寄稿
News letter No.190(2023年7月)

「Magic-Tを用いた広帯域反射型移相器」

田村 成(横浜国立大学)

田村 成(横浜国立大学)

 この度は名誉あるエレクトロニクスソサエティ学生奨励賞を授与いただき、大変光栄に存じます。本研究を推薦していただきました関係者の皆様方に厚く御礼申し上げます。

 本発表は、反射型移相器を広帯域化する上で、Magic-Tを用いることを初めて提案し、その計算結果について報告させていただきました。反射型移相器は電波の送受信方向を自在に制御するマイクロ波回路です。その利点はスイッチを用いる移相器よりも、低損失・低消費電力・高分解能な移相制御が得られる点です。しかし、比帯域幅が10%程なため、使用アプリケーションは限られます。高速・大容量・低遅延かつ低消費電力な通信システムが今後一層求められる背景において、反射型移相器の広帯域化は使用場面の拡大に貢献します。本研究は、従来の反射型移相器に用いられるブランチライン結合器を使用せず、Magic-Tを代替回路として利用することに独自性を有します。特筆すべき従来回路との相違点は、Magic-Tが物理的及び電気的に回路の対称性を満足することです。この特徴に着目して、広帯域で移相時の挿入損失の変動が小さくなる反射型移相器を提案しました。その解析結果では、比帯域幅50%において150度以上の移相量と0.5 dB以内の挿入損失変動が得られました。本研究の完成が安価・低消費電力・広帯域な無線基地局を実現させ、無線通信の繋がりと便利さが拡充することを望みます。

今回の受賞を励みとし、更に熱意を持って通信社会に貢献する研究を発案・推進したく存じます。指導教員である新井宏之教授に感謝致します。

著者略歴:

2019年横浜国立大学理工学部数物・電子情報系学科 電子情報システムEP退学 (同年に大学院に飛び入学)。2021年横浜国立大学大学院 理工学府 数物・電子情報系理工学専攻 博士課程前期修了。現在、同大学院理工学府 数物・電子情報系理工学専攻 博士課程後期在学中。

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