立天文台) / 増井 翔

増井 翔

 この度、名誉ある電子情報通信学会エレクトロニクスソサイエティ学生奨励賞を受賞することができ、大変光栄に存じております。また、選定に携わられた学会関係者の皆様に心より御礼申し上げます。

 私どもは、チリのアタカマに設置されたALMA (Atacama Large Millimeter/submillimeter Array) 望遠鏡に搭載する高感度ヘテロダイン受信機の開発に従事しております。本研究では、67-116 GHz帯に対応した新受信機に使用される導波管回路を極低温下(約4ケルビン)にて、いかに高精度化に測定できるかを研究しています。高感度な受信機を開発する上で、使用している回路のパラメータを知ることは非常に重要です。しかし、導波管回路は、非常に低損失(0.2–0.3 dB@100 GHz帯)でありながら冷却下で使用されるため、実動作温度での挿入損失を測定することが困難でした。上記の問題を解決するために、我々はネットワークアナライザとクライオスタットを使用し、高精度な測定系の開発を進めました。高精度化のために、フィードスルーの見直しや2面でのSパラメータ校正による誤差項の抽出を行い、結果として低分散な測定結果を得ることに成功しました。本原理は他の周波数帯への応用も可能なため、今後更に高周波数帯での測定系構築を目指し、低雑音受信機の開発に貢献していきます。今回の受賞を励みとして、より一層精進して参ります。また最後に、本研究を支えてくださった共同研究者の皆様に深く御礼申し上げます。

著者略歴:

2023年 大阪府立大学 理学系研究科 博士後期課程修了、同年、国立天文台 先端技術センター 特任研究員。ミリ波サブミリ波帯ヘテロダイン受信機の広帯域化および多素子化に向けた開発に従事。2020年先端ICTデバイスラボワークショップ最優秀ポスター賞、2020, 2021年VLBI懇談会シンポジウム最優秀口頭発表賞、2023年応用物理学会講演奨励賞 各受賞。

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