寄稿
News letter No.192(2024年1月)
(ELEX Best Paper Award 受賞記)

「PAM4 48-Gbit/s Wireless Communication Using a Resonant Tunneling Diode in the 300-GHz Band」

(大阪大学) / 大城 敦司

大城 敦司

この度は、IEICE Electronics Express (ELEX)に投稿した論文、”PAM4 48-Gbit/s Wireless Communication Using a Resonant Tunneling Diode in the 300-GHz Band “[1]をIEICE ELEX Best Paper Awardに選定頂きましたことを大変光栄に思い、関係各位に深く御礼申し上げます。本論文は本News Letterの筆者が大阪大学大学院基礎工学研究科に所属した際の研究成果をまとめたものです。

本論文では300 GHz帯のテラヘルツ波を用いた4値振幅変調(Pulse Amplitude Modulation 4: PAM4)無線通信システム、特に共鳴トンネルダイオード(Resonant Tunneling Diode: RTD)受信器を用いた増幅検波という新たな検波方式の解析とそれを用いたPAM4通信の実証を行い、RTDがテラヘルツ波の増幅器としても機能する可能性を初めて示しました。PAM4は大容量光ファイバ通信での利用が広がっている通信方式であり、テラヘルツ通信においてもこの方式を用いることで有線通信と無線通信のシームレスな接続が期待されます。

従来のテラヘルツ波受信器であるショットキーバリアダイオード(Schottky Barrier Diode: SBD)と比較して、RTDは特に低い受信電力に対する感度が高いことがわかりました(図1)。これはRTDが有する負性コンダクタンス(Negative Differential Conductance, NDC)領域におけるテラヘルツ波の増幅機能が寄与していることを見出しました。これにより、PAM4通信に対する受信波形が改善し、SBDは通信速度が14 Gbit/sに限定されていた300 GHz帯でのPAM4通信[2]の伝送速度がRTDでは48 Gbit/sに向上しました(図2)。

本論文の成果は今後、データセンターなどの大規模施設における有線通信を無線通信に置き換えるような通信インフラの効率化に貢献することが期待されます。私はこの分野の研究開発の発展に大きな期待を寄せています。

大阪大学大学院在籍中には本論文の共著者である永妻忠夫 教授、冨士田 誠之 准教授、Julian Webber博士にはご指導頂き、西田 陽亮氏、西上 直毅氏、山本 拓実氏には多大なるご助力を頂きました。ここに厚く御礼申し上げます。

図1 RTDとSBDの受信性能の比較
図2 RTDで受信したアイパターン (伝送速度:48 Gbit/s)

参考文献:

[1] A. Oshiro, J. Webber, T. Yamamoto, N. Nishigami, Y. Nishida, M. Fujita and T. Nagatsuma, “PAM4 48-Gbit/s wireless communication using a resonant tunneling diode in the 300-GHz band”, IEICE Electron. Express, vol. 19, no. 2, pp. 20210494-1– 20210494-6, 2022.
[2] 大城 敦司,西上 直毅,山本 拓実,Julian Webber,冨士田 誠之,永妻 忠夫,“PAM-4変調による300 GHz帯テラヘルツ無線通信”, 2020年電子情報通信学会総合大会, 東広島, no. C-14-4, 2020.

著者略歴:

2022年大阪大学修士前期課程修了、同年NTTドコモ入社。

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