会長だより

最終号(2025年6月3日配信)

会長だより 2025.6 最終号

山中 直明

 電子情報通信学会の会長だよりをお読みの会員の皆様、この2年間、次期会長、会長としてまことにありがとうございました。とても楽しく充実しておりました。これも皆様の励ましとご協力の賜物です。スタートの時、多くの人が「推薦されたので微力ながらやらせてもらいます」とあいさつした中、「私は、希望して全力で取り組みます」とあいさつしました。大好きで、学生の時から育ててもらった電子情報通信学会、卒業も間近なのですが、最後の第4コーナーでこれだけのことをやらせてもらえたのは、うれしい限りです。会長だよりも「どうせ誰も読まないよ!」と、半ばやる気ないスタートでしたが、驚くほど多くの方から、メールやお会いした時に声をかけてもらえました。学会と会員の皆様はやはり繋がっていると確信しました。学会は、もともと同業者組合がスタートと言われ、自分たちの分野(職業)を守るためにボランティアで協力し合う組織です。そのため、「会費を払っているのに?」とか「ボランティアだから、そんなにできない」という気持ちは皆様持ちますが、この分野を、日本の技術を残すのがわれわれの責務です。
 「人間交際(じんかんこうさい)」は、私の教えられた大切な言葉です。学会の出会いと関係を、他のところでも利用して、ネットワークを作り、助け合い、協力し合い、連携しご活躍ください。われわれは、生涯勉強し、向上し、新しい技術を身につけなければいけません。今後とも電子情報通信学会をよろしくお願いします。
それでは最後の報告をいたします。

・4月18日 市村財団表彰式、キャノン財団助成金進呈式出席

 市村財団賞はリコーの創始者でもある市村清さんが創立した、産業界および学術界に対する表彰です。今年は、学術書の本賞として、電子情報通信学会のご存じ荒川泰彦東京大学名誉教授が「量子ドットの提唱とその先導的研究ならびに量子ドット半導体レーザの社会実装」として、また、貢献賞として大阪大学の松原靖子教授が「大規模時系列データの動的学習とリアルタイム将来予測に関する研究開発」として受賞されました。大変光栄なことに、電子情報通信学会を代表して授賞式に参列いたしました。本財団の賞は、産業賞と学術賞そしてそれぞれの地球環境賞に分かれており、着眼点を技術のみではなく産業貢献や環境というものを深く意識したものです。きわめて深い基礎研究の中で発明された量子ドットレーザは、小生が説明すべきではありませんが、レーザの活性層に、ナノサイズの半導体粒子を配置するもので、発振の閾値を下げ、低消費電力にすることが可能です。荒川先生らのご努力で実用化も進んでいる技術です。研究成果は、最終的には社会で活用され社会を豊かにするものであるべきものです。その点でも荒川先生のご研究は電子情報通信学会が誇る研究であることは言うまでもありません。
 同日には、キャノン財団の研究助成進呈式があり、それにも参列しました。過去にも多くの本会会員が受領してきましたが、民間企業の研究助成としては特筆すべき2,000~3,000万円以上の大型のものです。今回は、電子情報通信学会からは、大学入試センターの南谷和範先生、京都大学の金子光顕先生が受賞しています。記念講演は圧巻で、海洋研究開発機構 超先鋭研究開発部門の高井研部門長の「キャノン財団「理想の研究」ビフォー、アフター」という題名で、生命の発祥の地と言われる深海熱水探索の話を、本財団賞受賞後から現在までの夢のあふれる研究を披露されました。

キャノン財団1 キャノン財団2

・5月20日 第9回理事会

 理事会の議事録はホームページでも公開されていますので、詳細は省きます。年9回行われる理事会で、何回か対面で、うち一回は地方支部で開催されます。ハイブリッドで行われる今回は対面の最後です。いくつかの懸案事項があり、理事やオブザーバ参加のメンバーたちは、頭を抱えるシーンもあります。ソサイエティを代表するソサ会長等は、いわば現場を持った中間管理職の苦しみです。皆様がボランティアで活動され、研究会は150%の参加者数になったりして、活性化している反面、2024年、電子情報通信学会は単年度赤字になります(これは想定していたことですが)。内部留保があり、当面どうなるわけではありませんが、会員収入の減少と物価高による経費高騰は、本学会にとってもバラ色ではありません(日本の学会はほぼすべて)。本会は、会計理事を中心として、アドホックを精力的に進めて、財務強化戦略を作り上げてあります。内部留保も考慮して、このまま進めばあと10年20年問題はありません。しっかり合理化と投資は行っています。ウェビナーや、デジタルコンテンツ、学生会活動、ジュニア会員、プラチナクラブ、多言語システムさらに、論文誌の全html化は、大変に気になっていた部分で実施いたしました。ポジティブには、昨年から兆候がありましたが、先月から、会員増加が始まったことです。わずかではありますが、何10年ぶりに会員の増加です。ひとえに、大学の先生や企業の会員の方の、草の根的な活動に深く感謝いたします。会員の増加は、電子情報通信学会の経営の視点だけではなく、むしろ未来の日本の科学技術の展望にあります。技術立国ですので、この分野のエンジニアが減っているとすれば、日本には未来はなく、増えていれば日本は発展します。この分野は、今後もしばらく発展し、重要性を高める分野です。その会員とくに学生や若い会員が増えています。ほんとうに、うれしい限りではありませんか?
 理事会のあとは、懇親会!いわば戦友の集まりとなります。正直、みんな忙しく活躍されている中、ボランティアで、次々起こる難題と、毎日飛び交う文句(?)の中での、戦友です。実は半分ぐらいのメンバーはニコニコしていました。そう、もうすぐ退任だから。退任される方々に一言、「大変ありがとうございました。お疲れさまでした。ちょっとだけお休みください。そしてまた、電子情報通信学会のためにお力をお貸しください!!」

第7号(2025年5月22日配信)

