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TC49 周波数制御・選択・検出デバイス専門委員会のご案内
  1. IEC TC49 のホームページへようこそ

 電子情報通信学会「TC49周波数制御・選択・検出デバイス専門委員会」は,IECの技術委員会の中の一つであるTC49 Piezoelectric,dielectric and electrostatic devices and associated materials for frequency control, selection and detectionに対応して活動している.

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  2. TC49の委員会組織と活動

 TC49委員会は,1960年に"Piezoelectric crystal and associated devices" という名称で設立され,1989年からは従来の圧電デバイスに誘電体デバイスが加わり,更に2009年からは材料,検出も加わり "Piezoelectric and Dielectric Devices for Frequency Control and Selection (周波数制御,選択用圧電及び誘電体デバイス)" と改まり現在に至っている.本委員会は,圧電デバイス(振動子・発振器・フィルタ・弾性波デバイス),誘電体デバイス, センサ,材料, 測定法,外形寸法, 技術用語などの国際標準化の作業を行っており,これまでに日本から多くの原案提出を行い,国際審議を通して標準となる文書を作成し顕著な成果をあげている.

現在,IEC加盟国およびTC49参加国は26カ国(Pメンバ国10カ国,Oメンバ国16カ国:表1),TC49専門委員会の国際委員会構成は表2のようになっている.このTC49に対応する国内の委員会が「電子情報通信学会TC49周波数制御・選択・検出デバイス専門委員会」である.この専門委員会を親委員会として7つの小委員会(Working Group)が活動している(表3).規格作成は,主として図1に示す流れの文書審議によって進められる.審議の各段階における文書記号は表4のようになっている.文書が次の段階に進むためには,図2のフローチャートに示したようにTC49の参加国の投票による手続きが必要となる.投票の結果,(a) Pメンバの2/3以上の賛成が得られる (b) 反対が投票総数の1/4以下である,の条件をパスすると文書は次の段階に前進する.ただし,新規提案(NP)を行うとき,投票の結果,Pメンバの中から,4カ国以上のExpertの指名があることが課せられている.この条項に対し,TC49はPメンバが少ないので,精通した4カ国を募るのに苦労している.なお,現在,IEC発行の出版物は表5のように分類されている.通常,我々の作業の最終目標はISにすることであるが,NPの段階で上述の4カ国以上のExpertが揃わない場合は,PAS(該当する分野で,実態上,流通しているとみなされる規格)という方法を採用して作業を進めている.規格化を目指したProjectが出版に至るまでは,国際間のEメール等による文書審議により進行するが,1〜1.5年ごとに国際会議が開催され,各委員会の方針の確認と審議の促進が図られている.最近の国際会議の開催地と日本代表団のメンバの状況を表6に示した.

図1 TC49 関係文書国際審議フローチャート

注)1)
2)
文書略号 NP,WD,CD,CDV,FDISについては表4参照.
WG(小委員会)については表3参照.
図1 TC49 関係文書国際審議フローチャート

図2 IECの標準化作業フローチャート文書

○○○には文書(Document)番号が入る
略号については表4参照

図2 IECの標準化作業フローチャート

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  3. TC49の標準化活動の成果及び動向

 日本が幹事国となり国際幹事を出している立場から、電子情報通信学会のTC49専門委員会も,TC49の運営方針や活動計画の立案など、TC49を運営していく上で重要な役割を担う幹事国の実質的な主要母体になっている.

<主な成果>

@ 規格開発
約93件(TC49がこれまでに作成した規格の中,現在運用されている標準の出版物の数)
特に最近の新規提案は殆ど日本からの発信であり,国際標準作成に大きく貢献している.
A アジア諸国のTC49への参加促進
2011年10月にマレーシアにおいて,SIRIM(マレーシア標準工業研究所)関係者,水晶デバイスメーカの技術者らと交流会を開催しTC49への参画を勧めた.さらに同年11月にIEC-APRCの支援を受けてアジア地区のセミナーを開催した。セミナーにはシンガポール,マレーシア,インドネシア,フィリピン,タイ,中国から参加を得て,TC49の活動を広くアピールすることに成功した.結果として2016年にマレーシアがOメンバとして仲間入りし,2018年にはPメンバとなり議決権を得た.
B 名古屋会議
2013年の名古屋会議ではホスト国として,参加者はここ10年の国際会議の参加者を大幅に上回る7カ国46名に達するなど,目覚ましい実績を上げた.
C WG13の発足及びセンサ規格の提案
2014度〜2016年度の経済産業省委託事業「圧電デバイスを使用したセンサの国際標準化」として,WG13センサデバイスとシステムを2015年6月のベルリン会議で発足,またセンサに関する3件の規格を提案・開発.

