研究室めぐり

(株)ATR知能映像通信研究所

(図1)新しいコミュニケーション環境

【1.概要】
ATR知能映像通信研究所はATRの7番目の研究開発会社として1995年3月に設立された。当研究所は、「知能映像情報通信の基礎研究」を研究テーマとして、1995年から2 002年までの7年間にわたる研究プロジェクトである。映像・音などのマルチメディアを駆使することにより、距離、時間、さらには言語、文化の壁を超えた新しいコミュニケーション・通信の方式を創出することをめざしている。この目的のため、コミュニケーション環境生成技術、コミュニケーション支援技術、コミュニケーションの人間科学、を重点的に研究している。また、新しい試みとしてCGアーティストを客員研究員として採用し、彼等の感性を利用してコミュニケーションに適した新しい環境の創出や、人間との自然なインタラクション機能をエージェントに付与することなどめざしている。

【2.研究内容】
2.1 コミュニケーション環境生成技術
コミュニケーションに適した環境の生成を狙う。この目的のために、
(1)遠隔地の3D映像・音場、力感覚などを正確に再現する技術、
(2)コミュニケーションに応じた任意の3D シーンをCG、実写映像データベースから生成する技術、
(3)人間の感性に訴える仮想的な環境を生成する技術(図1)などの研究を進めている。

(図2)感性エージェント

2.2コミュニケーション支援技術
コミュニケーションのプロセスをコンピュータが支援することによって、相互理解の促進を図ることを狙う。大きく分けて2つの技術からなる。1つは、コンピュータの作り出したエージェントにコミュニケーションの支援をさせる技術の開発である。このために、(1)人間の姿・形をしたエージェントを作成すると共にその動作を制御する技術、(2)エージェントが人間の会話を理解する技術、(3)およびその結果に基づいてコミュニケーションを活性化する技術、などを研究している。一例として、今後エージェントと人間のコミュニケーションにおいて感情の伝達が重要になってくると考えられるため、感情の認識・表現の出来るエージェントの研究を行っている(図2)。

(図3)イメージハンドリングシステム

もう1つは、人間が頭の中に持っているイメージ・概念を映像・音などの非言語的なメディアを用いることによって表現し相手に伝える技術の開発である。そのため、(1)イメージを表現するためのデータベース(感性データベース)の構築技術や検索技術、(2)映像・音データに種々の変形を加え必要とする映像・音を生成する技術(図3)、などの研究を行っている。