研究賞2018年被表彰者
委員による厳正な審査の結果,2018年の優秀研究賞・学生研究賞はそれぞれ以下のように決定しました(2019年1月11日決定,2019年2月4日公表).なお,規程に基づき,優秀研究賞は共著者を含む全員,学生研究賞は筆頭著者である学生が表彰の対象となります.
優秀研究賞 (Best Paper Award)
- 受賞者
角森唯子(NTTドコモ)・東中竜一郎(NTT)・吉村 健(NTTドコモ)
- タイトル
対話から獲得したユーザ情報を用いる雑談対話システムの構築とその長期的な評価
- 2018年7月6日 言語理解とコミュニケーション研究会@北海道大学 における発表
- 概要
ユーザのことを覚えて話すことで,より話したくなり,長期的に使われる雑談対話システムの実現が期待できる.本稿では,対話から獲得したユーザ情報(ユーザが対話中に述べた好みや経験)を用いる雑談対話システムの構築と,システムと5日間継続して対話を行う評価実験の結果について報告する.まず,複数日にまたがって対話から獲得したユーザ情報をシステム発話に使用できるシステム,対話当日に獲得したユーザ情報のみ使用できるシステム,ユーザ情報を全く使用しないシステムを構築した.次に,ユーザがこれらの対話システムと5日間継続して対話を行い,継続利用におけるユーザ情報の使用が満足度向上に寄与するかどうかについて評価実験を行った.その結果,1日目はシステム間での差はほとんど見られなかったが,日が経過するにつれて,複数日にまたがって得られたユーザ情報を使用するシステムの満足度が有意に高くなることが確認できた.
- 選奨理由
長期的評価という観点から,対話から獲得したユーザ情報を用いる対話システムを構築し,ユーザの満足度評価を行った研究です.長期的評価という対話システムの評価観点に萌芽性があり,他の研究への促進・波及効果があると考えられます.また,複数日にまたがって獲得したユーザ情報を使用する実システムを構築している点,5日間に渡り詳細な評価を行っている点に高い実用性と信頼性があると考えられます.上記のような萌芽性,実用性,信頼性の観点から,本研究が優秀研究賞にふさわしいと判断しました.
学生研究賞 (Best Student Paper Award)
- 受賞者
山下紗苗(明石高専)
- タイトル
人手による感情ラベル付けにおける応答時間に着目した感情推定難易度の評価
- 2018年9月6日 第13回テキストアナリティクス・シンポジウム@成蹊大学 における発表
- 著者:山下 紗苗・上 泰(明石高専)・加藤 恵梨・酒井 健・奥村 紀之(大手前大)
- 概要
本研究では,日本語文章に含まれている筆者の感情推定を目的とし,読者による感情推定に要する時間から感情推定の難易度について検証している.感情推定に要する時間のみならず,推定の困難な単語の抽出など,人間が感情を認識するに至る過程を明らかにし,プログラムでの感情推定に活用することを目指す.感情推定に用いる感情の分類については Plutchik の感情の輪を用いる.なお,本研究が対象としている日本語文章は著者のTwitterのログである.
- 選奨理由
日本語における筆者の感情推定というタスクにおいて,被験者実験において感情推定に要した時間から,感情推定の難易度を評価した研究です.感情推定の難易度を検証するという点,「感情推定に要する時間」という非言語情報を用いるという点,それぞれに高い萌芽性があると考えられます.また,評価実験の分析結果において,実際に感情推定が困難な事例には一定の特徴があることが示唆されていますが,これはテキスト解析の技術を用いた感情推定の役立つ知見であると考えられます.上記のような萌芽性・将来性という観点から,本研究が学生研究賞にふさわしいと判断しました.
最終更新時間:2019年02月04日 15時08分37秒