超高速光エレクトロニクス研究会設置の目的

超高速光エレクトロニクスに関連した光技術は、通信や計測などの基盤技術の一つとして用いられ、電子情報通信分野の発展に貢献してきた。光ファイバ通信分野では、これまで、これらの技術を土台とし、超100Gbpsのディジタルコヒーレント光伝送システムや大容量データセンタネットワークが実現されている。今後も飛躍的に増え続ける伝送容量への要請に応えるには、光・電子デバイス技術、変復調・等化技術、システム技術などに関連して多くの解決すべき課題がある。特に、光の持つ高速性や広帯域性といった特長を生かすべく、超高速の光・電気信号の発生と制御・処理・計測技術、半導体等の超高速材料技術、未踏の速度・精度の計測・解析技術、極超短パルスの発生・制御技術等、まだまだ多くの基盤技術について新たな展望を切り開く必要がある。

超高速光技術は、光ファイバ通信分野のみならず広汎な科学技術分野を横断的に貫く基幹技術といえる。超高速領域での研究開発においては、電子情報通信分野のみならず理学系の物理、化学や生物・医学系との交流も図られてきた。基礎から応用まで、材料からシステムまで、超高速光技術を軸としてそれに関連した光の技術を幅広く俯瞰することが、それぞれの技術分野にブレークスルーをもたらす可能性を秘めている。とりわけ、近年では、超高速光エレクトロニクス分野における先端技術である光周波数コム関連の研究の進展が目覚ましく、超短パルスファイバレーザーをベースとした実用的で長時間安定な動作を実現するシステムを中心が実現され、天文学や物性評価、デュアルコムによる超高速分光など、その応用技術も大きく進展してきた。

以上より、光周波数コムおよびその応用を次期の超高速光エレクトロニクス研究会の重点トピックスとして活動することをめざす。現在も超短パルスファイバレーザーをベースとした光周波数コムが光周波数コム光源の主流として用いられているが、近年、電気光学変調器やマイクロ共振器を用いた新規コム光源の検討も進められている。また、一台のレーザーから2つのコムを出力するデュアルコムレーザーの研究も世界的にホットなトピックとなっており、光周波数コムには、一層の進化の兆しがある。このような進展について研究会でいち早く捉え、学会員に情報を提供し、意見交換を推進する。あわせて、これまでの超高速光エレクトロニクス従来トピックスの進展についても網羅し、他研究会とも関連する技術テーマについては、一層の連携のより技術交流を活性化し、研究委員会間の連携の強化に資する。

さらに、電子情報通信学会の活性化に向け、若手研究者の新委員への登用を図るなど、体制の改革を進める。このようにして、若手会員の活動の機会を増し、若年層研究者や学生層が電子情報通信学会により関心を持つような研究会運営をめざす。