会長だより 2025.5 第7号

山中 直明

 今回の会長だよりは、年度末に実施された総合大会や、いくつかの表彰等に関するものです。学会の中でも、最も重要なイベントも入っています。読んでみてください。

・3月5日、6日 大川賞授賞式 記念講演会出席

 多くの会員の方が過去に受賞している大川財団が行う大川賞のニュースです。今年は、面発光レーザの生みの親、本会元会長、東京科学大学(旧東工大)の元学長、名誉教授の伊賀健一博士とスタンフォード大のロバートバイヤー教授が受賞されました。お二人とも小生の研究分野の大先輩であり、真のイノベータです。
 伊賀先生は面発光レーザのパイオニアであり、その成果は現在のデータセンターなどに欠かせない高速光インタコネクト技術へと発展しています。面発光は、ウエハー上に面で量産できるため量産性に優れた日本発の重要な技術です。2日目は、伊賀先生らが主催して受賞記念講演が行われ、多くの学会の会長が集い、伊賀先生のお人柄を感じました。華やいだ雰囲気の中で、技術を大切にし、コミュニティを思い、学会で活躍され、後輩を育てた、伊賀先生という印象でした。本当におめでとうございます。
 大川出版賞(書籍)は、これもよく存じ上げている本会の佐藤源之東北大学名誉教授の「地中レーダ電磁波による地下計測技術」という書籍が受賞しました。これは、地中の埋蔵物等をレーダを用いて、計測する技術で、大変に長い間努力された研究成果です。佐藤先生は、会社も作りこの技術を普及させただけではなく、海外を飛び回り、ウクライナや東南アジアの地雷除去の第一人者です。この授賞式の翌日から、ウクライナに行くそうです。「実学」とは、論文を書くことではない。社会に役に立つことだと言った、福沢諭吉を感じます。
 実は、私の父も祖父も佐藤先生のお父様(上智大学教授、アンテナ技研元社長)にお世話になり、小生が慶應義塾大学に入学したとき、お祝いに論語をいただき、「私は、抜山先生(私の祖父)から論語を教えられました。君も勉強するように!」言われました。ボンクラな学生でした私は、正直頭に入らず苦労しましたが、今でも大切に持っております。世代を超えて、佐藤先生のウクライナを訪れる姿を見て、学問と社会の関係の重要さを感じました。お二人とも本当におめでとうございます。

伊賀博士の大川賞受賞風景 伊賀博士の学生時代のお写真 伊賀博士の大川賞記念講演

・3月7日 ART(Advanced Research Track)の開催

 聞き覚えのない活動かと思います。これは会長声明の「大学大学院教育を尊重した就職への移行」の一環として行った活動です。この会議は、学生のポスターセッションを企業の技術系トップや人事のレスポンシブルな方が参加して、真の学生の活動実績や能力を評価する就職活動です。分野は電子情報通信学会の全分野でブロードです。学生には、国際会議での表彰、海外留学、ダブルデグリー、もちろん学会での表彰等自慢できるものを持っている人を募集しました。あっという間に定員の20名に達しました。企業の方には、学生の研究教育活動を評価する企業、さらに、しっかりと学生の能力にこたえて、(JOB型の)就職を、十分な待遇を、その場でオファーできるぐらいの方に参加して欲しいと呼びかけました。わずか2週間の準備期間にも関わらず、7,8社から問い合わせがあり、そのうちの2社に参加いただきました。ARTでは、元気なプレゼンを行う学生の周りにはひっきりなしに説明を聞く方が囲んでいました。
 電子情報通信学会では、いろいろなソサイエティでも学生セッションやポスターセッションをやっています。直接就職でなくても、その場で自分の会社に向いていそうなメンバーに声をかけるところから始めませんか?4月に大量一括採用するシステムは、限界が来ています。限界ではなく、むしろ支障が出ています。一括採用をやめ通年採用への変更はもちろん、学会や大学との関係を構築して、形式的なエントリーシートや面接から脱却して普段から接点を持つのはどうでしょうか?学生も、多くの企業をリクルートスーツで一生懸命回り、会社に入ることではなく、しっかり勉強し、積極的に研究を一人称で取り組み、可能なら国際会議での発表を経験し、さらに、留学や、海外学位にチャレンジすることを認められて入社する就職活動もあります。つまり一生活躍するための入口なんです。入ることが目的ではなく、その会社をいわば利用して活躍し、自分の人生を豊かに楽しむことと確信しています。

ARTの様子

・3月14日 ECEプログラム修了式

 生涯教育やリスキリングの必要性は、否定する人はいません。技術の進化に伴い20年前の技術だけで活躍することは不可能です。電子情報通信学会では、日本工学会の認定を受け、ECEプログラムを立ち上げています。 https://www.ieice.org/jpn_r/activities/eceprogram/2024/
 修了者には、日本工学会から修了証書(Certification)が授与されます。海外ではオンライン授業が、大学の取得単位として認定されるなど、多様化が進んでいます。専門が細分化され、最先端の技術や産業界の技術者によるレクチャ等、自分の必要としている有効な内容(単位)を取得していく方が、同じ大学の椅子に座っていてもらえる単位よりも実践的かもしれません。新しいリスキリングとして、ますますの発展が期待されます。

ECEプログラム修了式

・3月24日 グローバルネットワークショップ開催

 おそらく5回目ぐらいになる留学生を中心とする英語によるポスターセッション、Global Network Workshop 2025(GNW2025)が電子情報通信学会総合大会の前日に東京都市大学で開催されました。学会誌にも報告が掲載されますが、当初は参加者も十分でなく、分野も問わなかったので「専門でない人の前で発表しても意味がない」とのご批判も受けました。すでに研究会や総合大会では英語での発表を許容しておりますので、その点からもご批判はごもっともです。しかしだんだん定着し、今回は90件を超す応募があり、留学生のコミュニティ作りにはもちろん、実は日本の企業の方も多く聴講されました。
 今年は、電子情報通信学会と理工系主に大学院のキャリアパス設計を目指し、LabBase社と共同主催して、留学生が卒業後日本で活躍する可能性も模索しました。慶應義塾大学就職委員長の大槻先生の講演によると、留学生の多くは日本が好きで留学してきて、日本での就職を希望しますが、うまくマッチングせず母国に帰る留学生も一定数いるとのことです。これだけ、人手不足が社会問題化して、ましてや技術系の大学、大学院卒の留学生が?と疑問が生じますが、現実です。よくわからない日本の就職活動システム。人事が重点を置く「コミュニケーション能力」。日本の主要大学の大学院は、すでに留学生の方が多いのは当たり前で、授業からゼミまで日本人の学生も含めて困ることはほとんどありません。留学生のダイバージェンスは大きいですが、優秀な留学生も多く、企業にとっては絶好のチャンスとなっています。ぜひ、留学生が活躍する国にしましょう!

