巻頭言
業界をこえた技術融合による新事業の創出
-テクノロジーインテグレーションの時代-

古賀 正一(株式会社東芝 代表取締役 副社長)

情報技術(IT)分野での米国との格差が論議され、情報産業の強化、国の情報インフラの推進、電子商取引など新パラフダイムへの変革が叫ばれている。また、日本人の情報リテラシ向上とそのための教育は、いまや急を要している。
 IT分野の早い動きは、インターネット先進国の米国からのインパクトによることは論をまたない。しかし、IT時代に日本が世界に貢献出来ること、日本発のDFS(デファクトスタンダード)を創出すること、日本の特色ある技術による新市場や新事業を作り出すことなど数多く考えられる。現実を直視し、危機意識をもつと共に、ものづくりの知恵の力など、他国にない日本の利点を生かし、特色をもった新事業発想やDFSの発信は、攻めの戦略として極めて重要であると思う。
 IT分野は、デジタル技術の進歩により、従来別々に考えられていた分野が融合し、新しい商品、市場、事業が創出されている。全く別な市場、業界として区分けされていたものが、融合していることは、商品で言えば、パソコンなど情報機器、携帯電話など通信機器、テレビなどのAV家電機器が相互に関連しつつ発展している例を見ても明らかである。また放送、有線通信、無線通信、CATVなどもインターネットやデジタル放送時代に入り、ますます協会がなくなり、相互のり入れと競合の時代となった。これらはまさに技術の水平のインテグレーションである。
 一方、半導体をはじめとした部品、商品、ネットワークインフラ、サービス、コンテンツなどもデジタル技術では、相互の連携、シナジが不可欠であり、これは言わば垂直のインテグレーションと言える。
 日本は、水平・垂直と共にインテグレーションし易い環境にあるのではあるまいか。
 部品産業、コンピュータ/情報機器/家電/通信機器産業、放送/通信/出版及びコンテンツ/ソフト産業などの業種を全てもち、交流し易い環境にある。問題は個人の考えの壁、組織の壁、業種間の壁、姿勢の壁であり、これらの壁を出来る限り低くすることである。各企業が独自の技術を持ちながら、スピードある相互連携をベースに、新市場の創出と世界へのDFSの発信が重要である。
 DVD(デジタルバーサタイルディスク)は、日本発DFS発信の成功の一例である。家電メーカ、コンピュータメーカ、コンテンツをもつ映画業界、音楽業界を含め、当初から米国欧州と共に、異質な業界の交流により生まれた。
テクノロジーインテグレーションの成果である。当初から大きなビジョンをもち、新しい映像音響機器(ホームシアター)、パソコン周辺機器(DVD-ROM)、書き換え型DVDによる録画再生機器などをえがき、具体的に新市場を創出している。
 日本の特色を生かしたDFS創出のKFS(成功の鍵)は、
1)技術をベースにビジョナリな市場創出力、事業構想力とチャレンジ精神
2)異業種を巻き込んだテクノロジーインテグレーションとグローバルな交流
3)顧客を中心においたDFSとその普及への情熱
4)フォーラムなどを形成しオープンな討議とスピードある推進
5)小異をして大同をつくる精神
などであろう。今や日本の強みを発揮すべく、テクノロジーインテグレーションをベースに、新しい市場や事業を創出し、世界に発信する時代であると思う。

ページTOPへ