電子情報通信学会スマート無線研究会では、ソフトウェア無線・コグニティブ無線技術をシステム的観点で捉え、関連研究分野の研究者が一同に会し議論を行う場を提供し、国内外の産学官に跨る同分野の教育、研究、開発、標準化の促進に貢献いたします。あらゆるモノとの情報収集をするIoT社会、ディジタル技術の利活用を促進するDX、そしてサイバ空間とフィジカル空間を融合するSociety 5.0などの実現に向けて、無線通信技術は用途や状況に応じて最大限の機能を発揮することが求められる。これらを実現する技術を創出するため、ソフトウェアで書き換える無線機を可能にする技術であるソフトウェア無線と外部環境を認識し無線システムが適応制御を行うコグニティブ無線に注目し、ソフトウェア無線とコグニティブ無線の更なる可能性追求とその実現方法を検討していくことが有力である。電子情報通信学会スマート無線研究会では、ソフトウェア無線・コグニティブ無線技術をシステム的観点で捉えた場合に、関連研究分野の研究者が一同に会し議論を行う場を提供し、国内外の産学官に跨る同分野の教育、研究、開発、標準化の促進に貢献する。さらに、担当する研究分野を一部の特定分野に限定することなく、境界領域における新しい研究テーマの芽を育てる効果を引き出し広範な学術分野の複合領域へと研究が発展することをねらいとし、国内外での連携強化を進めている。
ソフトウェア無線(Software Defined Radio: SDR)とは、システムをディジタル化してソフトウェアで機能や性能を変更することにより、単一のハードウェアでも複数の方式や仕様に対応できるマルチモードのシステムを実現する概念を言う。この研究開発活動は1990年代中頃から特に顕著になり、国内外において、学会やワークショップが多数開催され、また、国家プロジェクトによる研究開発等も行われてきた。海外の活動及び国内の法制機関等の活動との連携をうまく取りながら、研究者・技術者が交流、情報交換、相互啓発を行ない、学術的な活動を中心に、ソフトウェア無線の実用化を目指すため、1998年12月、電子情報通信学会通信ソサイエティに時限研究会として、ソフトウェア無線時限研究専門委員会(専門委員長:横浜国立大学教授河野隆二)を発足し、今後の通信システム分野における中心的研究開発課題であるソフトウェア無線技術に関し、多くの研究成果を本学会において公開、討論することにより、本分野を立ち上げ、2005年5月からは第一種研究会として、国内外の産学官に跨る同分野の教育、研究、開発、標準化に貢献してきた。特に本研究会のこれまでの活動では、担当する研究分野を一部の特定分野に限定することなく、境界領域における新しい研究テーマの芽を育てる効果も奏してきた。実際に本研究会活動を通じ、具体的なハードウェア実現と共に、無線通信技術のみならず、可変RF回路やA/D変換器、プロセッサなどのデバイス技術、APIや記述言語、OSなどの情報科学といった広範な学術分野の複合領域へと研究が発展してきた。
現在の内外の研究開発フェーズは、ソフトウェア無線技術のフィージビリティ・スタディに関し、装置試作やシミュレーション等による基本検討をほぼ終えた状況であり、議論の一つの方向は、次のステップである、外部環境を認識し無線システムが適応制御を行うコグニティブ無線技術であり、更に、要素技術を実際にシステム・サービスへ展開するための検討、及び、ソフトウェア無線・コグニティブ無線特有の法制度や互換性等に関わる技術課題の検討にシフトしつつある。将来のユビキタス社会、ユビキタス・システムやサービスの実現に向け、ソフトウェア無線・コグニティブ無線はそのキー技術であり、これらの更なる可能性追求とその実現方法を検討していく必要がある。ソフトウェア無線・コグニティブ無線技術をシステム的観点で捉えた場合に、関連研究分野の研究者が一同に会し議論を行う場が必須であり、このような場の提供は、唯一本研究会がその役割を担ってきた。さらにSDRフォーラム等の海外関係組織とは緊密な連携をとり、多くの研究会を共催してきている。
一方で、周波数有効利用は喫緊の課題であり、また、ソフトウェア無線技術は未成熟・未完成の課題を残しており、現実には未だ移動通信サービスに供するソフトウェア無線携帯端末の実用化には至っておらず、これまで本研究会で抽出・整理してきた課題のうち、特に端末の実用化に向けた低消費電力化・小型化・高性能化、可変RF回路、ソフトウェア開発手法の標準化、ヘテロジニアス・ネットワーク間ハンドオーバ・ローミング、ダイナミックスペクトルアクセス等を実現するための研究開発課題に関し、今後更に重点的に議論を行っていく。