会長のあいさつ

2010年度会長

横矢 直和 会長
横矢 直和
電子情報通信学会 情報・システムソサイエティ 2010年度会長
奈良先端科学技術大学院大学・情報科学研究科・教授 工学博士

 情報・システムソサイエティは、利用者としての「ヒト」とコンピュータと通信基盤からなる「モノ」を結びつける新しい情報・システム技術である「コト」を創出する基礎から応用に渡る広いスペクトルを持った技術分野を対象としている。近年は、情報・システム技術が現実社会のいたるところに深く浸透し、「ヒト」「モノ」「コト」が融合する時代を迎えようとしている。本ソサイエティは、「ヒト」と直に接する機会が多い技術分野を扱っているのが大きな特徴である。

 情報・システムソサイエティの役割は、同分野の専門家集団である会員を対象とした研究発表・討論・交流・学習の場を提供するとともに、若年層を含む一般の人を対象とした成果発表会・普及講演・研究施設の一般公開などの広い意味でのアウトリーチ活動を支援することであり、これによって社会と技術分野の持続的な発展に貢献する。

 平成22年度は、上記の認識を踏まえて、ソサイエティとしては、以下の項目に重点を置いた事業を展開する。

(1)研究会活動の充実
 ソサイエティ活動の中核を担うのは研究専門委員会である。特に、課題を共有する組織・年齢を越えた研究者・技術者に対して議論と交流の場を提供する研究会は、我が国に固有の優れたシステムであり、研究会活動の充実なくして、学会と技術分野の持続的な発展はあり得ない。技報電子化とアーカイブ閲覧の試行、近隣諸国と連携した研究会開催、国際会議の主催・共同主催などにより、研究会活動のより一層の充実を図る必要がある。

(2)論文誌とソサイエティ誌の充実
 会員が自らの研究成果を専門家集団と社会に対して発信する場が論文誌であり、ソサイエティの活動と技術分野の動向を会員に的確に伝えるためのメディアがソサイエティ誌である。会員サービスの向上には、これら出版物の充実が欠かせない。特に、国際化の観点からは、英文論文誌の充実と国際的認知度の向上が重要である。出版物の充実には、その編集と査読に関わるボランティア会員の負担軽減策と選奨などによるインセンティブ向上策が求められる。

(3)若手研究者や学生・一般市民への広報活動の拡充
 技術分野の持続的な発展には、若手人材の継続的な新規参入が不可欠である。会員数の減少傾向と諸外国に比べて女性研究者比率が格段に低いという現状を打破するためには、若手研究者の開拓とともに若年層を含む一般市民へのアウトリーチ活動が重要であり、そのための施策・企画へのソサイエティとしての予算面での支援策を拡充する必要がある。これは、長期的には、独立採算体制の実質化に向けた財政基盤強化のためにも重要である。

(4)イノベーション創出を支援する場の拡充
 我が国の成長戦略を考える上で、情報・システム技術分野でのイノベーション創出が欠かせない。したがって、ソサイエティが主催・共同主催するface-to-faceの交流の場であるシンポジウムや国際会議等を通して、イノベーション創出に向けた、産学が共有できる新しいビジョンを描くための環境作りが重要である。そのため、ソサイエティには、研究専門委員会等が主体となって企画・運営される研究集会やイベントを財政と運営の両面で支援する施策が求められる。

(5)国際化の推進
 国際化は本会全体として重要な課題であり、ソサイエティとしても取り組みを強化する必要がある。そのために、海外の協定締結学会との連携強化、国際会議の主催、各分野での主要国際会議の誘致・共同主催、研究会・国際会議と英文論文誌の連携などについて、財政面を含めた支援策の充実を図る。特に、研究会・国際会議と連携した英文論文誌の特集号については、海外の著名な研究者等による招待論文の掲載別刷代を免除することにより、論文誌の質の向上と国際的認知度の向上を図る。さらに、論文発表による会員の国際競争力向上に資する企画を積極的に支援する。