研専推薦論文制度は次の手順を経て推薦されます.
- 各研専が優秀な研究会発表を選定します.
- 研専は著者に推薦対象となったことを通知します.同時に,すべての論文誌編集委員会にも推薦が通知されます.
- 著者は研究会発表を発展させ推敲の上,いずれかの通ソ論文誌に研専推薦論文として投稿します.
- 研専推薦論文を受理した論文誌編集委員会では,投稿された論文を研専推薦論文として扱います.なお,査読は通常の投稿論文と同様に行われるため,必ず採録されるとは限りません.
手順だけだと,著者のメリットや研専さんのメリットが分かりにくいかも知れませんので,以下,質疑応答(Q&A)形式でまとめてみます.
本制度についてご意見,ご質問がございましたら,どうぞ遠慮無く,通ソ編集会議幹事団(editorial-board-cs (at) ml (dot) ieice (dot) org)までご連絡ください.
なお,推薦論文制度は 2020 年度にその対象となる会議を研究専門委員会だけで無く,通ソ主催の国際会議,第二種,第三種研究会および分野横断型研究会へ拡大しました. 以下,研専さんから推薦される場合で示しますが,それ以外の会議でも同じですので,ご参考にしてください.
Q: 学生です.通ソ編集会議から研究専門委員会推薦論文選定のお知らせが届きましたが,どうすれば良いですか.
おめでとうございます!あなたの発表はとても素晴らしく,発表された研究会で研究専門委員会推薦論文に選ばれました. 指導教員に報告するともに,本研究会原稿を発展させ,また原稿の推敲を重ねた上で,通信ソサエティの以下のいずれかの論文誌にご投稿下さい.
ご投稿をお待ちしております.
Q: 通ソ論文誌のどれに投稿すれば良いか分かりません.
電子情報通信学会論文誌には,論文と研究速報(レター)の 2 種類あります.
論文の場合は刷り上り 8 ページを基本としており,研究会原稿をブラシュアップし,内容を充実させて投稿する場合に適しています. 論文には日本語で書かれている和文論文誌 Bと英語のIEICE Transactions on Communicationsがあります.
研究速報(レター)は刷り上り 2 ページを標準としています. もっとも,これは和文論文誌 Bの場合で,英文レター誌であるIEICE Communications Expressの場合は刷り上がり 6 ページが標準となっています. 従って,研究速報(レター)へ投稿する場合は,研究会原稿のエッセンスを絞り,成果を簡明に書く速報として投稿する場合に適しています.
詳細は各論文誌の投稿のしおりをご参照下さい.
このように,ページ数一つをとっても,いろいろあり悩ましいところですので,学生さんの場合は指導教員,また研究者・技術者の方は近くの同僚の方にお尋ねいただくのも一案かと思います.
なお,各論文誌では特集号も企画しています.ひょっとしたら特集号にご投稿されるのが良い場合もありますので,適宜,ご確認してください.
特集号の募集案内はこちらにございます.
Q: 一般投稿する場合と比較して,研究専門委員会推薦論文として投稿するメリットが分かりません.
一般投稿と違い,研究専門委員会推薦論文は研究専門委員会から,いわば優れた研究ですよ,とお墨付きを与えられた研究と言えます. この点が最も大きいかと思います.推薦されたということは,良い研究なので,ぜひ,論文にして下さい,と研専から依頼を受けている状況です.
多くの研究発表の中から選ばれたのですから,ご自身の研究について,どうぞ自身を持ってご投稿ください.
また,この推薦論文制度では,各研専が査読候補者を 2 名まで推薦することもできます. ご発表を聞いて,より適切な査読者を研専が推薦できますので,これも投稿者にはメリットになりますね. ただし,推薦された方が査読委員を担当しない場合もあり得ることをご承知おきください.
一方で,いくつか気をつけて欲しい点もございます.
まず,各研専は皆様のご発表を聞いて,また研究会資料である技術研究報告(技報)を読んで,推薦対象者を選定します.
恐らく発表者は,スライドに図,写真や表を使って分かりやすく,研究の新しさを説明されたと思います. 研究の有効性もグラフを用いて,身振りも交えて説明されたかと思います. 実験動画などはインパクトがあって良いですよね. 加えて質疑応答に答える形で,聴衆の疑問点を解消されたことでしょう.
