フォトニックネットワーク研究会(PN研)は、フォトニックネットワークに関して、デバイス、ノードシステム、ネットワークシステム、オペレーション、アプリケーション/サービスなどのテーマを扱っています。フォトニックネットワークの研究開発では、光の物理特性を考慮しながら物理的・科学的な限界に挑戦し、ブレークスルーを達成した技術・デバイスをノードシステムやネットワークに組み上げ、その運用管理のために必要なオペレーション技術やアプリケーション・サービスを創造してきました。物理現象を扱う研究者から、物理を抽象化し論理的な仕組みを創り出す研究者まで、様々な専門分野の研究者が集って議論することがPN研の特徴です。このようなPN研の活動から、これからもフォトニックネットワークのイノベーションが産まれることを期待しています。
フォトニックネットワークを取り巻く環境は変化してきています。クラウド事業者のサービスが普及するにつれ、通信事業者の広域ネットワークだけでなく、クラウド事業者のデータセンター内のネットワークにおいても、トラフィックの増大が課題となっています。直近では、生成系AIの急速な発展により、データセンターネットワークのトラフィックの増加に拍車がかかっていると言われています。増え続けるトラフィックを伝送するために、あるいは、革新を続けるクラウドコンピューティングを支えるために、フォトニックネットワークが果たす役割はますます大きくなっていると言えます。フォトニックネットワークの新たな展望を切り拓いていくために、研究者が集まり、情報交換を行いながら研究開発に取り組んでいくことが重要と考えています。
一つ一つの研究成果を積み上げていくことで技術が発展して行きますが、研究成果を体系化することで、今後の技術の方向性が見えてくると考えられます。本分野の研究成果を体系化していくことも研究会の役割の一つであると考えています。また、個々の研究者の研究活動やキャリア形成に有益な機会を提供することとも研究会の役割の一つと考えています。本研究会が個々の研究者にとって有益な機会を提供し、フォトニックネットワーク技術の発展に寄与できることを願っております。皆様の積極的なご参加をお待ちしております。
2023年8月 フォトニックネットワーク(PN)研究専門委員会委員長 塩本 公平
将来の広帯域ネットワークサービスに対応可能な高速大容量インターネットを実現する基盤として、フォトニックネットワークの重要性は既に広く周知されるまでになってきた。技術的にも、光技術を活用して、超高速フォトニックネットワークの構築ならびに光デバイスを含めたノード性能の抜本的な向上を目指した検討が活発に進められ、一定の成果が得られ始めている。
一方で、インターネットの進展に伴い、フォトニックネットワークに求められる機能は多様化してきている。高速・大容量化、安定かつ高信頼な運用、様々なサービス機能に対する柔軟性を実現するためには、デバイスレベルでのブレークスルーは必要不可欠である。このような光コンポーネント、光ノードシステムを含む各種要素技術の向上に加え、コントロールプレーン技術を用いて帯域や経路を自在に管理し、種々のサービスの提供を可能にする制御技術などが求められている。さらに、広域性・分散性などを活用する新しいサービス実現のためには、フォトニックネットワークはインターネットさらにはアプリケーションとも連携した上で、その果たすべき機能を担っていくことが重要になっている。
このような状況の下、将来の高速・広帯域フォトニックネットワーク構築に向けた光スイッチングに関する技術をシステム・デバイス両分野から活発に議論するために光スイッチング(PS)研究専門委員会が、また、インターネット技術とフォトニックネットワーク技術を有機的に結合することによってIPネットワークを構築する技術を議論するために、フォトニックネットワークをベースとするインターネット技術(PNI)研究専門委員会が、それぞれ国内外での継続的かつ精力的な研究活動を展開してきた。
ネットワークの高速大容量化・高機能化が劇的に進展する現在、世界に対するフォトニックネットワーク技術のリーダーシップを確保するためには、このように相互に密接に関連した従来の個別の研究活動を統合・再編し、より強固なフォトニックネットワーク研究活動基盤を築く必要がある。そこで、新たにフォトニックネットワーク(Photonic Network:PN)研究専門委員会を設立し、光コンポーネント、光スイッチングシステム、光インターネットワーキング・光制御に関連するあらゆる分野の研究者がさらに密接かつ創造的な討論を行うことにより、フォトニックインターネット構築の実現化を目指した研究からフォトニックネットワークの将来像のあり方、極限的ポテンシャルの追求にいたるまで多面的な視点でフォトニックネットワークを創造することをめざす。