<動向及び課題>

(イ) 最近,国際会議への日本以外の国からの参加が減少傾向にあるので,幹事国として,積極的参加を呼びかけるなど活性化の努力をする.
(ロ) TC49 の組織として,アジア諸国のTC49への参加促進を図る必要がある. 新規提案(NP)を受け入れやすい環境作り(Expertの育成).
(ハ) 発行から5年経過に伴う標準の維持(Maintenance)の点検作業と更新(Version up)の必要性を早期に判断.
(ニ) IEC標準のJISへの移行(国際標準と国内標準JISの整合化)
(ホ) TC49技術用語(Glossary)の日本語版作成(翻訳作業)
(ヘ) 圧電デバイスの高周波(GHz帯)化に伴う,測定法の標準化の拡張.
(ト) 圧電デバイス・誘電体デバイスのセンサなど新しい応用に対する標準化の検討.
(チ) 国際標準に携わる人材の育成.特に,語学〈英語〉が堪能で,国際合意が得られる交渉能力をもつ技術者の育成.

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  4. TC49のWG (2024年7月現在)

 TC49のWGの中で現在活動中(表3参照)のWG1,WG5,WG7,WG9,WG10,WG11,WG13について紹介する。

  WG1(NWG1):水晶振動子

 主査:木 順啓(日本電波工業(株))
 水晶振動子に関する用語の定義,測定法及び仕様の標準化.

 
  WG1(NWG2):水晶フィルタ

 副主査:鈴木 達郎(日本電波工業(株))
 水晶フィルタの特性について,電気的規格及び性能認証の標準化

  WG1(NWG4):圧電セラミックス

 副主査:松本 卓((株)富山村田製作所)
 圧電セラミックスを応用したデバイス(フィルタと振動子)に関する用語の定義、測定法及び仕様の標準化.

  WG5:人工水晶

 幹事:三澤 弘美(日本水晶デバイス工業会)
 人工水晶を始め,圧電結晶およびウェハに関する用語の定義、測定法及び仕様の標準化.

  WG7:発振器

 主査:岡島 幸弘(日本電波工業(株)) 副主査:渡部 泰明(東京都立大学)
 発振器(水晶・SAW・MEMSなど)に関する用語の定義、測定法及び仕様の標準化.

  WG9:外形寸法

 主査:小尾 茂樹(リバーエレテック梶j 幹事: 三澤 弘美(日本水晶デバイス工業会)
 水晶振動子,水晶発振器,水晶フィルタ,セラミックフィルタ,SAWデバイスの保持器に関するケースの形状,
 寸法,端子接続及び図面の書き方の標準化.

  WG10(S):SAW&BAWデバイス

 副主査:橋本 研也(電子科技大学) 幹事:上田 政則(太陽誘電(株)),藤井 裕久((株)村田製作所)
 SAWとBAWを応用したデバイス(フィルタ,振動子,デュプレクサなど)に関する用語と定義,測定法及び仕様の
 標準化,使用上のガイドなどが対象.

  WG10(D):誘電体デバイス

 主査:石崎 俊雄(龍谷大学)  幹事:吉川 博道(京セラ(株))
 誘電体フィルタ及び誘電体共振器に関する用語の定義,測定法及び仕様の標準化.

  WG11:用語集

 主査:山口 正恆(千葉大学名誉教授) 幹事:小林 恒夫(日本電波工業(株))

@ 各WGで標準化する用語集の作成
A IEV Chapter 561の用語のメンテナンス
※IEV:International Electrotechnical Vocabulary
  WG13:センサデバイスとシステム

 主査:近藤 淳(静岡大学) 幹事:小山 光明
 SAWやBAWを用いた各種センサとシステムに関する用語の定義,測定法及び仕様の標準化.

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  5. 今後の展望

 我が国の電子部品が高品質であることは世界的に高く評価されている.TC49の対象としている圧電デバイス,誘電体デバイス及び静電デバイスは,日本が得意とし,世界の先導的役割を果たしている分野である.
これまでTC49周波数制御・選択・検出デバイス専門委員会及び各小委員会(WG)は標準化の重要性を十分認識した上で活動し,多くの実績を積み上げてきた.
また,国際的に見て、この分野ではこれほど充実した委員会組織を持つ国は日本以外にはない.

したがって,国際幹事国としての任務,さらに今後も日本発の高信頼性・高精度・高周波部品や新しい応用などの提案など一層の発展が期待されている.
IECの標準化活動は一般には目立たない分野であるが,国際間の友好関係と経済交流を深める上でも重要な活動と考える.今後も世界各国に通用する普遍的な規格作りを通して,国内産業の発展と国際貢献に努める.

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