研究賞2017年被表彰者
委員による厳正な審査の結果,2017年の優秀研究賞・学生研究賞はそれぞれ以下のように決定しました(2018年1月24日決定,2018年1月26日公表).なお,規程に基づき,優秀研究賞は共著者を含む全員,学生研究賞は筆頭著者である学生が表彰の対象となります.
優秀研究賞 (Best Paper Award)
- 受賞者
水木栄(ホットリンク)・榊剛史(ホットリンク)
- タイトル
汎用性を志向したWikipediaエントリへの拡張固有表現付与
- 2017年6月10日 言語理解とコミュニケーション研究会@鳥取大学 における発表
- 概要
本研究では,Wikipedia記事の見出し語に対して細粒度の固有表現ラベルを付与する課題に取り組む.ただし本研究では,任意の語に対する固有表現ラベルの付与を志向するため,Wikipedia記事の構造に特有ではなく,平文コーパスにおいても獲得可能な情報を利用する手法を提案する.具体的には,見出し語およびその疑似的な上位語の分散表現を特徴量として,マルチタスク学習によりマルチラベル分類を行う手法である.実験の結果,提案手法は既存研究を若干上回るF値を実現できることを確認した.また複数の擬似的な上位語を獲得して特徴量に追加することにより,分類性能が向上可能であることを示した.
- 選奨理由
実応用上も重要である拡張固有表現のラベル付与の課題について,マルチタスク学習を用いた新たな手法を提案しています.精度を犠牲にせずに汎用性の向上を実現しており,幅広い文書データへの対応可能性が期待されます.また,データの加工方法や結果に対する考察が詳述されており,他の研究の促進も期待できます.研究として先進性と有用性があり,優秀研究賞に値すると考えられます.
学生研究賞 (Best Student Paper Award)
- 受賞者
室野莉沙(成蹊大)
- タイトル
- 2017年9月18日 第11回テキストアナリティクス・シンポジウム@成蹊大学 における発表
- 著者:室野莉沙(成蹊大)・酒井浩之(成蹊大)・坂地泰紀(東大)・ベネット ジェイスン(三井住友アセットマネジメント)
- 概要
本研究では,決算短信から抽出した原因・結果表現が,意外性のあるものかどうかを自動的に判定する手法を提案する.例えば,「今夏の猛暑の影響により」という原因表現に対して「飲料用紙容器の販売が増加した」という結果表現を意外性がある原因・結果表現と判定する.猛暑の場合においてはエアコンやビールの販売が増加することは容易に想像できるが,「飲料用紙容器」の販売が増加する可能性があるということを想像するのは難しい.本手法では,上記の例において「猛暑」と共起する結果表現における単語との条件付き確率と,原因・結果表現に含まれる重要キーワードのスコアを用いて意外性の判定を行う.
- 選奨理由
テキストから得られる知識の「意外性」に着目し,そのスコア算出および評価の方法を提案しています.実際にこの手法で抽出された原因・結果表現が非常に興味深く,また,考察が詳細に述べられており,今後の研究に繋がることも高く評価できます.研究として進歩性と将来性があり,学生研究賞に値すると考えられます.
最終更新時間:2019年02月04日 14時18分50秒