会長就任挨拶

■4.内藤の創造性に対する提案
 
 以上例示したような分類はほかにもいろいろと考えられるであろうが、次に私の考えを示す。

 ただ言葉の上で創造といっても、我々の実感として、モノスゴイと思えるものから、スゴイ、マアマア、余りたいしたことはない等々いろいろのクラスがあると思う。すなわち創造に階層があるといえると思える。

 既に分かっている事象、その反対にまだ分かっていない事象をそれぞれ、既知、未知という。そこで、やや抽象的であるが、既知をすべて集めた集合を図1のAで表そう。そうすると図1のA以外の領域は未知を表す集合であり、これをBと名付ける。創造というアクションは未知を既知に、無を有にするものであるが、図の世界では、Bの中の点をAの中に移動させることに対応する。


             図1.既知と未知


 既知の集合から距離のより遠い未知の点を既知の中にもたらす創造が階層の高い創造と認識されると考える。そのように考えたとき階層の高い創造とはどのようなものであろうか?

 私は、次のような階層構造で創造を分類するとよいと考えている(人によって種々の構造が考えられるであろう)。

創造を次の5階層に分けてみる。

1. 新規物理量の存在の提案、その存在の実証、解明
   (新規概念の提案)

2. その新規物理量(新規概念)の応用の提案

3. その応用上で必要になる基本装置・デバイスの提案
   (新規概念の応用とそれによる新しい結果の提示)

4. 3.の基本装置・デバイスの構成・形式の提案

5. 4.で提案された構成・形式内での種々の特性改善
   (上記の4.、5.は工学的応用を主体に考えている)

 以上を具体的な例で示してみる。私の専門分野の電磁波工学で考えてみると 1.変位電流の存在、電磁波の存在の提案・・・マクスウェル(イギリス)、存在の検証‥ヘルツ(ドイツ)、2.例えば情報伝送(無線通信、通信)、センサ、エネルギーとして、医用応用等、3.通信を例に取ると、発信器、変調器、増幅器、アンテナ、フィルタ等の種々の回路、等、4.例えばアンテナを例に取ると、導体を使うとして、線状アンテナ、面上アンテナ、スロットアンテナ等、5.線状アンテナとすると、ダイポールアンテナ、多情線アンテナ‥・八木アンテナ等、面上の中では、平面、パラボラアンテナ、カセグレンアンテナ、等々 このような階層は必ずしも、実用上の価値を表すものではない。考えの流れの整理としての一つとしては考えられるであろう。歴史的には5.の特性改善の研究からその上の、すなわち上位の新しいものが付加されていくことはしばしば起きている。

 最近特に話題になっているITに関しての重要技術のオリジンを示すと次のようになるであろう。電磁波は上記のようにイギリス、最近の光ファイバについては、イギリスの郵政省の研究所における、Dr.Kao博士によるガラス中の不純物の量と光の伝送損の研究、その後の、アメリカCoring Glass 社の光ファイバによる詳細な追試実験(Dr.Kao 博士の実験を受けての)により減衰20dB/km の値が得られたことが、光ファイバ通信の将来の可能性をもたらした。現実により良いファイバの作り方においては、VAD 法という優れた方法を日本のNTT が考え出した。

 半導体レーザの常温発信がアメリカのベル研究所において林巌雄氏らによって初めて行われた。その後伊賀健一氏(東工大名誉教授)による面発光レーザ、中村修二氏(前日亜化学、現在アメリカ カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授)による、青色発光ダイオード、青色レーザ)と優れた、世界をリードする仕事をされている。

 コンピュータ、真空管式、もしくは、電子式はアメリカが最初である。トランジスタ、それによるコンピュータが20世紀の最大の発明だとされているが,御存知のように,そのトランジスタはアメリカの,前にも出たベル研究所であり,ノーベル賞を受賞している.このように,IT技術の開発のメインはアメリカである。

 これまでの日本から貢献の多くは、上に示した創造階層の“5.の特性改善”に特に長けているといえるところであった。しかし、いま上で述べたように、最近はより上位の階層の創造が増えてきているのは確かである。今後もますます上位の創造を心掛けるという気持ちを持つことが必要であろう。

 後ほど述べるが、科学、技術の世界に我々が目を開いたのはそんなに古くはない。 今後は上で記したように高度な挑戦をすることを心掛け、それにより得られる高い成果に対して高い評価を与えることができる社会になる必要があるのではないかと考える。

 


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