2023-2024年度 委員長
小尻 智子(関西大学)
このたび第23代委員長を拝命することになりました.このような歴史のある委員会の委員長に就任することを光栄に思うとともに,重圧を感じています.
修士1年生の春,私は本研究専門委員会の研究会で学会デビューをし,研究者人生のスタートを切りました.それまでに名前を何度も原稿を読み,あこがれに近い思いを抱いていた先生方が目の前で研究発表されており,そのような場で自分も発表できたことに大変感動しました.先生方が私の研究に(お世辞だと思いますが)「興味深い発表で・・・」と言って質問をしてくださったこと,その頃は紙で発行されていた研究会報告に自分の論文が掲載されていたこと,などその時に感動した一つ一つの瞬間が今でも思い出されます.
私が学会デビューした時に発表した研究は,協調学習の教師エージェントについてでした.その頃はまだSNSもテレビ会議システムもなく,掲示板での非同期コミュニケーションが最盛期だった時代でした.そのような時代に,いつか友達同士でそれぞれの自宅からカメラ映像を介して一緒に勉強するようになる未来を想定し,グループの議論をモデル化してアドバイスを生成するエージェントの機能を提案しました.
それから数十年.その頃抱いていた未来の世界が実現されるにとどまらず,テレビ会議システムによる会議が日常的になることはもとより,ロボットが対話相手になったり,メタバースなどの仮想現実空間でイベントが開催されるなど,想像もしていなかった世界となりました.ここ数か月の生成AIの普及を見ても,技術の発展が想像を超えるスピードとなっており,10年後どころか数か月後どのような世界となっているかも予測できない時代になったなと感じています.
本研究会では,このように想像を超える勢いで発展する情報技術が,人の教育・学習にもたらす可能性を議論します.現在実施されている教育・学習活動の支援のための新しい技術の開発や既存の技術の新しい活用方法についてのみならず,未来の教育・学習活動を想定した議論もしていければと思っています.
また,コロナ禍でなかなか実施できなかった対面での議論や研究会後の研究コミュニティ作りも再開し,本研究会が参加者の研究者人生にとって貴重な一ページとなるような,そんな場としていきたいと思います.
(教育工学研究会第23代委員長)
これまでの委員長
- (第1代) 1969-1972年度 川上 正光
- (第2代) 1973-1976年度 中村 元和
- (第3代) 1977-1980年度 末武 国弘
- (第4代) 1981-1984年度 阿部 善右衛門
- (第5代) 1985-1988年度 宇都宮 敏男
- (第6代) 1989-1990年度 清水 康敬
- (第7代) 1991-1992年度 坂元 昂
- (第8代) 1993-1994年度 伊藤 紘二
- (第9代) 1995-1996年度 岡本 敏雄
- (第10代) 1997-1998年度 磯本 征雄
- (第11代) 1999-2000年度 渡辺 成良
- (第12代) 2001-2002年度 福原 美三
- (第13代) 2003-2004年度 米沢 宣義
- (第14代) 2005-2006年度 永岡 慶三
- (第15代) 2007-2008年度 横山 節雄
- (第16代) 2009-2010年度 渡邉 豊英
- (第17代) 2011-2012年度 中村 直人
- (第18代) 2013-2014年度 赤倉 貴子
- (第19代)2015-2016年度 松原 行宏
- (第20代)2017-2018年度 宮寺 庸造
- (第21代)2019-2020年度 鈴木 栄幸
- (第22代)2021-2022年度 渡辺 健次