報告
News letter No.191(2023年10月)

「シリコン材料・デバイス研究専門委員会(SDM)活動紹介」

(シリコン材料・デバイス研究専門委員会 委員長) / 大見 俊一郎(東京工業大学)

大見 俊一郎(東京工業大学)

 シリコン材料・デバイス研究専門委員会(Silicon Devices and Materials: SDM)は、シリコンを中心とした集積回路技術に関する議論を行う場を提供することを目的として、1987年に発足し本年で37年目を迎える。私は、2022年6月から2年間SDMの委員長を仰せつかっている。

 2023年度は、SDMには34名の委員が所属し(大学23名、企業9名、国研2名)、年8回の研究会を企画・運営している。各回の研究テーマは、シリコンデバイスを中心に、プロセス、回路、評価技術、シミュレーション、化合物半導体、有機半導体など多岐にわたっており、8回のうち4回は他の研専(OME、ED、CPM、ICD、ITE-IST)および応用物理学会シリコンテクノロジー分科会との共催により運営している。2022年度はコロナ禍の影響が残る中、担当委員の皆さんのご尽力により8回の研究会のうち4回を、対面もしくはハイブリッドで開催した。2023年度はコロナが5類に以降したこともあり、8月までの4回の研究会をすべて対面もしくはハイブリッドで開催してきており、10月以降の研究会においても主に対面での開催を予定している。まだ、コロナ自体は増加傾向にあり、今後も注意をしながらできる限り対面で開催するように準備を進めている。

 また、毎年韓国電子工業会との共催で、日本と韓国で交互に開催している国際会議AWAD (Asia-Pacific Workshop on Advanced Semiconductor Devices)を、今年は7月10日~11日に東京工業大学すずかけ台キャンパスにおいて対面で開催した。日本開催では2018年以来の現地開催となった。第30回の記念となった今年のAWAD2023では、93件の講演と170名の参加者があり、大変盛況であった。本会議においては第30回記念セッションを企画し、各分野の著名な4名の講師による招待講演を行った。まず、細野秀雄先生(東工大)から“Birth and Progress of IGZO-TFTs”と題したIGZOの歴史と今後の展望についてご講演いただいた。続いて、Ho-Young Cha先生(Hongik Univ.)から“Gallium nitride power devices and sensors”、橋詰保先生(北大&名大)から“MOS technologies for GaN power transistors”、木本恒暢先生(京大)から“Innovation and Physics of SiC Power Devices for Higher Energy Efficiency”と題したご講演をそれぞれいただき、カーボンニュートラルに向けてパワーデバイスの研究が両国で活発であることが分かった。また、一般セッションでは各分野の著名な12名の講師の招待講演と、62件のポスター講演を含む77件の一般講演があった。

 AWADは参加者の半数近くが韓国を含む海外からの参加者という稀有な国際会議で、アジア地区の半導体分野における交流に大きく貢献している。今回も170名の参加者のうち半数以上が海外からの参加者であった。このように両国の委員のご尽力により、成功裏に終えることができて安堵している。その一方で、Cha先生のご講演において、AWADの発足当初から韓国の主要な委員としてご尽力いただいた、B.-G. Park先生(Seoul National Univ.)が逝去されたことをお聞きし、大変残念な思いでいっぱいである。Park先生は、AWADのみならず両国の半導体分野において多大な貢献をなされた方で、私自身もAWADでお会いした際には大変良くしていただいた思い出があり、ここに記してご冥福をお祈りする次第である。

図1  第30回記念となるAWAD2023の記念写真

第31回となる来年は、Park先生の教え子であるW.Y. Choi先生(Seoul National Univ.)が委員長となられ、“Another 30th Anniversary”として韓国で開催予定である。

著者略歴:

 1996年東京工業大学大学院博士課程修了。同年、同精密工学研究所助手、2001年同大学院助教授、准教授。この間、米国ルーセントテクノロジー社ベル研究所博士研究員(1997年~1999年)、米国ノースカロライナ州立大学訪問研究員(2000年)。電子情報通信学会、応用物理学会、電気学会(フェロー)、IEEE EDS各会員。

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