さて,このような素晴らしい発表を評価されてめでたく研究専門委員会推薦論文に選定される訳ですが,論文の場合,読者は発表を見ることができません. 発表者の熱量たっぷりの講演では無く,あくまでも論文を読むことで研究内容を理解しなければいけません.
ここが研究発表と論文の大きな違いとなります.
技報のフォーマットを変えて論文投稿されても,それだけでは論文の中身がきちんと伝わらず,結果として不採録となる場合があります. もちろん,各研専は,発表だけを見て推薦対象者を選定するのでは無く,技報も加味して選定されていますが,どうしても皆様の優れた発表に評価が引きずられる点も多分にあろうかと思います.
つまり,素晴らしいプレゼンテーションの技報原稿が必ずしも良い論文原稿とはならないのです.
くり返しになりますが,編集委員および査読者は投稿原稿に書かれていることのみで研究内容を把握し,その上で,査読基準(新規性,有効性,信頼性,了解性)に照らして,採否の判定を行います.先に査読者も推薦できるので投稿者に有利です,と書きましたが,たとえそうであったとしても,査読者はあくまでも投稿された原稿のみを読んで採否を判定します.
了解性,つまり,論文の中身がきちんと理解できるのか,論旨の展開が十分理解しやすく、順序立てて明瞭に記述してあることも採否のポイントになります.
このように,投稿論文の新規性,有効性,信頼性が読むとスーッと理解できること(了解性)が論文では重要になりますので,何度も推敲を重ねて投稿してください.
Q: 論文の書き方が分かりません.(プレゼンテーションには自身がありますが,書くことは得意ではありません.)
先の回答にもございますように,論文はそれだけを読んでも理解できるように論旨を組み立てて,明瞭に書く必要があります.これは,なかなか難しく一朝一夕には身につくことはありません.論文の書き方についての本がたくさんあるのはそのためかと思います.
でも,みなさま,どうぞご安心ください.
通ソ編集会議では,毎年開催される電子情報通信学会ソサイエティ大会および総合大会にて「論文の書き方講座」を開催しております. また,一部ではございますが,論文の書き方講座の資料や動画も通ソマガジン誌(BPlus)で公開しております.
論文の書き方講座では,和英論文誌および ComEX の委員長,副委員長による
- 「論文の書き方(和文)」
- 「論文の書き方(英文)」
だけで無く,
- 「回答文の書き方」
もございます.ぜひ,ご一読いただければ,論文を書く際のコツがつかめることと思います.
なお,通ソ編集会議では,今後開催される「論文の書き方講座」の講演動画をアーカイブ化し,皆様に提供できるように検討を進めております. また,本ページのような論文の書き方についての Q&A セッションも大会企画の一つとして提案する方向で検討しております.
素朴なご質問でも何でも構いませんので,ご質問,ご要望がございましたら通ソ編集会議幹事団(editorial-board-cs (at) ml (dot) ieice (dot) org)までご連絡ください.
Q: 著者のメリットは分かりましたが,研専のメリットは何ですか.
研究専門委員会(研専)は,その研専が取り扱う技術分野の発展と研専コミュニティーの活性化を目的に様々な活動を行っています. 論文誌においては,特集号の編集でその時々のトピカルな技術分野を扱うことで,研専の活動をアピールしていることと思います.
研専推薦論文制度も,特集号と同様に研専の活動をアピールできる活動の一つと考えていただくことができます. ただし,特集号と異なり,特集号編集委員会を組織することはありませんが,当該分野のトピカルな研究や優れた研究を取り上げて,研専推薦論文として著者に投稿を促すことができます.さらに,当該推薦論文に研究分野に精通した査読者を 2 名まで推薦できます.ただし,推薦された方が査読委員を担当しない場合もあり得ることをご承知おきください.
一方で,先に書きましたように,論文はそれを読むだけで理解できるように書く必要があり,ここが不十分な場合は不幸にも不採録になってしまう可能性があります.
また,推薦できる査読者も,公正性を担保する理由で
- 著者と同一機関に所属する方
- 共著がある方
- 著者の過去の所属先の方で,著者の異動後 5 年を経過していない場合
などにはお願いすることができません.
以上をご理解の上,ご活用くださいますようお願い申し上げます.