第6章 インターネットの仕組みと使い方



6.2 ダイアルアップIP接続の仕組み

(1)UUCP接続とダイアルアップIP接続

 個人のような小規模ユーザが、インターネットプロバイダ経由でインターネットにアクセスする場合、UUCP接続とダイアルアップIP接続とが選択肢になります。ただし、UUCP接続では、メールとニュース程度に機能が限られてしまうため、これからはダイアルアップIP接続がどんどん普及するでしょう。ここでは、ダイアルアップIP接続の考え方を説明します。

(2)電子メールサーバ

 インターネットは、専用線で相互接続された端末(ルータやUNIXワークステーション)をベースに発達してきました。このため、各端末は、使用ユーザが常時複数いて、メッセージの送受などのインターネット利用頻度も高く、24時間稼働しているのが当然でした。したがって、メールを送ったり、ファイル転送をしようとした場合、相手の端末は立ち上がっているのが前提でした。ところが、90年代に入って、MacintoshやWindows 等のパソコンがインターネットに接続されるようになってからこの条件が満足されるとは限らなくなりました。

 多くの場合、利用ユーザが一人しかいないパソコンでは、インターネット利用頻度も少なく、また24時間稼働していることもありません。このような人にもメールを送ろうとしたらどうしたらいいのでしょうか? 一つの回答は、各パソコンユーザに替わってメールを受信してくれるサーバ(POPサーバといいます)を用意して、24時間稼働させておけば、パソコンユーザにもメールを送ることが可能になります。このため、インターネットプロバイダは、必ずPOPサーバを提供しています。

 パソコンユーザが、POPサーバにアクセスするには、どんなハードウェアが適当でしょうか? やはり、一般的なモデムを使って、電話網経由でアクセスするのが一番安上がりです。特に現在ではV.34モデムという28.8kbpsの回線速度(実際にモデム間が28.8kbpsで接続されるのはめったになく、回線品質がよいので有名な日本でも20kbps前後になることがあります。外国では、14.4kbpsが出たら大いに喜ぶべきです。)を達成できるモデムが、安価に購入できますので、これからモデムを買うならV.34モデムかV.34bis(33.6kbps)モデムにするべきです。V.34モデムは、データ圧縮機能があるため、端末(パソコン)側から見た場合、モデム間の通信速度の2倍程度の伝送速度に見えるときもあります。WWWのようなマルチメディア情報を扱う際は、V.34モデムやV.34bisモデムは必需品といえましょう。

(3)ダイアルアップIP接続の概念

 パソコンユーザが電話網経由でアクセスする際に、使用する通信方式がPPP(Point to Point Protocol)と呼ばれるものです。パソコンユーザがPPPアクセスすると、そのプロバイダの正式な加入者であることをチェック(ユーザ名とパスワードで判定します)したあと、TCP/IP接続を開始してくれます。これを、ダイアルアップIP接続といいます。第2章また第3章で設定したのは、この接続方法です。図6-5にダイアルアップIP接続の概念図を示します。

図6-5 ダイアルアップIP接続の仕組み

 インターネットでは、接続されている端末はすべてIPアドレスという番号が付与されています。この番号が、32ビットからなりますが、昨今のインターネットの急速な普及により、アドレス不足がささやかれています。パソコンユーザのようにあまりアクセスしない人にもIPアドレスを恒久的に付与するのは無駄であるとの考えから、ダイアルアップIP接続では、アクセスしてきたときにダイナミックにIPアドレスを付与しています。接続時にIPアドレスの付与を行うのもPPPの仕事です。この結果、パソコンからアクセスするユーザよりもずっと少ない数のIPアドレス(プロバイダ側で提供する電話ポートの数と同じ)で、サービスができるのです。もちろん、ダイアルアップIP接続したあとは、通常のインターネット接続端末と同様のことができます。

(4)ダイアルアップIP接続の弱点

 さて、一見、万能のダイアルアップ接続ですが、弱点はあります。これは、インターネット側のユーザが好きなときにダイアルアップユーザを呼び出せないことです。なぜなら、IPアドレスが定まっていない(ダイアルアップ接続後IPアドレスが決まることに注意してください)ため、ダイアルアップユーザにアクセスしようにもできないからです。これは、ダイアルアップユーザの場合、WWWサーバを見ることはできますが、WWWサーバにはなれないことを意味します。  もっとも、パソコンユーザの場合、WWWサーバを提供することはほとんど考えないと思いますから、現状ではあながちデメリットとはいえないかも知れません。それに、第7章でも説明しますが、インターネットプロバイダは、普通、WWWサーバのレンタル、つまりWWWサーバのハードディスクを貸し出すようなサービスを別料金で用意しています。自分でWWWドキュメントを作成し、そのようなレンタル・サーバに転送すればよいわけです。

 ここで、PPP接続とダイアルアップIP接続を混同しないでください。PPPは、あくまで技術的な用語であり、ダイアルアップIP接続はインターネットプロバイダのサービス名です。PPPは、電話網に限らず専用線等種々の通信回線を使ってLAN関連機器の接続ができる技術で、適用領域もTCP/IPだけでなく、NetWare等のパソコン系のLANにも使えます。また、ワークステーションに使われているPPPでは、電話網/データ通信網経由で相互に呼び出し合って、双方向でTCP/IP接続できるものさえあります。したがって、現状では、ダイアルアップ接続サービスが、PPPの一部の機能を使って電話網経由の接続サービスをしているというのが正しい言い方でしょう。


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