・3月25~28日 電子情報通信学会 総合大会

 もうすっかり、新型コロナ禍から回復して、多くの若い研究者、学生が集う総合大会が東京都市大学のきれいなキャンパスで開催されました。発表件数も2,000件近く、延べ参加者数も8,000名近くと聞いています。小生も会長として、多くの出番をいただきました。また、ランチの時間や、歩いていても懐かしいお顔に出会い挨拶したり、展示ブースのところでは、デモやコーヒーを飲みながら議論する姿が続きました。出席した主要なイベントを時間順に報告します。
 TK-1「国際競争力向上の戦略」 これは日本学術会議との共同主催で、秋のソサエティ大会に続く企画です。総務省の竹村国際局長、徳田NICT理事長をはじめとするそうそうたるメンバによる日本の国際戦略の講演、特にNICT - JUNO(Japan - US Network Opportunity)の成功に続く第4回のJUNOの説明は継続的なグローバル人材育成への決意を感じました。単発が多い国の施策の中で、ノウハウを生かし、むしろ対象国をどんどん増やしている戦略には学ぶものが多いです。
 JSTの小林国際部部長はJSTの2枚看板のASPIREとCRONOSを紹介されました。JSTの重点7領域にGDPに対するインパクトの大きい半導体と通信が入り、アカデミックを広く支援することによりボトムアップを図りグローバルプレゼンスの向上を図っています。
 山中は電子情報通信学会の国際戦略として、世界的学会間の抱え込み戦略や、オープンアクセスに見られる競争の中で学問の自由と独立を守る戦いとして、多言語翻訳や研究会の海外開催の推進、さらに韓国をはじめアジア連携の必要性を述べました。
 学術会議を代表して森川東大教授は、テトリス型のイノベーション(パズルのように複数のものを組み合わせる手法)が日本が強化すべきポイントと主張し、辻NTT情報ネットワーク総合研究所所長はIOWN - GF(グローバルフォーラム)に見る日本型、日本が先導するグローバルコンソーシアムの可能性を感じる講演でした。
 2部は、大きく視点を変えて、女性起業家たちが中心となり、電子情報通信学会の大橋副会長(学会運営・組織強化担当)も加わり、必要とされるダイバーシティともっともっとユーザ目線、ビジネス目線、サービス目線が必要であることを議論されました。学会も猛烈に反省し、単に技術を磨き「村」の中で自己満足をするコミュニティではなく、多くの他分野、ユーザ、現場の人たちと連携を取る必要を感じました。
 また、大盛況の学生ポスターセッションを拝見して、その後のWelcome Partyにも参加しました。もともと情報・システムソサイエティが取り組んでおり、分野を広げる必要があり学会全体でのイベントになりました。学生ポスターセッションは、たぶん200件ぐらいの参加があり、とても回り切れないぐらいの盛況です。学生の方は、卒論、修論の発表を行っている人だけではなく、高専や高校での研究発表も目立ちます。最年少は7歳の小学生かと思います。(発表を聞いてみました)。お父さんと連名の研究で、中身は、「一輪車」の乗車姿勢と安定性の研究です。現在一輪車を練習中のようで、バランスを崩して転んでしまう時に、重心が、一輪車の重心と、一直線にならないことを画像処理を使い解析しています。とても素晴らしい研究でした。学生の方々の生き生きとした姿を見て、また新しい時代の到来を感じました。
 2日目は、TK-8「新しい日本の理工系人材のキャリアパス」セッションです。これはもともと会長声明で日本の就職の早期化長期化の問題提起から始まり、多くの学会が共鳴し、例えば情報処理学会や東京大学からも同様な声明が出されています。しかし、今年も4月になり、また同じように早期化した就職訪問等が始まっています。(日本はなかなか変わらない)。一方で、一括採用をやめると宣言してくれる日本を代表する通信メーカや、JOB型へ完全移行を宣言するやはりIT系巨大企業から連絡をいただきました。講演は、企業を代表して三菱電機執行役員の水落さんと、慶應義塾の就職担当委員長の大槻教授、それに私が行いました。
 水落さんは、「本当にJOB型が日本に向いているか?」という視点で、現状は問題外であるが、米国的な方法の輸入も問題ありという視点です。日本が専門の学位で評価するのではなく、厳しい入試を通過した、自頭の良さや要領の良さに重点を置き、メンバーシップ型の採用をして、定期的な職場のローテーション等を経験させるやり方をしている。「仕事が先にありき」で必要な能力を持っているメンバーを集めるスタイルとは大きく異なっているのは広く知られています。
 大槻教授は、特にグローバルな人材を利用しきれていない現状を指摘されました。日本のちょっとわからない求人スタイルや、求めているものが不明確で留学生が翻弄されている姿が紹介されました。ダイバーシティを持って、個人の能力を活用する時代が必須であることは多くの人が認めています。後半は、他学会の会長も交えて、この問題を深堀してみました。学会のミッションが大きいこと、個人は弱者でこの流れの中で被害者になっていること、企業も単独では何もできなく、このままではまずいことがわかっている等の発言がされました。
 大会3日目は、維持員交流会がありました。維持員とは、企業会員として本学会を支えていただいているメンバーです。大会ごとにお呼びして、学会活動を見ていただくのと、近年は多くのブース出展をいただき、個人会員との交流にも努めています。われわれの仲間である応用物理学会は、企業ブースが電子情報通信学会の4,5倍あります。相乗効果があり、多くの企業が出しているので来る人も多く、企業も出しやすくなっています。電子情報通信学会も近年企業展示が大幅に増えており、その中身は技術発表だけではなくリクルートも、企業のCSR的な活動もあります。
 続いて行われたのが、プレナリーセッション。今年は、ノーベル賞の梶田先生による「重力波により探る宇宙の謎」と東京大学特任研究員の永妻先生による「テラヘルツ波のこれまでとこれから-鍵を握る半導体と光電融合-」にとても多くの人が集まり、好評でした。もちろん、梶田先生の講演の人気と着目度は高かったですが、永妻先生が一生をかけてやっているテラヘルツの技術は、常に日本が世界を先導し、ユニークで画期的であったのが、圧巻でした。時代が動き、AIやバーチャルリアリティといったソフト的な技術が注目される中、このようにハードそれも材料やデバイスが大きなブレークスルーを持っているのが印象的でした。
 続く懇親会。ぜひシニアな方は出席してみてください。われわれシニアなメンバーは、ちょっと時間的な余裕もあります。懇親会で、30年ぶりの人と話したり、初めての方と話したり、知り合いの知り合いと話すのは、人生の宝物です。いつかは、このような会にも出席できない年齢が誰にでも来ますが、今はできます。だから今出席して思い出を作りましょう。懇親会だけ出席というオプションができたら面白いと思いませんか?(ぜひ、皆様のパブリックコメントをお願いします)。
 全体を通して、総合大会は本学会の看板であり、財産です。若い学生の人が生き生きと発表する姿を見ると、日本の技術に対する危惧がうそのようです。学生の人は、本当にいい経験をしています。就職すると学会を辞めてしまう人が多いのですが、短期的に発表しなくなった等で関係ないと感じるからだと思います。残念ながら、社会に出たら自分の実力で生きていくしかなく、守ってくれません。人間の進化が集団を作り協力しあって生き残っています。学会を利用した人生と学会を離れた人生を比較できませんが、会社以外のコミュニティは、大学の友達とかわずかなものです。ぜひ、ネットワークを作ってください。

