IEICE ICT PIONEERS WEBINARシリーズ~第58弾~
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主催:(一社)電子情報通信学会サービス委員会
精度保証付き数値計算とその応用
大石進一(早稲田大学)
【開催日時】2024年12月20日(金)16:00 ~17:00
非会員で聴講をご希望の皆様へ
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講演内容
非線形問題は電子情報通信の各分野に現れる基礎的問題の一つである。演者は博士論文でソリトンの解析を行い、光通信等に応用がありうるということで工学博士の学位をいただいた。
1981年のことである。学部学生時代、岩波講座「現代物理学の基礎」(全11巻)を読んで物理の面白さにものめり込んだ。そこで量子力学を使った通信理論を卒論でやりたいと思ったが、1975年当時誰もやっていなかった。そこで量子力学の逆問題を使ったソリトンの解析をやることにした。
逆散乱法である。やってみるとすぐに成果を得たが、広田良吾先生の発明した双線型法の方がしっくりした。調べてみるとこの方法でFredholm行列式の形の一般解が求められることがわかった。1979年のことである。その後、佐藤幹夫先生とそのグループが双線型方程式はソリトン解全体がなすグラスマン多様体のプリュッカー座標であることを示し、ソリトン方程式は無限次元リー環によって分類できることがわかった。私の解はA型リー環の一般解となっていることがわかった。天才数学者によって、一夜にしてソリトンの全貌が解明されてしまった。そこで学位を取った後は代数構造のない非線形方程式の厳密解を求めることに方向転換することにした。要は天才が一夜で全貌を明らかにできないような分野を目指したのである。代数構造がないので数値計算に頼ることになるが、厳密解析を行いたいので、計算機の誤差を全て正しく把握した上で計算機で解を構成しなくてはならない。天才フォンノイマンが数値計算の誤差は簡単には把握できないといったこともあり、本流の数値計算の学者は数値計算の誤差を把握していなくても論文が書けた。しかし、厳密解を求めたい演者にはそれでは意味がない。そこで数値計算の誤差を把握し、しかも難しい方程式が解けるためには効率的な方法がないといけない。10年ぐらい模索すると、ある日、コロンブスの卵のような方法を思いついた。行列単位の区間演算法である。これを使って、数値計算の体系を書き直した。
基本は数ヶ月で出来上がった。さらに色々な問題が解けるように拡張すると25年以上問題が尽きなかった。
こうして35年ほど精度保証付き数値計算の研究に邁進した。学位を取った学生も10名を越え、今やスパコンからパソコンまで数値計算の精度保証が簡単かつ高速に行えるようになった。今は様々な非線形方程式の厳密解を求めて楽しんでいる。エルニーニョの方程式、非線形レーザの方程式、食う食われるの方程式、地震波の方程式など枚挙できないほどである。
本講演では以上のような研究の概要について解説する。
NLS会長夏目季代久先生からの紹介文
大石先生は、1976年に早稲田大学理工学部をご卒業、1981年に同大学大学院で工学博士を取得後、早稲田大学で教授、学部長を歴任されました。またIEICEフェロー始め、紫綬褒章を受賞され、文化功労者にも選ばれるなど、数多くの賞を受賞されています。今年3月に定年退職後も、早稲田大学の栄誉フェロー、名誉教授として精力的に活動されています。 先生の御研究は、いまや日常生活と切っては切り離せないコンピュータの数値計算の計算精度に関するものです。天候予測等、現代社会において数値計算は必要不可欠なものになっています。計算をより正確に計算するためには計算精度が必要になりますが、実際にはどうしても誤差が生じてしまいます。先生はこれまで、そのような誤差を数学的に厳密に評価する数値計算手法について御研究されて来ました。最近では、これまでの御研究を元に、エルニーニョの方程式、地震波の方程式など非線形方程式の厳密解を求められています。セミナーでは先生のこれまでの御研究を概観してご紹介頂ける予定です。数値計算手法は様々な工学分野で用いられている重要な手法の一つです。ご興味のある皆様は、是非ともご参集の程、どうぞ宜しくお願い致します。数多くの分野の研究者の皆様のご聴講をお願い致します。
講師略歴
大石 進一
略歴:
1976年早稲田大学理工学部電子通信学科卒業、1981年早稲田大学大学院理工学研究科修了、工学博士
1980年早稲田大学理工学部助手、1982年同専任講師、1984同助教授、1989年同教授。同大学理工学術院基幹理工学部長、同大学理工学術院長など歴任。紫綬褒章受章、文化功労者に叙せられる。2024年3月定年退職。2024年4月より早稲田大学栄誉フェロー、名誉教授となった。パリ第6大学客員教授など歴任。早稲田大学理工学術院で応用数理学科の設立に尽力した。