2022年度

2022年度研究奨励賞受賞者について

オンライン開催されました第6回研究会(若手企画)の若手選奨(研究奨励賞)における審査の結果,以下の2名の講演者への授賞が決定しました.

(研究奨励賞は,講演原稿の著者のうち講演者のみ(個人)が対象となります.講演者を除く,他の連名著者は対象ではありませんので,ご注意ください.)

研究奨励賞受賞者一覧

  • 相川野々香(東京工芸大学)
    「 力学を対象とした誤りに基づく問題提示システムを用いた授業実践におけるテスト結果の分析」
  • 大西朔永(岡山理科大学)
    「 ニューラルネットワークモデルによる授業対話に対する学びの種類の推定と可視化」

受賞者の講演概要

「 力学を対象とした誤りに基づく問題提示システムを用いた授業実践におけるテスト結果の分析」
相川野々香・前田新太郎・茂木誠拓・古池謙人・東本崇仁(東京工芸大)・今井 功(千葉市立さつきが丘中学校)・堀口知也(神戸大)・平嶋 宗(広島大)

 学習において,学習者が誤りを適切に修正できないことにより問題解決が進展しない状態である行き詰まりが発生することがある.本研究では,力学を対象として,このような行き詰まりを解消するため,学習者の誤りに基づいて補助問題を提示する学習支援システムを開発した.そして,中学校の3年生86名を対象に授業実践を実施した.本稿ではシステムに実装した問題系列について評価するため,授業実践の結果について,作図問題をあつかったテストの結果を,記入された力ごとに分析した.その結果,本システムの問題系列は重力・垂直抗力・外力から押される力・押す力に対しての地面との摩擦力の学習に効果を発揮し,一方で他物体との摩擦力・他物体に伝播する力の学習には課題があることがわかった. 

受賞者からの声

この度は,栄誉ある研究奨励賞をいただきまして,誠にありがとうございます.
今回受賞できたのは,多くの皆様のお力のおかげです.特に日頃より熱心にご指導いただいた東京工芸大学の東本崇仁先生,同大学の古池謙人氏,茂木誠拓氏,前田新太郎氏,そして研究上における本質的かつ有益なご指摘を何度もいただいた広島大学の平嶋宗先生および神戸大学の堀口知也先生,授業実践の実施に多大なるご協力をいただいた千葉市立さつきが丘中学校の今井功先生に,心より感謝申し上げます.
今回の受賞を励みに,これからも研究に尽力させていただきたいと思います.


「 ニューラルネットワークモデルによる授業対話に対する学びの種類の推定と可視化 」
大西朔永・椎名広光・保森智彦(岡山理科大)

日本における小学校の授業では,授業改善のために授業の省察活動が行われてきており,フィードバックが重要となっている.特に,小学校段階の授業では,教員の説明や促進,質問などの発話と児童の返答が多くなされてきており,一種の対話がなされている.この対話を分析によって,教員の発話の種類や児童の学びの状況を分析し,学びに関する分類を教員へフィードバックが可能と考えられる.授業の対話の分析による学びの種類の抽出には,自然言語処理分野のニューラルネットワークを用いた手法が利用可能となってきており,文脈をとらえることが比較的可能となっているBERTやTransformerの手法の他に,対話に適したモデルとして対話応答生成で用いられるGVTモデルがある.本研究では,BERTによる分析の他に,教員と児童の話者ごとにコンテキストを考慮するようにGVT(Global Variational Transformer)モデルを拡張したモデルを提案し,対話から学びの種類の分析を行っている.また,授業における学びの種類の時系列的分布の可視化についてのシステムの開発を行っている.

受賞者からの声

この度は,教育工学研究会より栄誉ある研究奨励賞を頂き,誠にありがとうございます.
今回の受賞を励みに,教育工学研究のさらなる発展に貢献できるよう,より一層精進して参りたいと思います.
また,研究を支えてくださった椎名広光先生,保森智彦先生に心より感謝申し上げます.
今後とも,ご指導ご鞭撻のほど,よろしくお願い申し上げます.

(○は講演者[受賞者])

選奨規定に関わる審査対象件数および受賞件数の公表

  • 審査対象の講演件数:9件(当日の全講演件数:10件)
  • 受賞講演件数:2件(22%)

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