この分野では、新たな国際学会が始まるなど世界的にも研究が活発化している。本委員会では、日本での国際学会の開催、本学会大会、研究会、学会誌での様々な企画等により啓蒙活動を行い、この分野の発展を図る。これらの活動では、技術の議論に留まることなく、サービスやユーザのメリット、社会インパクトも考慮して議論を行える場を提供することを意識している。また、日本発の標準化活動の母体となることも視野に入れて活動を進める。
主要研究分野 | トピックス |
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光ネットワークデバイス | 基盤デバイス技術、新素材・新現象、実装技術、光スイッチ、光信号処理、光ラベル処理、波長変換、光メモリ |
光ネットワークシステム | 光パケットスイッチング、光パス・光バーストスイッチング、光多重化、光インターコネクション、光ラベル変復調、光アクセス技術、イーサネット技術、光空間通信 |
光ネットワーク制御・管理 | 光ネットワーク運用管理、光ネットワーク設計、トラヒックエンジニアリング、SDN (OpenFlow 含む)・NFV、ルーチング、シグナリング、ドメイン間経路制御、ネットワーク監視 |
光ネットワークアプリケーション | 低遅延高速アプリケーション、大容量コンテンツ転送、高品位映像転送、グリッドコンピューティング、オーバレイネットワーク、高速通信アプリケーション用伝送プロトコル |
光ネットワークアーキテクチャ | beyond IPネットワーク、レイヤ間インターワーキング、光ネットワークテストベッド、相互接続試験、光電気融合技術、低消費電力化技術、高速大容量データセンタネットワーク、フレキシブル(グリッド)ネットワーク |
年月 | 主な施策・イベント |
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2003年8月 | 光スイッチング(PS)研究専門委員会、フォトニックネットワークをベースとするインターネット技術(PNI)研究専門委員会を統合・再編し、フォトニックネットワーク研究専門委員会が設立 |
2005年 | 年間の研究会講演を対象にPN研究賞・PN若手研究賞(30歳未満対象)を創設 |
2005年8月 | 第2種研究会 PNワークショップ(合宿形式)を開始 |
2006年2月 | フォトニックネットワーク技術者養成を目的とし,超高速フォトニックネットワーク開発推進協議会(PIF)との共催による第2種研究会 チュートリアル講演会を開催 |
2006年7月 | 国際会議OECCとIEICE PN/OECC 2006 Joint Workshopを台湾・高雄にて併催 |
2007年8月 | 国際会議Photonics in SwitchingとIEICE PN/PS 2007 Joint Workshop を米国・サンフランシスコにて併催 |
2008年3月 | 第2種研究会 PN学生ワークショップを開始 |
2011年4月 | 英文誌(EB)特集号Special Section on Photonic Network Technologies in Terabit Network Era発行 |
2011年7月 | 国際会議OECCとOECC 2011 Workshopを台湾・高雄にて併催 |
2013年 | 日本の都道府県間を接続し,ノード位置,ルート,距離などのネットワークパラメータを明示したJapan Photonic Network(JPN)モデルの公開 |
2014年11月 | JPNを題材としたネットワークデザイン研究を対象に第1回JPNコンテスト開催 |
2016年6月 | 国際会議IEEE HPSRとIEEE HPSR 2016 Workshopを横浜にて併催 |
2017年 | 研究会技術報告を完全電子化 |
2018年12月 | 和文誌Bポスト2020年に向けたフォトニックネットワーク特集発行 |
2020年4月 | 研究会のオンライン開催 |
2020年 | 学生(28歳未満)が筆頭初者として発表した総合大会・ソサエティ大会セッションでの研究発表を対象にPN研学生奨励賞を創設 |
2022年4月 | 研究会のハイブリッド開催 |
2022年 | 東京メトロエリアネットワークモデル(Tokyo Metro area Network models; TMN)を公開 |
2023年 | コンセプト論文“Metropolitan Area Network Design using Regional Railways Information for Beyond 5G Research”発表 |
2023年8月 | 20周年記念シンポジウムを札幌にて開催 |
2024年1月 | 英文誌(EB)小特集号Special Section on Photonic network Technology for Beyond 5G/6G Era発行予定 |
2024年2月 | ホームページをリニューアル |