寄稿
News letter No.190(2023年7月)

「300GHz帯無線システムにおけるAND動作の高速化」

仲下 智也(大阪大学)

仲下 智也(大阪大学)

この度は、電子情報通信学会エレクトロニクスソサイエティ学生奨励賞という名誉ある賞を授与いただき、大変光栄に存じます。ご推薦いただきましたエレクトロニクスソサイエティ関係者の皆様方に厚くお礼申し上げます。

今回、受賞対象になった研究は、テラヘルツ無線システムにおいて光技術を導入することによりAND動作の高速化を行ったものです。近年、無線の高速化に対するニーズの高まりを背景に、テラヘルツ無線の研究開発が活発化しております。無線通信における課題の一つに、電波漏洩に対するセキュリティ対策が挙げられ、テラヘルツ無線技術に対しても検討が始まっております。最近、2つのテラヘルツ波ビームを特定の位置で受信(いわゆるAND 動作)することにより、物理層におけるセキュア性の向上を目指した手法が提案されております。我々は、これまで300 GHz 帯コヒーレントホモダイン検波方式により、1 Gbit/sでのAND動作の検証を報告しております。しかし、従来の受信系においてはコヒーレント検波成分だけでなく直接検波成分も同時に検波されてしまい、AND動作に閾値設定を要するだけでなく不要な雑音成分として高速化を阻む要因となっていました。そこで今回、IF 光変調方式を受信器に導入することにより、光領域で急峻なカッティング性能を持つ光フィルタを用いて直接検波成分を取り除くことに成功し、10 Gbit/sでの閾値設定を必要としない明確なAND動作を実証しました。 今回の受賞を励みとし、より一層精進を重ねていく所存 でございます。最後に、永妻忠夫教授、冨士田誠之准教授、易利助教をはじめ、本研究においてご支援、ご指導いただきました皆様方、特に精神的にサポートしてくれた同期の吉岡君に深く感謝を申し上げます。

著者略歴:

2022年大阪大学基礎工学部電気物理科学科卒業、同年より同大学院基礎工学研究科システム創成専攻博士前期課程在籍。永妻研究室に所属し、テラヘルツ無線通信システムに関する研究に従事。

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