報告
ニューズレター188号(2023年1月)

集積回路研究専門委員会(ICD)の活動状況

ICD 委員長 / 高橋 真史(キオクシア)

高橋 真史(キオクシア)

科学技術の著しい進化によって高度自動運転やメタバース等の新しい世界が現実のものとなってきています。先日の FIFA ワールドカップでもコンピューティングによる新たな判定技術が導入されるなど、私たちの生活の様々な分野で技術革新を実感できるようになってきました。AI やポスト 5G 等の先端技術開発を進めて豊かな未来を実現するためには、半導体技術の進歩は欠かすことができません。設計や実装技術を含めた更なる集積化、高性能化、低消費電力化が求め続けられています。
集積回路研究専門委員会は 1987 年に発足し、LSI 開発を進めるために必要な技術である、システムやアーキテクチャ、アナログ/デジタル回路技術、設計手法、実装技術、評価技術等の広範囲にわたっての議論を行い、半導体産業の発展と半導体に携わる人材の育成に取り組んできました。アカデミアと産業界の双方の幅広い分野から多くの研究者技術者の方に参加していただき、様々な立場の方の異なる目線での活発な議論を実施しています。
2022 年度の集積回路研究専門委員会の活動として、10件の研究会と、ソサイエティ大会及び総合大会のセッションを企画しています。多くの研究会開催において、電子情報通信学会の他の研究専門委員会や、情報処理学会及びIEEE 等の他団体との共催あるいは協賛をいただきながら運営しています。過去 2 年ほど感染症対策により多くの研究会がオンライン開催を余儀なくされましたが、ようやく現地開催を実施することができるようになりました。現地とオンラインのハイブリッド開催を実施することにより、現地で多くの方と交流を深めながら、現地に来られない方もオンラインで参加可能となり、研究会活動としてもより活性化されていると感じています。
(1) 4 月 第二種研究会“メモリ技術と集積回路関連一般”
(2) 5 月 第二種研究会“LSI とシステムのワークショップ2022 世界を駆ける先進モビリティエレクトロニクス”
(3) 8 月 第二種研究会“学生若手研究会 夏の合宿 オープンソース集積回路設計入門”
(4) 8 月 第一種研究会“アナログ、アナデジ混載、RF 及びセンサインタフェース回路、低電圧/低消費電力技術、新デバイス・回路とその応用”
(5) 9 月 ソサイエティ大会 ICD 企画セッション“多様な最新ハードウェアシステム設計手法 -協調設計・モデルベース設計・AI 設計-”
(6) 9 月 第二種研究会“第 16 回アクセラレーション技術発表討論会「高度計算科学の現状と未来」”
(7) 10 月 第二種研究会“学生若手研究会 第 2 回オープンソース集積回路設計ワークショップ (夏の合宿)”
(8) 10 月 第一種研究会“ハードウェアセキュリティ、一般”
(9) 11 月 第一種研究会“デザインガイア -デザインガイア 2022 -VLSI 設計の新しい大地-”
(10) 12 月 第二種研究会“学生若手研究会”
(11) 3 月 第二種研究会“学生若手研究会”
(12) 3 月 総合大会 ICD 企画セッション“社会問題を解決するセンシング回路技術”
集積回路研究会では、より多くの学生や若手の方に積極的に参加していただけるような研究会の企画を進めており、今年度は学生若手研究会を 4 回実施する計画です。まず、8 月と 10 月の夏の合宿では、若手の方が実際に手を動かして回路設計に挑戦するプログラムを企画しました。次に、12 月と 3 月の学生若手研究会では、特に学生の方を中心に発表の機会を提供し、携わってきた研究開発について多くの方と議論する取り組みを進めています。これらの企画を通じて若手の方に研究会活動に興味を持っていただき、将来的に学会および研究会の運営を担う役割を期待しています。
皆様の積極的なご参加をお待ちしております。今後とも集積回路研究専門委員会をよろしくお願い申し上げます。

著者略歴:
1987 年 3 月筑波大学大学院博士課程工学研究科前期課程修了。
同年(株)東芝総合研究所入社。現在、キオクシア(株)メモリ技術研究所システム技術研究開発センターにて、メモリ/ストレージのシステム技術に関する研究開発に従事。専門はプロセッサ/SoCアーキテクチャ。IEEE 会員。2021 年 6 月より集積回路研究専門委員会委員長。

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