就任挨拶:通信ソサイエティ会長就任にあたって

菊間 信良 会長
菊間 信良 会長

 2020年度の通信ソサイエティ(通ソ)会長を務めることになりました。大変光栄に存じます。また、通ソの活動・運営に日頃ご貢献頂いている皆様方に深く感謝申し上げます。2019年度は、次期会長の立場で、通ソの運営、そして理事会メンバーとして学会全体の運営に関わって参りました。いよいよ通ソの先頭に立つときが来た、と身の引き締まる思いでおります。通ソの活動をさらに推進し、あらゆる活動において参加価値が一層増すように全力を尽くす所存です。よろしくお願い致します。
 まずは通ソの簡単な活動紹介を兼ねて、2019年度を振り返ってみたいと思います。通ソでの大きな出来事としては、横断型研究会が2つ開催されたことが挙げられます。MIKA(革新的無線通信技術に関する横断型研究会)とRISING(超知性ネットワーキングに関する分野横断型研究会)です。MIKAは2018年に続く2回目の開催で、それぞれ200名から300名の参加者があり、大成功を収めました。この場をお借りしてお礼申し上げます。私も両研究会に参加し、その熱い思いを実体感致しました。また、MIKAは実行委員長でもありましたので、基調講演をさせて頂き、皆様からのお声を直接聞くことができました。これらを今後に活かすことができることは大変有り難いことです。
 MIKAでの私の基調講演のサブタイトルは、「横断型に向けた縦糸的考察」でした。この基調講演で言いたかったことは、物事を横展開するには縦糸のごとく1本筋の通った考え方が必要であるということでした。それを、私の専門であるアンテナの信号処理を実例として語らせて頂きました。通常、織物では、縦糸を張ってから横糸を絡ませて行き、素晴らしい模様を作り上げていくと言われています。学会も、縦糸のひとつであるソサイエティがしっかりとした価値観と方向性をもっていてこそ、横糸的なMIKAとRISINGが独自のアートをつくりあげていくことができると思っています。そして、今話題のAI(人工知能)の活用など、新たな技術課題に立ち向かうためには既存の研究会の横壁を破るしかない雰囲気が追い風となり、通ソは、横断型研究会が支えとなって、他のソサイエティ、更には他学会へとどんどん横糸を延ばして行くことでしょう。各研究会活動および論文編集といった通ソの基盤的な縦糸と横糸を含め、バランス良く織りなすことが会長としての私の役割であると認識しております。
 ところで、MIKAの研究会で、たまたまSDGsに触れる機会があり、個人的に共感するところがあって、普段からバッジを胸につけ自己啓発に努めるようになりました。SDGsとは国連が掲げる「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、17のグローバル目標から成ります。「持続可能」という言葉は、色々な組織でよく使われる言葉で、本学会でも良好な運営を続ける目的で、この言葉が頻繁に使われてきました。
 私のSDGsはと言いますと、「持続可能な組織をつくるために、継続的な人材育成に努める」です。人あっての組織であり、持続的に次世代を担う若い人材を育てる運営の仕方が鍵であろうと思っています。SDGsの目標の1つに、「強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る」がありますが、人づくりが組織運営の大切なインフラづくりであることは間違いないと信じております。
 2020年は新型コロナウイルスの影響のために、学会活動が大幅に制限されており、例年とは異なる活動様式が求められております。一方で、このような状況で気づいたことや学んできたことも沢山ありました。日常生活におけるICT(情報通信技術)の普及の遅れや普及格差なども気づかされたことの1つです。この機会に、オンラインによるバーチャル参加など、新しい「つながる」システムの構築・進化が必要と思いました。2020年は、通信の分野では何と言いましても、5G(第5世代移動通信システム)のサービスがスタートした節目の年です。ICTの原点に立ち返り、あらゆる視点から技術を見つめる良い機会です。SDGsの目標は1つのガイドラインになると思います。制限が解かれ再び活気を取り戻すとき、人恋しさを吸引力に皆が元気に集い、更に若い人たちをどんどん巻き込みながら、これまで以上に盛り上がっていきたいと思っております。未来に向かってHeart-to-Heart(H2H)で、レジリエントにつながって行きましょう。
 最後になりますが、2020年度の通ソの目玉イベントとして、通ソのフラグシップの国際会議が初めて開催されます。これは、世界をつなぐ新しいグローバリゼーションを起こすイベントとなり、MIKAとRISINGの横断型研究会と並んで通ソの三本柱になっていくと期待しております。皆様の参加があってこその学会活動です。長い歴史の中のたった1年間の会長職ですが、この一歩が次の時代につながる種まきになればと思っています。皆様の御協力を何卒よろしくお願い申し上げます。