学生ポスターセッション風景 Welcome party前の表彰式 ジュニア表彰式
水落氏講演 大槻先生講演
永妻先生によるプレナリー 梶田先生によるプレナリー

 3月の会長だよりはいかがですか?私の会長の任期ももうすぐで、あと1回書けるか否かの最終コーナーです。まだまだやり残しもありますが、とても前に進んだところもあります。「会長だより読んだよ」という方が非常に多くて、ご批判も応援もいただけています。絶対読んでくれないだろうと思っていた学生の方に言われたのは、感動でした。ぜひ、学生の方、今の悩みや質問を直接ください。すべてに返事をしています!! 
シニアな方も、どうぞ yamanaka(at)keio.jp(※(at)を@に置き換えてください)

第6号(2025年3月18日配信)

会長だより 2025.3 第6号

山中 直明

・情報処理学会 森本会長との意見交換

 情報処理学会は本学会とも関係が深く、私を含め、両学会の会員である方が多くいます。また、FIT(情報科学技術フォーラム)という全国大会を共同主催しており、互いに学ぶことの多い学会です。本学会の事務局長を含め、意見交換を頻繁に行っており、1月には森本会長とも意見交換を行いました。
 森本会長は、日本IBM社長のご経験を持ち、技術に精通しながらビジネスにも長けた方です。ジュニア会員制度などを先駆的に導入されました。今回の意見交換では、学会の課題や取り組み、さらには大学院教育から科学技術競争力に至るまで幅広い議論を行いました。
 グローバル競争力を高めるためには、国内の学会間の連携が不可欠であることに総論としては賛同が得られました。しかし、各学会にはそれぞれの経緯があり、迅速な対応が難しいという課題も浮き彫りになりました。この問題を会員の皆様と共有するため、「会長討論(ウェビナー)」を開催することにしました。4月初旬に実施し、公開予定です。

・IEEE ICNCへの本会Fellowの推薦

 IEEE ICNC(International Conference on Networking and Communications)はIEEEの中規模国際会議であり、採録率約20%という難関コンファレンスです。このICNCは、元富士通研究所でIEEE/IEICE Fellowでもある谷口氏が設立に尽力された会議であり、総合的な通信分野を扱っています。
 ICNCはハワイで開催されることもあり、米国とアジアからの参加者が半々を占め、日本の研究者にも親しみのある会議です。これまで、招待講演、キーノート、プレナリーセッションの講演者にはIEEE Fellowが原則、必須条件とされていました。しかし今回、本学会の多言語プラットフォームの取り組みを紹介する機会を得たことを契機に、IEICE Fellowも講演者選定の対象となりました。
 3月の総合大会では、新たなIEICE Fellowが選出されます。IEICE Fellowには学術的に優れたシニアメンバーだけでなく、比較的若手で現役の研究者も多く選ばれています。特に研究会などで活躍し、一分野を築き上げた「Rising Sun」と呼べる研究者も存在します。これを機に、日本を代表する研究者が世界で活躍する機会が増えることを期待しています。

・JPC(日本フォトニック協議会)新春特別フォーラム参加(1月24日)

 JPCは、学会横断的な機能を持ち、産業界との橋渡しを担う組織です。特に本学会のC分野(光関係)のメンバーと深い関わりがあります。日本政府が光技術の世界展開を支援する方針を発表した直後に、競争力のある技術がいくつか紹介されました。
 その中で特に印象的だったのは、太陽光発電の「ゲームチェンジャー」と称される、曲げられるパネル技術です。これを開発したペロブスカイト太陽電池の発明者である桐蔭横浜大学の宮坂教授の講演を拝聴し、その後、直接お話しする機会を得ました。
 宮坂教授は、小規模な研究室で地道に研究を進め、それをビジネスへと発展させ、現在は普及活動に注力されています。特に印象的だったのは、技術と政策を組み合わせた持続可能な発展の取り組みです。例えば、ペロブスカイト太陽電池には鉛が含まれていますが、使用後の環境への影響を防ぐため、回収・返却することで購入者に半額以上をリファンドする制度を導入しています。このような技術と政策の融合には大いに関心を持ちました。

・JST ASPIREのワークショップ(広島、室蘭、東京)参加

 本活動は、会長としての職務とJST(科学技術振興機構)の活動が半々という位置づけです。会誌の1月号では、JST橋本理事長との「グローバルトップサークルで活躍する人材を」という対談を掲載し、YouTubeでも公開しました。
 ASPIREは、日本の研究力強化を目指すプロジェクトであり、本学会の会員も多く関わっています。このファンドを活用し、世界のトップ研究者を日本に招聘し、国際会議を日本で開催することで、グローバルなCOE(Center of Excellence)を目指しています。
 JST ASPIREのワークショップ(広島、室蘭、東京)は、広島大学の藤島教授、室蘭工業大学の太田教授、早稲田大学の川西教授らが中心で開催し、いずれも本学会の会員です。私は各ワークショップでIEICEの活動を紹介し、多言語プラットフォームの取り組みを説明しました。技術的にはプラットフォームの整備が完了しつつあるため、今年は普及と宣伝に注力したいと考えています。本学会の論文誌はすでに15か国語での出版を開始しており、中国や韓国からの反響も得られています。

・電気学会理事との意見交換会(2月14日)

 例年、電気学会と相互に意見交換を行っています。今年も、会員の減少や会費収入の問題に加え、戦略的な取り組みについての情報共有を行いました。本学会のエンジニアリング分野の強化や海外戦略について説明し、電気学会からはAIを活用した学会向けワンストップサービスの試験的導入について紹介がありました。
 本学会も多くの活動やコンテンツが乱立しており、情報のアクセス性に課題があります。さらに、複数の学会を横断した情報提供の必要性についても議論が交わされました。今後も両学会が連携しながら、学術情報の提供を強化していきます。

・第7回電子情報通信学会理事会は関西支部で開催(2月17日)

 学問分野としてのソサエティがあるとすれば、地域を軸とする支部も重要な存在です。支部は、学生やジュニア会員、大学教授、地域企業などを連携させ、活動を行っています。東京支部は別格として、他の地方支部は日本の縮図のように様々な課題を抱えています。そのため、毎年理事会を各支部で開催し、意見交換を行っています。
 今回は関西支部を訪問しました。関西支部は独自に電気系4学会と連携して活動を進めていましたが、近年、他学会の体力低下により離脱するケースも出てきています。学会として本部で連携を進めることも重要ですが、まずは関西支部のソフトランディングを支援することが必要と考えています。
 関西支部での議論の前には、NTT西日本のインキュベーションサンドボックスを見学しました。関西は非常に活気があり、学会活動のさらなる発展が期待されます。

・総務省との意見交換(2月28日)

