多くの場合、利用ユーザが一人しかいないパソコンでは、インターネット利用頻度も少なく、また24時間稼働していることもありません。このような人にもメールを送ろうとしたらどうしたらいいのでしょうか? 一つの回答は、各パソコンユーザに替わってメールを受信してくれるサーバ(POPサーバといいます)を用意して、24時間稼働させておけば、パソコンユーザにもメールを送ることが可能になります。このため、インターネットプロバイダは、必ずPOPサーバを提供しています。
パソコンユーザが、POPサーバにアクセスするには、どんなハードウェアが適当でしょうか? やはり、一般的なモデムを使って、電話網経由でアクセスするのが一番安上がりです。特に現在ではV.34モデムという28.8kbpsの回線速度(実際にモデム間が28.8kbpsで接続されるのはめったになく、回線品質がよいので有名な日本でも20kbps前後になることがあります。外国では、14.4kbpsが出たら大いに喜ぶべきです。)を達成できるモデムが、安価に購入できますので、これからモデムを買うならV.34モデムかV.34bis(33.6kbps)モデムにするべきです。V.34モデムは、データ圧縮機能があるため、端末(パソコン)側から見た場合、モデム間の通信速度の2倍程度の伝送速度に見えるときもあります。WWWのようなマルチメディア情報を扱う際は、V.34モデムやV.34bisモデムは必需品といえましょう。
図6-5 ダイアルアップIP接続の仕組み
インターネットでは、接続されている端末はすべてIPアドレスという番号が付与されています。この番号が、32ビットからなりますが、昨今のインターネットの急速な普及により、アドレス不足がささやかれています。パソコンユーザのようにあまりアクセスしない人にもIPアドレスを恒久的に付与するのは無駄であるとの考えから、ダイアルアップIP接続では、アクセスしてきたときにダイナミックにIPアドレスを付与しています。接続時にIPアドレスの付与を行うのもPPPの仕事です。この結果、パソコンからアクセスするユーザよりもずっと少ない数のIPアドレス(プロバイダ側で提供する電話ポートの数と同じ)で、サービスができるのです。もちろん、ダイアルアップIP接続したあとは、通常のインターネット接続端末と同様のことができます。
ここで、PPP接続とダイアルアップIP接続を混同しないでください。PPPは、あくまで技術的な用語であり、ダイアルアップIP接続はインターネットプロバイダのサービス名です。PPPは、電話網に限らず専用線等種々の通信回線を使ってLAN関連機器の接続ができる技術で、適用領域もTCP/IPだけでなく、NetWare等のパソコン系のLANにも使えます。また、ワークステーションに使われているPPPでは、電話網/データ通信網経由で相互に呼び出し合って、双方向でTCP/IP接続できるものさえあります。したがって、現状では、ダイアルアップ接続サービスが、PPPの一部の機能を使って電話網経由の接続サービスをしているというのが正しい言い方でしょう。