寄稿
News letter No.190(2023年7月)

「不連続部を有する構造の回路シミュレーションの提案」

田岡 楽登(広島大学)

田岡 楽登(広島大学)

 この度は、電子情報通信学会エレクトロニクスソサイエティ学生奨励賞という名誉ある賞をいただき、大変光栄に存じます。ご推薦頂きましたエレクトロニクスソサイエティ関係書の皆様方に厚く御礼申し上げます。

 今回、受賞対象となりました「不連続部を有する構造の回路シミュレーションの提案」では、回路全体に電磁界解析を用いた場合と、個別デバイスに分割して電磁界解析を行いそれらを結合した場合の違いについて着目し、大規模な電磁界解析結果を反映する高周波デバイスモデルを提案したものです。

 高周波集積回路の設計では、電磁界解析が行われます。電磁界解析は規模が大きくなると時間を要するため、一般には、回路図に対応した部品に対し電磁界解析を行い、その結果を回路シミュレーションに用いることにより回路特性が検証されます。しかし、この手法では必ずしも回路シミュレーション結果と測定結果に良好な一致が認められないことがあります。一方、回路全体の電磁界解析を行うことで、より正確に特性を推定できると考えられますが、回路全体の電磁界解析を行うには計算時間がかかりすぎたり、メモリーなどの制約により計算が完了しないことがあります。

そこで本研究では回路シミュレーションの精度を向上させるために、構造の切り替わりで生じる反射や電磁界の乱れを考慮する素子である、不連続部の回路モデルを作成しました。これにより構造が切り替わる伝送線路や、伝送線路のオープンスタブやショートスタブの電磁界解析をした時の結果と、回路シミュレーションで求めた結果の誤差が抑制されました。

 今回の受賞を励みとして、より一層精進を重ねていく所存です。最後となりますが、指導教員の藤島実教授、天川修平教授、吉田毅准教授をはじめとする本研究においてご支援、ご助力いただきました多くの関係者様に深く御礼申し上げます。

著者略歴:

2021年広島大学工学部電子システム課程を卒業。2023年同大学院先進理工系科学研究科先進理工系科学専攻前期課程を修了。現在、マイクロンメモリジャパン株式会社所属。

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