 総務省の幹部と理事会メンバーとの意見交換を行いました。内容は非公開ですが、議論のテーマは、研究開発の重点領域、産業界への技術展開、国際競争力の向上、人材育成における基盤強化など、多岐にわたりました。
 産官学の連携がなければ、日本の限られたリソースの中で世界競争力を強化することは困難です。今後も、互いに率直に意見を交換できる関係を維持し、より強固な連携を築いていきます。

・電子情報通信学会総合大会の開催(3月24日~28日)

 3月には電子情報通信学会総合大会が開催されます。会場は東京都市大学で、期間は3月24日から28日までです。無料のイベントも多数あり、学生は聴講料が無料です。
 初日には「GlobalNet Workshop(GNW)」が開催され、留学生によるポスター発表を通じたコミュニティ形成が行われます(参加無料)。企業からの聴講参加も増えており、特に情報系の採用が難しくなっている現状を考えると、企業側にも新たな採用の機会を提供できる場となるでしょう。
 現在、日本のトップ大学では、海外からの第2の留学ブームが到来しているとも言われています。留学生の中には(失礼ながら)日本人学生よりもはるかにまじめで優秀な人が多くいます。しかし、日本独自の就職活動の仕組みに取り残され、希望していた日本での就職を断念し、母国へ帰るケースも少なくありません。
 留学生たちは日本語が不十分な場合もありますが、大学はすでにグローバル化しており、学生同士で「日本語で質問し、英語で回答する」といった多言語コミュニケーションが日常化しています。企業の皆様も、ぜひこの機会に留学生の意欲と才能に触れてみてください。半年もすれば、十分に適応できるはずです。留学生のキラキラした目を見に来てください。

<総合大会>https://www.ieice.org/jpn_r/activities/taikai/general/2025/

< GNW >https://www.ieice.org/jpn_r/activities/taikai/general/2025/en/gnw.html

第5号(2025年2月4日配信)

会長だより 2025.2 第5号

山中 直明

 花粉症の方にはつらい時期ですが、一方で卒業、修了、定年、就職、転職の季節でもあります。新たなスタートを楽しみにしている方も多いかと思いますが、今後も変わらず電子情報通信学会とお付き合いください。今回は、2024年の年末を中心にご報告いたします。

・電気・電子系高度技術者育成プログラム参加

https://www.ieice.org/jpn_r/activities/eceprogram/2024/

 電子情報通信学会では、産業界で活躍する方々のリスキリングやスキルの維持、向上を目指した教育プログラムを提供しています。このプログラムは日本工学会にも選定され、修了者には修了証が授与されます。元NECの廣崎委員長に命じられて初回に参加しました。リスキリングや生涯教育の重要性を常に感じており、大学のみならず学会もその役割を担うべきです。技術の発展が著しく、雇用の流動性が高い現代において、その重要性は非常に大きいです。会場とオンラインで分かれて開催されましたが、会場は満席で、自分で勉強しきれない分野を専門のエキスパートに学ぶ貴重な機会であることが分かりました。

・ドコモモバイルサイエンス賞授賞式参列

 電子情報通信学会のコミュニティには多くの財団賞があります。その中で、ドコモモバイルサイエンス賞は50歳未満の優れた研究者に授与されます。今年は本会会員である東京科学大学の白根篤史准教授が「地上と宇宙をつなぐ無線通信機の研究」で受賞しました。

https://www.mcfund.or.jp/mobilescience/award/no23.html

 この賞の歴代受賞者を見ていただきたいと思います。結論として、本学会で活躍されている「あなた!! 次の受賞者」です。私は会長として授賞式に参列しました。審査員は我々の先輩方で、この分野の技術を深く理解している方々です。懇親会では、本学会に対する叱咤激励の提案を受け続けましたが、本学会会員の皆様、ぜひ応募してください。チャンスは大きいです。この内容は会誌に特集される予定です。

ドコモモバイルサイエンス賞

・KICS Fall Conference 2024出席

 慶州というソウルからKTX(新幹線のようなもの)で2時間の美しい歴史の町で開催されたFall Conference(電子情報通信学会の全国大会)で発表しました。特別に1時間、研究の話題の前に「IEICE」を紹介する機会をいただきました。大変関心を持っていただき、日本から発表に来る人が珍しいこともあり、日本に対する好感度も高いと感じました。ただし、ポスターやオーラル発表がすべてハングルであることが大きな悩みです。友人のKICSのKimさん(日本語が話せる方)と共にポスターを見て回りました。若い方は英語ができるのに話したがらず、日本人と似た傾向です。一方、シニアの方々には日本語が話せる人も多いです。これにより、プラットフォームのアプローチに自信がつきました。その後、KICSの会長、副会長、理事と半日議論し、アジア全体で協力して「スターアライアンスを作ろう」という考えで意気投合しました。私の考えは、韓国も日本も一国では勝てないため、得意分野を持ち寄り連携してチームで勝つラグビーのOne Team精神を訴えました。
次はベトナムか台湾か、新たな仲間を作ります。

・会長声明のフォロー

https://www.ieice.org/jpn_r/president/2024/statement.html

 現在、会長声明のフォローを行っています。いくつかの学会で説明し、多くの方からコメントをいただき、それを分析しています。賛否の意見を考慮したパネルディスカッションも計画中です。コメントには、「早くどうにかしてほしい」、「研究室のレベルや雰囲気が変わった」というポジティブなものと、「企業も長引く就活で被害者なのに」、「経団連の申し合わせが廃止された時のことを知らなすぎる」、「学会で扱うのはナンセンス」という意見もあります。「黙る」や「あきらめる」は「現状を肯定する」と同じと考えており、変わらないことでも声を上げることが重要だと思います。ご意見は以下のURLからお願いします。

https://www.ieice.org/jpn_r/index.html

・理事会(12月16日)

 理事会は会員の方々にとって少し遠い存在かもしれませんが、会長、副会長、それぞれの担当理事、ソサエティを代表するソサエティ会長、次期会長、支部を代表する東京支部長が参加しています。会誌には理事会の議事録が掲載され、常に公開されています。現在の理事会の大きな議題は以下の2つです。
1.サステナブルな財務体制
2.グローバル化の推進
 これらはまだ議論中ですが、背景には会員数の減少があります。15年以上連続して会員数が減少していましたが、増加への取り組みが功を奏し、既に底を打ち、徐々に増加傾向が見えています。しかし、少子化社会の日本では大きな会員数の増加は難しいです。そのため、グローバル化を組み合わせていきますが、まずは財政の安定が重要です。電子情報通信学会では、会費、会議、出版のポートフォリオで収益を得ています。米国のIEEEでは会議と出版が大きな収益源です。電子情報通信学会でもコンテンツや会議による収益を確保し、ジュニア会員制度や地方での活動を増やす取り組みを行っています。
 グローバル化は日本社会の縮図です。英語=グローバルの中で縮小しているのも事実です。クラウドサービスがGAFAと連携しながらローカルなエッジを活用するのと同様に、電子情報通信学会はローカルからグローバルへの橋渡し役を強化しています。特にアジアは言語的なハンデが大きい地域であり、多言語プラットフォームを活用して連携していくことが必須です。
 実は年末最後の理事会は懇親会付きです。理事の方々と(もちろん私費で)懇親会が開催され、昼間言えなかった意見を聞く場になります。現場での問題や会員の方々からの意見を聞くネットワーキングの時間になります。会長としては言われっぱなしで辛いですが?

