研究賞2021年被表彰者
委員による厳正な審査の結果,2021年の優秀研究賞・学生研究賞はそれぞれ以下のように決定しました(2022年2月16日決定,2022年2月17日公表).なお,規程に基づき,優秀研究賞は共著者を含む全員,学生研究賞は筆頭著者である学生が表彰の対象となります.
優秀研究賞 (Best Paper Award)
- 受賞者
榊 剛史(Hottolink)・松野省吾(群馬大)・檜野安弘(Hottolink)
- タイトル
SNSマーケティング応用に向けたTwitter上のプライベートグラフにおける地理的な偏りの検証
- 概要
マーケティングにおいては,同質性の高い消費者をひとまとまりのクラスタと見なし,そのクラスタを用いて,マーケティング・コミュニケーションや広告配信の対象とする消費者群を選定してきた.ウェブ以前は、同質性の高い消費者の属性として,人口統計で用いられるような属性ー性別、地域、年齢、職業などが用いられてきた.一方,ウェブの登場によりそれらの属性とは異なる単位で消費者が行動を起こすようになってきた.そのような背景の元,SNSマーケティングでは、ソーシャルグラフに基づくターゲティングが有効であると言われている.代表的なアプローチとして,「プライベートグラフで結ばれたユーザー群をクラスタとして扱うことが有効である」という仮説がある.これには,1)プライベートグラフで結ばれたユーザは同質性が高い、2)プライベートグラフで結ばれたユーザ間では情報が伝わりやすい、というプライベートグラフの2つの特徴に立脚している.しかし,プライベートグラフの存在を検証した研究は少ない,本研究では,プライベートグラフ実際に存在するかの検証を行う.特に居住地が近いユーザ同士のプライベートグラフに着目する.Twittter上でのソーシャルグラフでつながっているユーザの居住地が地理的に偏っていることを検証した.この結果に基づき,地理的な単位でまとまっているユーザをクラスタとして扱うことで,効果的なマーケティング・コミュニケーションや広告配信の可能性を模索する.
- 選奨理由
プライベートグラフのSNSマーケティング活用を目指して,特に地理的に偏ったSNS上のプライベートグラフについて分析を行った研究です.「Twittter上でのソーシャルグラフでつながっているユーザの居住地が地理的にまとまっている」という,正しそうで実際には明らかにされてこなかった性質を根拠をもって示している点が優れています.また,SNS上の特性を実データで検証している部分も評価に値します.このようなSNSマーケティングへの活用を目的とした分析は,NLCの研究分野・特性にもマッチしており,重要な研究成果だと考えます.これらの信頼性や進歩性から本研究が優秀研究賞にふさわしいと判断しました.
学生研究賞 (Best Student Paper Award)
- 受賞者
近藤 匠(名大)
- タイトル
- 2021年9月16日 第18回テキストアナリティクス・シンポジウム における発表
- 著者:近藤 匠・小川泰弘・外山勝彦(名大)
- 概要
オンラインサービス利用規約は条文が多いため,ユーザが読み飛ばす傾向にあるが,利用者にとって不公平になり得る条文が含まれる場合がある.これをユーザが効率的に確認するために,利用規約内の不公平文の自動検出を行う.先行研究では,日本語利用規約における自動検出に対して線形SVMを利用し,さらに分類性能向上のために,学習データの不均衡性解消を目的としたアンダーサンプリングを行った.しかし,その分類性能は十分であるとは言えない.本稿では,BERTを半教師ありGANによって拡張した学習モデルであるGAN-BERTを利用し,少量のラベル付き利用規約と,入手が比較的容易なラベル無し利用規約を学習に使用することにより,より高い分類性能を達成したことを示す.
- 選奨理由
日本語利用規約中に含まれる不公平文検出において,分類性能向上と学習データ不足を解消するためにGAN-BERTの利用を提案した研究です.GAN-BERTの採用に加え,BERT単体とGAN-BERTとの性能比較は興味深く,本研究の結果から得られる知見は有用であると考えます.十分な数の実験もされており,本研究の信頼性も高いです.これらから,本研究が学生研究賞にふさわしいと判断しました.
最終更新時間:2022年02月17日 14時25分52秒