論文誌技術解説
News letter No.192(2024年1月)

「ELEX近況」

(ELEX編集委員長) / 佐藤 高史(京都大学)

佐藤 高史(京都大学)

 会員の皆様には、日頃よりELEXの編集にかかわる活動や運営へ多大なるご協力、ご理解を頂き有難うございます。この場をお借りして感謝を申し上げます。

ELEX (IEICE Electronics Express) は、完全電子版、オープンアクセスの英文レター誌です。電子版であることにより、誌面内の参考文献へのリンクが提供され、また、カラー図面の使用に加えて動画などのマルチメディアファイルの使用も可能となっています。さらに、投稿から判定までができるだけ短期間となるよう、査読期間の短縮に努めております。採録決定後には、直ちに校正前原稿を早期公開した上で月2回の出版を行うなど、電子版であることの特徴を活かした出版を行なってきています。ELEXのウェブページ(https://www.ieice.org/publications/elex/index.html)には、早期公開となった論文が随時掲載されています。

このような目的を達成するために、これまでも何度か論文書式の見直しを実施してきましたが、ELEXでは現在、新たな論文書式の変更を計画しています。皆様が本稿をお読みになる頃には、ELEXのウェブページに置かれている論文テンプレートが新しいものになっているのではないかと考えます。是非とも、ご覧いただくようお願い致します。

今回の書式変更は、主に以下のように要約されます。

1) ELEX掲載論文の著作権情報を1ページ目の下部に表示することとした。

2) ORCID情報を表示できるようにした。

ELEXの掲載論文は、創刊当初からオープンアクセスとしておりましたが、その著作権に関する制限の有無をより明確に示すため、すべての論文に著作権情報(CC-BY-NC-ND)を示すことといたしました。CC-BY-NC-NDとは、適切なクレジットを表示し、原著論文を改変せず、かつ非営利目的であるという条件のもとで、自由に複製や再配布を可能とするライセンスです。この著作権情報を示すことによって共有等がより容易になり、ELEXの論文が世界中のさらに多くの方の目に触れる機会が増えるものと期待しております。

また、ORCID情報とは、研究成果や創作物に関する創作者の情報を統一したプロファイルにより示すことを目的とする識別IDであり、無償で取得し使用することができます。上記著作権表示と異なり、論文へのORCID情報の表示は、著者が自らの意志で表示または非表示を選択できるオプションとしています。ORCID情報は、研究成果の管理や名寄せが容易になるなど、著者にとっても学術コミュニティにとっても様々な利便性が有ります。このため、今後、多くの著者がORCID情報を表示するものと期待しています。

これらは書式上の小さな変更に見えるかもしれませんが、ELEXとしては、これらの取り組みが著者にとってもELEXの目的を果たす上でも有益な変更であると考えております。皆様の優れた成果の発表の場所としてふさわしいものとなるよう、時流に遅れること無く、また、流されること無く、ELEXの改善を続けて参ります。今後も皆様からの積極的なご投稿をお待ちしております。

末筆となりましたが、編集委員、特別編集幹事、編集幹事、および査読者の皆様方の献身的なご努力により本誌の出版が支えられていることを、深い感謝の念を込めて申し添えまして、筆を置かせていただきます。

著者略歴:

 2004年京都大学大学院情報学研究科 博士課程修了。博士(情報学)。日立製作所、ルネサステクロノジ、東京工業大学を経て、2009年より京都大学大学院情報学研究科教授。2020年よりELEX編集委員長。

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