研究室めぐり

大阪大学基礎工学部システム工学科谷内田研究室 機械の知能化、ヒューマン化を目指して

我々の研究室は谷内田以外に八木助教授、山口助手、大澤助手、早瀬技官、池端秘書の6名の職員と30名弱の学生から構成され、以下の 4つのグループに分かれて研究を進めている。

1)ロボティックスグループ
自立型の知能移動ロボットの視覚機能や経路計画に焦点を置いて種々のアプローチから研究を進めているがその代表例を紹介する。自分の周囲360度を一度に観察できる全方位型の視覚センサ、円錐ミラーを用いたCOPIS(COnic Projection Image Sensor)と双歯面ミラーを用いたHyperOmni-Vision(Hyperboloidal Omni- directional Vision)の2種を開発した。これらのセンサは全方位を一度に観察できるだけでなく、いくつかのよい性質を持っており、ロボットの周囲の環境を認識するのに適していることから、移動ロボットのナビゲーション用の視覚として注目を浴び、海外を含む多くの研究機関からの設計データに関する問い合わせが多い。HyperOmni-Visionの原理図と入力画像、変換画像の例を図1(次頁)に示すが、全方位画像を一度に入力できる(a〕だけでなく、それをパノラマ画像(b)や一般の透視画像(c)にも容易に変換することができる。全方位視は自分の周囲の概略を大局的に把握するのに向いた視覚であるが (大局視と呼ぶ)、その一部を注視して詳細に解析する(局所視と呼ぶ)のには向いていない。この局所視として我々はパン、チルト、ズーム等を高速に制御できる両眼視を用い。大局視と局所視を統合した複合視を開発し、大局を把握しつつ注視物体を詳細に解析できる視覚方式を確立した。現在は、人と共生のできる移動ロボットを目指して、環境からの人の発見と追跡、個人認識、表情認識、ジェスチャ認識、人の仕草の認識から最終的には人の意図理解の研究へと進めているところである、また、マルチメディアネットワークにおけるエージェントとしてのロボットについて思考実験を始めている所である。この研究グループは現在、科研の基盤研究A 「人の意図を理解するロボットの研究」、試験研究「自律走行車のための視覚誘導技術に関する研究」、重点領域知能ロボット「複合視覚センサにおける注視行動と行動空間の知覚」ほかの支援を受けている。

2)コンピュータビジョングループ
立体視、動画像処理を中心に研究を進めてきたが、最近はその応用として人間情報の計測と認識に重点を置いている。本研究はイメージ情報科学研究所谷内田研究グループと密な共同研究を進めており、心理学者Farnsworth氏の提案する均等等色空間を用いた複雑な背景からの顔の発見、ポテンシャルネットとK-L展開を用いた表情認識、Gabor変換とdynamic linkを用いた個人認識、仮説検証による指の3次元運動の認識、柔軟なテンプレート照合とK-L空間における軌跡からのジェスチャ認識などが最近の代表的な研究成果である。今後はこれらの成果を複合視を持ったロボットヘ移植拡張することと、以上の研究を統合し、複数のアクティブカメラにより、すべての人間情報を同時に実時間で計測認識する方向へ研究を進める予定である。この研究グループは現在、重点領域VR「複数の能動的カメラを用いた人の動きの検出とリアルな仮想世界の提示」、NEDO独創的産業技術開発「実時間ジェスチャ認識システムの開発」、情報処理振興事業協会(IPA)独創的情報技術育成事業「感性擬人化エージェントのための顔情報処理システムの開発」ほかの支援を受けている。

3)機械学習グループ
抽象化されたtoy problemを扱っていたが、最近ではロボットの技能の学習に焦点を移し、実環境と仮想環境における協調的強化学習や複数ロボット間での適応的模倣学習などで成果が上がりつつある。また、GAによる集団行動の進化と適応などの研究も行っている。

4)知識処理グループ
仮説推論を中心に研究を行っているが、その実世界への応用として、大規模知識べ一スからのユーザの意図する知識へのフォーカシング、複数エージェントの仮説推論の協調による状況理解などの研究を進めている。それぞれの研究グループは専門分野を深めつつ、例えば仮説推論の画像認識への応用のように他のグループヘの技術移転や共同研究を行っている。これらの研究を統合化して、人間協調型の知能と感性を備えた自律機械(ロボット) を作成したいものである。(文責 谷内田)