IEICE ICT PIONEERS WEBINARシリーズ~第76弾~

聴講
無料

主催:(一社)電子情報通信学会サービス委員会

ユークリッド復号法~Simple is best~

平澤 茂一(早稲田大学データ科学センター 招聘研究員)

【開催日時】2026年5月22日(金)15:00~16:00

非会員で聴講をご希望の皆様へ

IEICE Pioneer Webinarの御聴講ですが、会員およびアソシエートメンバーの特典として提供されることとなりました。非会員の方で聴講をご希望される場合は、まずアソシエートメンバーにご登録下さい(無料)。非会員のままでの聴講はご遠慮いただいておりますので、予めご了承ください。ご協力のほど、お願い申し上げます。

講演内容

 本日は誤り訂正符号の理論(あるいは符号理論)と言われる分野の復号法の一つ「ユークリッド復号法」についてお話をします. 1950 年以前から1950 年代は符号理論の黎明期と言われています.Golay 符号,Hamming符号やBCH 符号など,新しい符号が発見され多くの周辺研究成果が次々発表された時期です. これに続き,さらに新しい符号と復号法が研究・開発され,まさに誤り訂正符号研究の真っ盛りの時期を迎えます.1961 年,W. W. Peterson 先生の誤り訂正符号の本が出版され,一気に開花します.
この後の1970 年代,笠原正雄先生(当時,阪大・助教授)のお宅に集まり,毎週日曜日の午後にエンドレスで,E. R. Berlekamp 先生の符号理論のテキスト,R. G. Gallager 先生の情報理論のテキストなど,(故)杉山康夫先生(当時,三菱電機・中央研究所)と私(同)の3人が輪読・議論していました.これが1972 年頃から78 年頃まで続きます.ユークリッド復号法はこの比較的早い時期に誕生しました.難解なBerlekamp-Massey アルゴリズム(BM法)に苦戦していた時期です.その一方で,整数の最大公約数,最小公倍数等を求めるユークリッド互除法が基本方程式を解く誤り訂正アルゴリズムに使える,という簡単なアイデアを研究論文にするのは自明ではないかと,いう悩みがいつまでもつきまとっていました.
そこで笠原先生が1967 年頃,Holmdel のBelll 研究所に高速ディジタル通信研究のため留学,その当時から親交のあったE. R. Berlekamp 先生にともかく書き上げた論文を送付し意見を聞いてみようということになりました.航空便の返事は,“素晴らしい,独創的なアイディアだ.自分はInformation and Control 誌の編集者として即刻アクセプトする”という返事を受け取りました.かくして,「ユークリッド復号法」は自明ではないかという危惧は晴れ,日本発の復号法として日の目を見ることになりました.なお,ユークリッド復号法はアルゴリズムの計算量で見ると,BM 法と比較して同等か,僅かにそれ以上で,減少させることを目的としたものではありません.その代わりに,理解するのが容易です.”Simple is best”,美しい数式の真髄です.
講演では例を使って一通りのアルゴリズムを説明した後,三菱電機でLSI化された誤り訂正回路など試作機を紹介します.また,復号法が誕生するまでの経緯,研究者仲間の温かい配慮と交流などについても,裏話を交えながらお話ししたいと思います.

2025年度企画理事 大橋 正良先生からの紹介文

 今回のPioneers Webinarでは、通信路符号化/誤り訂正符号技術の分野を切り拓いてこられた第一人者である平澤先生をお迎えいたします。平澤茂一先生は、早稲田大学を修了後、三菱電機に入社されました。その後1981年に早稲田大学理工学部教授として教育・研究に従事されました。2009年に早稲田大学名誉教授となられ、現在は同大学_データ科学センター招聘研究員としてご活動されています。 平澤先生は、通信路符号化/誤り訂正符号技術の独創的研究により、1994年に電子情報通信学会平成5年度業績賞を受賞されました。さらに、通信路符号化/誤り訂正符号技術の発展への顕著な貢献により、1997年にIEEE Fellowに選出されています。2001年には「連接符号とユークリッド復号法」に関する功績により電子情報通信学会フェローの称号を授与されました。 とりわけ、平澤先生らが発明されたユークリッド復号法は、2017年に「Reed-Solomon符号とその復号法」として電子情報通信学会マイルストーンに選定され、わが国発の世界的業績として高く評価されています。本ウェビナーでは、誤り訂正符号研究の黎明期から現在に至るまで、同分野の第一線を切り拓いてこられた視点から先生にお話しいただきます。

講師略歴

平澤 茂一

平澤 茂一

昭 36 早大・理工・数学卒.昭 38 年同・電気通信卒.同年,三菱電機株式会社入社.昭 56 早大・理工・工業経営(現 創造理工・経営システム)教授.平 21 同大学名誉教授,同大学理工総研名誉研究員.同年,サイバー大学 IT 総合教授,平23 同大学⾧・平24 同大学客員教授.情報理論とその応用,データ伝送方式の研究,並びに計算機応用システムなどの開発に従事.昭 50 工博(阪大).昭 54 UCLA 計算機科学科 (CSD)訪問研究員.昭 60 ハンガリー科学アカデミー,昭 61 伊トリエステ大客員研究員.平 14 UCLA CSD 訪問教員.平 5 本会小林記念特別賞,業績賞受賞.平9IEEE Fellow,平 20 IEEE Life Fellow.情報処理学会,経営情報学会などの各会員.