・最後に

 今回の会長だよりはいかがでしたか? 会長だよりには皆様から大変多くの反響をいただいております。米国大統領もITトップも毎日Xやブログを更新して意見を発信し、見える化に努めています。会員で運営されている学会も、もっと見える形にしていきましょう!
 会員がハイライトされる世界、努力し活躍した人が報われる世界を目指して、電子情報通信学会は努力を続けます。

 
 

増刊号(2025年1月17日掲載)

会長だより 2025年 増刊号

山中 直明

第23回ドコモ・モバイルサイエンス賞 授賞式報告(Web版)

2025年10月25日に「第23回ドコモ・モバイルサイエンス賞」の授賞式に出席致しましたのでご報告致します。
こちらからご覧下さい。

報告書

新年号(2025年1月14日配信)

会長だより 2025年 新年号

山中 直明

未来を作り残す責任

 新年あけましておめでとうございます。年が明けてすぐですと、多くのメールに埋もれることと思い、少し遅いご挨拶となります。今年も電子情報通信学会をどうぞよろしくお願いいたします。
 新年の話題として、AIと情報についてお話ししたいと思います。"インフォメーションヘルス"という言葉をご存じの方も多いと思いますが、フェイクニュースや情報操作は大統領選挙に重大な影響を与えるだけでなく、最も大切な人権をも危険にさらしています。ノーベル物理学賞を取るようなAI技術を、人間は共有し、賢く使い切る責任があります。
 友人である慶應義塾大学法科大学院の山本教授から教えていただいたのですが、ヨーロッパではAIが最終決定をしてはいけない事項が法律で定められています。例えば、結婚や人事の最終決定は人間が行います。これは、AIにコントロールされる社会ではなく、AIにアシストしてもらう社会を作るためです。人生や人間とは何か、幸せとは何かという根源的な問いに立ち返る必要があります。AIが結婚相手を選ぶ方が幸せになる確率が高いといわれていますが、本当にそうでしょうか?
人生は、喜びや悲しみ、悔しさや失敗の連続です。失敗の確率を減らすだけが幸せではありません。むしろ、失敗から挽回し成功することにこそ幸せがあるのではないでしょうか。
 AIの研究が進み、生成AIが登場したことで、人間の思考のメカニズムも明らかになりつつあります。私たちはニューラルネットに入力(経験)を与え、その結果を学習します。たとえば、さまざまな犬を見ることで「これも犬だ」と認識します。この経験が重要であることは以前から知られています。幼少期にさまざまな経験を積むことで、自分自身のニューラルネットを鍛え、高度な判断力や対処能力を身につけることができます。
 私が危惧しているのは、多くの学生が生成AIを使ってレポートを書いていることです。もちろん、調べ物や情報整理をAIに助けてもらうのは否定しません。しかし、課題をそのまま入力し、適当なプロンプトを入れて、内容が正しいかどうかも確認せずに提出してしまうのは問題です。時には非常に優れたレポートになることもありますが、それで済ませてしまうと、AI時代には不要な人材であると自ら認めることにならないでしょうか?誰がやっても同じような答えにたどり着く仕事は、人間の価値を損ないます。学生時代こそ、自分のニューラルネットを鍛えるトレーニングの期間です。自分で考え、フィードバックを受けて学習することで成長します。スポーツ選手が効率よく筋肉を鍛えるように、日々のトレーニングが欠かせません。学生の皆さん、成績がBやCでもいいので、安易な生成AIの利用で自分の未来を失わないようにしましょう。その方が、50年後に活躍する未来に向けて絶対に有利で得をします。
 技術者である私たちは、技術が社会でどのように使われているのか、それが人類にとって本当に幸せを生んでいるのかを考える責任があります。もはや技術だけを追求する時代ではありません。技術、法律、経済、倫理、政策を総合的に駆使して未来を守る必要があります。
 30年以上前に初めて子どもが生まれた時、そして孫が生まれることで、社会や地球の未来がますます大切に思えるようになりました。
「このままじゃ地球がなくなっちゃう」という声が聞こえてきます。地球温暖化、エネルギー不足、食糧危機、戦争…我々にできることは小さいかもしれませんが、それでもやれることはたくさんあります。研究や開発に携わる方々は、エネルギー削減や環境負荷低減を目標の一つに加えてください。学生や若い会員の方々は、社会に役立つ仕事を選び、活躍してください。そしてシニアのメンバーは、まだまだ頑張ってボランティアや社会貢献をお願いします。
 電子情報通信学会は、2025年も社会と地球に真に役立つ学会を目指します。今年一年、皆さまが元気でご活躍されることを願っています。

第4号(2024年12月20日配信)

会長だより 2024.12 第4号

山中 直明

・プラチナクラブ参加

 あまり聞いたことのないメンバーも多いかもしれませんが、電子情報通信学会はコミュニティです。学生の時は、緊張して、みんなの前で発表する練習、社会人になると、世界の動向や、他の研究者とのリンク、さらには、自ら学会発表、そして、第一線を退いた後は、後輩の指導やアドバイス。ボランティアやさらにゆっくりと楽しむために、プラチナクラブを作りました。当時のサービス委員会の河東元委員が作りました。すでに第9回。私は昨年度まで、プラチナクラブの委員長でもあったので、思い入れがあります。
https://www.ieice.org/jpn_r/activities/platinum-club/index.html
 8月9日には、東大本郷キャンパス。正直、猛暑の中、高齢な方々との参加です。東大の3号館で学ばれた人は、すっかり変わった最先端の中尾先生のプレゼンや、中尾研の実験を見学し、久しぶりにリフレッシュされていました。その後は、本郷キャンパスツアーをして、いつもの懇親会。実は、久しぶりの再会の方々も多く、また、昔の話や最近の話題に花を咲かせました。

