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研究賞2022年被表彰者

委員による厳正な審査の結果,2022年の優秀研究賞・学生研究賞はそれぞれ以下のように決定しました(2023年2月21日決定,2023年2月28日公表).なお,規程に基づき,優秀研究賞は共著者を含む全員,学生研究賞は筆頭著者である学生が表彰の対象となります.

優秀研究賞 (Best Paper Award)

受賞者

瀬川 修(中部電力)・村上一彦(中電CTI)

タイトル

単語の分散表現と意味的なベクトル演算に基づく関連キーワード推定

  • 2022年9月 第19回テキストアナリティクス・シンポジウム における発表
概要

従来,テキストマイニング等における関連キーワードの推定においては,観測窓内の単語分布に基づく共起性の評価による手法が用いられることが多く,概念間の意味的コンテキストを反映した方式は実用レベルでは十分に検討されていない.本稿では,単語の分散表現と意味的なベクトル演算に基づく「シチュエーションの合成」によって,入力されたコンテキストに適合する関連キーワードを推定する一手法を提案する.

選奨理由

ヒューマンエラー事象に関連するキーワードの推定に対し,ニューラルネットワークの枠組みに基づく新たな分析手法を提案している研究です.ヒヤリハットの分野で単語ベクトルを用いて,危険な状況の場合になにが重要になるかを取り出せることを示している点,専門分野でテキストを学習させるとWikipediaほど大規模でなくても有効であることを示している点から高い有用性を示しています.また,分散表現の意味合成を利用して実用的な応用を目指す研究であり,非常に新規性が高い研究であると考えます.これらの有用性・新規性から本研究が優秀研究賞にふさわしいと判断しました.

学生研究賞 (Best Student Paper Award)

受賞者

榎本 悠(九工大)

タイトル

生成的自然言語推論のためのデータ収集とモデル構築

  • 2022年3月 電子情報通信学会「言語理解とコミュニケーション(NLC)」研究会 における発表
  • 著者:榎本 悠・嶋田和孝(九工大)
概要

我々は日常生活の中で常識を用いた推論をよく行っている.例えば,「目が覚める」というイベントの後に起きるイベントを考えたとき,「顔を洗う」や「朝ご飯を食べる」といったものが一般的に考えられる.このような自然言語推論は自然言語処理分野における主要なタスクの1つであり,盛んに研究が行われている.自然言語推論はそのほとんどが分類タスクとして解かれている.しかし,分類モデルは与えられた選択肢以外の回答を出力することができない.そのため,推論モデルは真の意味で推論を解いているといえない.これに対して,より柔軟に,真の意味で推論を解くことのできるモデルが生成モデルである.生成モデルは分類モデルと比べて,モデルの出力数を調整することで大量の推論結果を得ることが可能である.また,任意の入力に対して,生成モデルは対応するイベントを生成することができる.そこで本論文では,生成モデルを用いた自然言語推論を行う.しかし,生成モデルを用いた推論の研究は少なく,データも不十分である.そのため,Twitterデータを用いて前後関係を持った大量のイベント文のペアを収集する.その後,収集したデータを用いて生成モデルである Seq2Seq や T5 を学習させ,生成実験を行う.しかし,出力結果が正しいものであるかを人手で判断することは難しい.そこで,編集距離を用いた評価方法の提案を行い,その結果について考察する.

選奨理由

生成モデルを用いた自然言語推論に向けて,データセットと生成モデルを構築した研究です.本タスクに適した評価方法も提案しており,本研究の結果から得られる知見は有用であると考えます.新しく意義のあるタスクに対して適切なアプローチで取り組まれていることから信頼性も高いです.これらから,本研究が学生研究賞にふさわしいと判断しました.

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最終更新時間:2023年02月28日 14時44分18秒