ICDについて

「直島宣言」は2010年3月6日〜8日に開催された「LSIの未来を考えるワークショップ〜サービス・ビジネス科学と新技術〜」の議論の成果として提言された今後15年の課題をまとめたものです.

直島宣言

2010年3月6日、瀬戸内海の小島、直島でのワークショップ「サービス・ビジネス科学と新技術」。幸せで夢のある未来に向けて、分野の垣根を越えて挑戦すべきことを議論するため、幅広い分野の有志32人が集結した。従来の技術やビジネスからの発想を超えて、未来からの発想での議論は連日深夜に及び、二日後、挑むべき課題が言葉になった。

我々は、人々が、互いに感じあい、力をあわせ、守り育てる世界を創るとともに、このために人間や組織に関する大量データを収集、活用して科学技術と経済の再構築に挑む。具体的には、サービスやビジネスと科学と技術が垣根を越えて、以下グランドチャレンジに挑戦する。

1. 感じあう世界

1.1 アフェクティブ・サービス

人々の暖かい思いの相互作用を高める「アフェクティブ・サービス」を実現する。

1.2 アフェクティブ・テクノロジー

気持ち、思い、幸せを指数化し、計測、記録、分析、通信する技術を実現する。

2. 力をあわせる世界

2.1 柔軟な組織

予測困難な未来の複雑な問題への対応力を持つ、不定形でしたたか(ロバスト)な自律的組織を実現する。

2.2 組織のヘルスケア

年齢、民族、性別、能力の違いを超えて、多様な人々が協創する組織・コミュニティ実現のために、組織問題の発生を科学的に予防、診断、処方し、また、メンバが自ら維持・向上できるシステムを実現する。

2.3 新終身雇用システム

多様な人々が共に働く形態を創出し、新しい形の終身雇用を実現する。

3. 守り育てる世界

3.1 安全な社会システム

安全、高度な社会システム(水、農業、気象、交通等)をグローバルに普及させ、そのための事業の仕組みを構築する。

3.2 国境を越えるリスク管理組織

科学的データの横断的収集・分析により、国境を越えて世界の安全性やリスク管理を支援する組織「安全支援隊」を実現する。

4. 科学技術の再構築

4.1 人間・組織のデータアーカイブ

人間・組織に関する科学の発展のため、社会資産としての全人類のデータアーカイブセンタを構築する。

4.2 大量データ活用技術の標準化主導

大量データを活用した科学的リスク管理技術(センシング、解析、予測)の規格化・標準化において、世界を主導する動きを創る。

5. 経済の再構築

天然資源(木や水)の保全や幸福感を考慮した新しい経済評価指標を確立し、これにより地球規模の問題(南北問題等)の流れを変える。

オーガナイザ 矢野和男(日立製作所)

コントリビュータ(五十音順) 荒川文男(ルネサステクノジ)、荒宏視(日立製作所)、伊藤晶子(JR東日本)、内山邦男(日立製作所)、梅室博行(東京工業大学)、大石基之(日経BP)、岡田健一(東京工業大学)、甲斐康司(パナソニック)、金田康正(東京大学)、倉田成人(鹿島建設)、黒田忠広(慶応大学)、齋藤敦子(コクヨ)、桜井貴康(東京大学)、佐藤直基(日立ハイテクノロジーズ)、妹尾大(東京工業大学)、高橋真吾(早稲田大学)、高安秀樹(ソニーコンピュータサイエンス研究所)、高安美佐子(東京工業大学)、竹内健(東京大学)、野村恭彦(富士ゼロックスKnowledge Dynamics Initiative)、西田佳史(産業技術総合研究所)、濱崎利彦(日本TI)、広瀬佳生(富士通研究所)、藤島実(広島大学)、前田英行(日立総合計画研究所)、増田直紀(東京大学)、松岡俊匡(大阪大学)、安本吉雄(パナソニック)、山口裕幸(九州大学)、吉本雅彦(神戸大学)、鷲田祐一(博報堂)

本論文の著作権は著者(矢野)に帰属するが、出典を記載することで、了解なしに複製、配布、引用を許可する。

出典:矢野他「直島宣言」, ワークショップ「サービス・ビジネス科学と新技術」, 電子情報通信学会, 集積回路研究会(2010).