東大本郷キャンパス1 東大本郷キャンパス2

 10月3日は第9回、今度は東京科学大学(旧東工大)です。これは非常に多くの東工大OBから、統合されてどうなっちゃったんだ?変わったのか?と言われ、統合されたらすぐに行こうと計画され、統合後3日目に訪問しました。まず入り口、「東京科学大学」という立派な看板の前で、記念写真に5分ほど並び、その後、入りました。東京医科歯科大学と合併しましたが、中に入ると、すべて見慣れた東工大のキャンパスで、これから統合が進むと言っておりました。植松教授、西原特任教授らの案内で、量子コンピュータから、ドローンや自動運転といった技術の実デモまで体験でき、素晴らしい1日となりました。

東京科学大1 東京科学大2東京科学大3

 伝統と歴史ある大学の雰囲気、大切に引き継いでもらいたく思いました。

・電子情報通信学会東京支部、子ども科学教室

 もう15年以上続けている、子ども科学教室で、「光糸電話を作る」をやっています。これは、東京支部が主催してサポートいただき、多い年だと、年に500人ぐらいの子どもたちに科学を体験していただくイベントを、数々こなしています。今年のラストは、9月21日で、慶應の新川崎タウンキャンパスという、私のホームグラウンドです。プラチナクラブの会員や、日本女子大の小川先生の研究室のメンバーにも助けられて、1日を過ごします。子どもたちは、お父さんお母さんに連れてこられた子が多く、はじめは、あまり気が乗らない感じですが、自分で電卓を分解して、懐中電灯の光で声が聞こえると、会場は大騒ぎになります。実は、小学生の子どもたちだけではなく、大学院の学生も初めてで、充実した体験、さらには、シニアな会員の人は、本当に、くたくたになりながら、楽しい1日を過ごしています。時々私に、「おじいちゃんたちが、子どもに遊んでもらっているのですよ!」と言われながら、みんな満足して帰ります。
https://www.youtube.com/watch?v=cCcpD0u9CPc
ぜひ、希望者は、手伝ってください。

子供科学教室1 子供科学教室2

・最後に

 今月号は、たいへん遅れて、楽しみにしていた方(いないかもしれませんが)申し訳ございませんでした。
学会は、全国大会、ソサイエティ大会が、順調でにぎわっています。一方で、論文投稿数や海外会員とか、課題も、日本全体の縮図として存在します。我々は、オープンサイエンスの火を消すことなく、技術で世界を豊かに、安全に、幸せに、そしてサステーナブルにしていきましょう。

第3号(2024年10月2日配信)

会長だより 2024.10 第3号

山中 直明

・ソサイエティ大会

 自宅から2時間以上かけて、日本工業大学(東武動物公園駅)で行われたソサイエティ大会に、3日間参加しました。参加された方は、広くてきれいで立派な校舎に驚かれたと思います。ちょうど学長の竹内先生と懇親会でご一緒するチャンスがあったので、「どこから寄付金を集めたのですか?」と聞くと、「全然集まりませんよ。全部地道な努力です。」とおっしゃっていました。学内には、本物の機関車があり、とにかく実際の物を触りながら教育を受ける「実学」の大学でした。

・GlobalNet Workshop

 前日に、主に留学生や海外セクションの方が集まるGlobalNet Workshopが開催されました。これで4回目。実は、日本は再び、留学先の人気国になりつつあります。(米国のVisaが厳しくなっていることもあり)慶應義塾大学にも、多くの留学生が来ています。このGlobalNet Workshopを紹介します。ポスターで、全部で70~80件同時に発表されるのですが、奇数と偶数で、交代で発表します。ちょっと分野の異なるメンバーも多いので、わかるように発表するのがポイントです。始まってしばらくすると、“クラスター”が 形成されていました。ちょっと離れて聞くと、“中国語”、“マレー語”といった、母国語で話しています。聞いた話によると、特に地方の大学だと留学生も少なく、同じ国の人もいなく、孤独になるそうです。その方々が、電子情報通信学会のGlobalNet Workshopで友達になるのは、まさしくNetworkingです。

GlobalNet Workshop

・会長声明

 8月26日に「大学院生の教育機会を尊重した求人スタイルへの移行」という会長声明を出しました。
https://www.ieice.org/jpn_r/president/2024/statement.html
この頃、特に顕著になっている1dayとか2daysインターンシップについてです。正確には、インターンシップとは言わない(中長期のもののみ言う)のですが、すでに、webにも堂々と「1dayインターンシップ参加者には内定のチャンス!」という文字が並びます。インターンシップ自身を否定するものではありませんが、学生は、もう修士1年になると同時に就職活動を始めて、いくつものインターンシップに参加し、いくつもの内定をとって、「希望が見つかりません」を繰り返してしまっています。そりゃそうで、「1次選考免除」とか言われれば、インターンシップに行かないと不利ではないかと心配します。あまりに加熱しすぎていませんか? 
 実は、卒論と修論は、日本独自のとてもユニークなシステムです。問題発明能力、問題解決、チームワーク(先輩後輩)、説明、発表(学会発表の経験は重要)、展開、そしてグローバルな経験(国際会議に行く人もたくさんいます)もたくさんあります、決して研究者にならなくても、センター試験の4択と比べれば、こんなクリエーティブな教育はありません。学生たちは余裕を失い、この卒論、修論のチャンスを少なくても削ってしまっています。
 さて、これを10年続ける日本に未来があるのか?と疑問を持ち、声明を出しました。絶対に読んでください。そして、人事や上司、子ども、学生に読ませてください。メッセージは、「学会でがんばっている学生を見て、採用を決めてください」です。米国でも、むしろ過熱気味に大学院の学生はトップコンファレンスで自信たっぷりに発表し、その場で就職前提のコンタクトが始まります。これが、むしろ正しいグローバルスタンダードです。学生は、勉強し、その成果で就職するのです。

・韓国日帰りの旅

 韓国には、3万人を超える会員を有するKICSという学会があります。電子情報通信学会とかなり近い領域の学会ですが、先日、創立50周年記念のセレモニーがありました。ビデオメッセージでということでしたが、われわれ電子情報通信学会が、最も重要としているグローバルパートナーでもあるので、行って祝辞を述べるべきと考えました。コロナ禍後、初めての韓国で、初めての日帰りをしました。早朝の飛行機で行き、最終で帰ります。韓国は、とにかく元気が良い。人口は日本の半分以下ですが、アクティビティは、日本以上です。本学会の多言語プラットフォームを紹介したら、大変興味を持ってくれました。そう、韓国もマイナー言語で、グローバル化に苦しんでいます。英語がすべてのグローバル化と、アイデンティティを尊重しながら、お互いに融合していくグローバル化があってもいいと思っています。このような近くにいるグローバルな友人を大切にして、お互いに連携してやっていきましょう。

