就任挨拶:通信ソサイエティ会長就任にあたって

葉玉寿弥(防衛大学校) 会長
葉玉 寿弥 会長

 2021年度、通信ソサイエティ会長を務めることになりました。大変光栄に存じます。これまで営々と積み重ねられてきた通信ソサイエティの活動をさらに推進し、価値を高めていくことに全力を尽くす所存です。どうぞよろしくお願い致します。
 まず始めに、2019年から始まった新型コロナウィルスのパンデミックの困難な状況の中、様々な工夫を重ね日々の活動を営まれている会員の皆様のご努力に対し心から敬意を表します。コロナ禍は通信ソサイエティの活動にも多大なる影響を及ぼしています。「人と人の出会いの場を提供する」ことは学会の大切な役割のひとつですが、対面で開催する研究会や国際会議などの活動は現在、ほぼ全面的に不可能な状況に追い込まれています。
 通信ソサイエティには現在、20の研究専門委員会、7つの特別研究専門委員会、および、第三種研究会を運営する2つの特別研究専門委員会があります。通信ソサイエティの活動の柱の一つである研究会活動はこれらの研究専門委員会により支えられています。コロナパンデミックの中2020年の2月、3月の研究会は開催中止を余儀なくされました。しかし、2020年4月には多くの研究会をオンラインによって再開させ、2020年6月以後はほぼ例年と同じ回数の研究会を開催し、研究発表の機会を会員の皆様に提供し続けることができたことは高く評価されるべきだと思います。その間の研究会・国際会議のオンライン開催のノウハウ獲得とその水平展開の迅速さには目を見張るものがありました。これらは学会活動に参画されている多くの研究者・技術者の皆さまの集中的なご努力とチームワークの賜物です。この場をお借りして感謝の意を表します。
 昨年度、2020年12月に通信ソサイエティが主催する新たな国際会議:ICETCをスタートさせることができました。内外の研究者・技術者が分野の垣根を越えて集う国際会議の活動を通信ソサイエティの第三の柱に育てていきたいと考えています。ICETCはその活動の中核と位置付けています。コロナ禍の中、残念ながら今回はオンラインのみでの開催となりましたが多くの参加者を得て立ち上げることができたことは大変喜ばしい成果です。今後の発展に期待したいと思います。
 関係の皆様のご尽力によってこのパンデミックの中でも活発なソサイエティ活動はなんとか維持されています。また、新たな発展の芽も育ち始めています。しかし、会員数の減少傾向が続いていること、会員中の若年世代の人数が極端に少なくなっていること、また、会員の男女比率や国籍などダイバーシティが十分でないことなど構造的な課題とも呼ぶべき重たい課題があり、これらが今後ますます無視できないものになっていくと予想されます。今般のコロナ禍の負の影響も大変大きく、通信ソサイエティの事業収入は2019年度2.22億円であったのに対し2020年度決算では1.62億円に留まり、27%もの大幅な減少となってしまいました。このような問題意識はこれからの通信ソサイエティの発展を考える前提として、ぜひとも会員の皆様と共有させて頂きたいと思います。
 通信ソサイエティの本質的な価値として次の3つが挙げられると考えます。a)通信ソサイエティがカバーする分野の信頼できる情報と知識を社会に提供すること。b)通信技術の専門家同士が最先端の技術について議論できる場を提供すること。c)専門外の人々とオープンにコミュニケーションする機会や情報を世界に発信する機会を提供すること。私はこれらの価値の向上を目指し、次の3つの課題、即ち、1) 分野を超えて人々が集える分野横断型の研究会・国際会議を発展させること、2) 論文誌の競争力を向上させること、3) 運営サイドならびに参加者のダイバーシティを高めることについて一歩でも進展させるように努力していきたいと思います。
 2021年7月の時点でもコロナ禍の終焉はまだ見通せず感染者数は日々増加し続けており、今年度も多くの制約がある中で通信ソサイエティの活動を進めていかざるを得ません。今の苦しい状況の中でもコロナ禍後の発展につながる種を仕込んでおくことが大切だと考えます。
 通信ソサイエティの活動、およびその発展にご協力とご支援を賜りますよう心よりお願い申し上げます。