・最後に

 第2号で「会長だよりを書いても誰も反応してくれなくて寂しい」と書いたら、30件くらいメールやSNSのメッセージをもらいました。20年以上会っていない友人や、元の会社の先輩からも「おまえ会長やっているんだ」と言われました。質問!意見!文句!をくださいと言ったら文句が多いので、今回は、電子情報通信学会に対するエールをお願いします?うれしくなって、一生懸命働きます。
Mail to: yamanaka(at)keio.jp (※(at)を@に置き換えて下さい)

第2号(2024年8月13日配信)

会長だより 2024.8 第2号

山中 直明

 こんにちは、甲子園が始まると夏休みも中盤になったとちょっと焦りますよね?その癖が、社会人になってからもあって、甲子園の決勝がちょっと寂しいのは「サザエさん症候群」というのだそうです。知らない若い人もいるので解説すると、サザエさんという漫画番組は日曜日18:30から放送されていて、漫画は面白いのですが、始まると明日からまた学校や会社が始まると思い、ちょっと暗い気持ちになる現象です。

 さて、今日は、電子情報通信学会東京支部が取り組む子供科学教室の報告をしたいと思います。私は、もう10年以上、活動としては20年以上、この子供科学教室を担当しています。電子情報通信学会の東京支部の公募型の科学教室です。
 まず、子供科学教室で取り上げている「光糸電話」とは何かについて説明します。光糸電話は、電話を発明したグラハムベルが太陽の光を利用して、通信(電話)の実験を行った「Photo Phone」を簡易化したもので、糸電話の糸を光に置き換えたものです。簡単に言うと、懐中電灯の光を、プラカップに貼ったマドレーヌのカップの銀紙にあててしゃべることで、銀紙が震えます(変調)。この光を太陽光パネルで受光して電気に変え、ラジカセのカラオケマイクから入れて音を出す簡単な仕組みです。詳しくは、以下のYouTubeを御覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=cCcpD0u9CPc&t=3s

 公募型の子供科学教室は、会員がやっている、やりたい子供科学教室を公募し、採用されると材料費等を支援します。材料費を子供から取るのは心苦しいので、この支援はとても助かっています。
 この子供科学教室は、私の研究室の初期のメンバーが始めたものです。NTT研究所でやっていたデモをみて「うちでもやりませんか?」と提案し、NTTのOBの方に教えてもらいながら改良を重ねました。子供の科学離れ、理科離れを嘆くだけでなく、実際に行動することが大切です。小学生の少年野球のように、少し野球の上手な子が他の子に教えたら、みんな楽しいし野球がうまくなりますという考えです。
 慶應義塾は、「半学半教」の精神を大切にしており、すべての人が学び教えあうことを推奨しています。「半学半教」は、いわばゼミのはじめと言われています。サークルですね。先輩が後輩にテニスを教える考えです。これは、当時の特に外国の学問は立派な先生がいて、教えてもらうというのではなく、自ら学び、自ら教えあうというところからのスタートで、とてもいいことです。フランス語でも”noblesse oblige”と言って「位高ければ徳高きを要す」と訳されていますが、そんなにかっこつけなくていいと思います。科学が好きで理科が得意な技術者である我々が、夢を見ている子供たちに科学を教えて、わくわくして科学者になってくれたらいいね!という意味でしょうか?我々技術者の社会的責務ですね!(野球が上手でなければ、少年野球のコーチになれないんだから)。

 おおよそ90分1ラウンドの科学教室は汗びっしょりですが、子供たちや保護者たちの大騒ぎが、毎回本当に楽しいです。実は、子供に教えているのですが、きっとわれわれが教わっている、成長しているのだと思います。いつも、終わってアイスを食べながら、みんなニコニコ帰ります(へとへとですが)。この活動も、はじめは、ちょろちょろやっていたのが、一緒にやり始めたお仲間のおじいさんたちが、グループを作り、年間400回とか言っていました。もう勝てません!

 今回の会長だよりは、ボランティアの楽しみ方についてでした。お金がもらえるわけでもなく、名誉でもなくても、本当に人のためになることをできる範囲で、少しずつやっていきましょう。きっと、素晴らしい社会を築く第一歩だと確信しています。
 大体夏休みの間がピークですが、電子情報通信学会には多くのジュニアプログラムや子供科学教室があります。楽しむ側でも、ボランティア側でもいいので、残り少ない夏休みをお楽しみください。われわれも、9月21日に慶應義塾大学新川崎タウンキャンパスで子供科学教室をやります!
 会長だよりを書いているのですが、誰からも「面白かったよ」とも文句も言われません。寂しいので yamanaka(at)keio.jp (※(at)を@に置き換えて下さい)に質問!意見!文句!お願いします。

第1号(2024年6月7日配信)

会長だより 2024.6 第1号

山中 直明

 2024年6月から1年間会長を務めます慶應義塾大学の山中直明です。よろしくお願いします。
 先日、慶應三田で文理連接(融合)をねらったワークショップに参加しました。“連接”とは、初めて聞く言葉ですが、経済学部の井奥教授が使っていました。連携よりは接でつながり、融合のように混ざって動けなくなるのではなく、下記のような絵で示され、核反応を思い浮かべるような、いろいろな点で接点を持って、マヨネーズのように新しい価値を出すものだそうです。

連接イメージ図

 文理連携の必要性は、自動運転の研究の時に強く感じました。自動運転は、現状の技術でも、事故は1/100とも1/1000とも言われるほど減少します。しかし、最大のネックは、事故を起こしたときに、その責任を必要以上に追求し、動けなくなる日本の体質だそうです。これも、何かに書きましたが、三田で行ったパネル討論会で、すべての事故をゼロとする技術がないから悪いとすれば、100年かかって1億円の車を作るでしょうし、運転者はいませんから、利用者なり所有者責任とすることになると思います。ここで、社会的メリットをマクロに判断すれば、すぐにでも自動運転を導入して、保険料は1ドルと言われるくらい合理的ですが、日本には、決めきれないそうです。その結果が、先進国での開発遅れを感じることになったコロナワクチンだったりしているわけです。これから、電子情報通信学会で活躍されている、つまり、見識を持っている我々が考えることのひとつが、AIにどこまで頼るか、ある判断をAIが行なっていいか否かで、ヨーロッパは、重要事項の最終決定をAIに決定させることに制限を与えているそうです。例えば、人事。
 実は、AIの方が、合理性が高く、人間のようにバイアスして考えないので、正確な判断と客観的には考えられます。マッチングアプリで、候補はよいが、決めるのは本人たち。このぐらいはよいようにも感じますが、やはり、AIを駆使したほうが、正確で合理的であるとも考えられます。
 ここで、主張したいのは、我々の分野は、すでに技術だけではなくなっています。社会インフラや社会そのものでもあるということです。そのための法整備や、社会的コンセンサス、制度や政策、さらには、ビジネスや経済的協力に目を向けて、学会でもその力を磨いていきましょう。