講演会のご案内(2018/10/18(Thu)@北見工業大学)

下記の通り講演会が開催されますのでご案内いたします.皆様のご参加をお待ちしております.

講演題目

エネルギー喰い虫 -IOTと人間ー

講師

大場 隆之 先生
東京工業大学未来産業技術研究所 教授

日時

2018年10月18日(木) 14:45-16:15

場所

北見工業大学 A101講義室
http://www.kitami-it.ac.jp/about/access/

講演の概要

半世紀以上も前のENIAC(1946年,真空管18800本利用したコンピュータ)と比べて,パソコンの性能向上は100万倍とか10億倍というオーダーである.今ではちょっと前のスパコン並みのスマートフォンを何億人もの人が手にしているわけである.
クラウド化が進んで世界のデータセンターには,ゼダバイト(1021Byte)という筆者もさすがに使ったことが無いような単位の膨大なデータが蓄積され,一秒当たり1000ギガバイト(109Byte)の情報が世界を飛び交っている.この内,有効な情報はどのくらいあるのか,と皮肉ってみたくもなるが,これらに費やされるエネルギーはつまりは数百万kW級になる.もちろん全てが同時に使われることは無いとしても原発数基分の電力に相当する.
一方,電子機器にはコンデンサーが欠かせない.小型で電気容量を大きくするために酸化タンタル(Ta2O5)など高誘電体が利用されている.希少金属Taの原材料はコルタンと呼ばれColumbite-Tantalite[(Fe, Mn)(Ta, Nb)2O6)]鉱物の略である.コルタンを産出するアフリカのコンゴではコルタンの採掘権を巡って部族間,隣国ルワンダ含め紛争が絶えない.携帯電話の普及とともにコルタンの市場価格が高騰し,それに合わせて紛争で数十万人ともいわれる犠牲者が続出している.高純度で特殊材料を多用する半導体では,原材料の精製,製造,さらには廃棄まで含めると様々な問題が国境を越えて,とりわけ開発途上国で起きている.このような社会的な歪は,半導体を自動車に置き換えても同じである.
我々はもはや無意識で電子機器を利用しているため,結局は半導体に端を発して起きているエネルギー問題や紛争になかなか気が付かない.社会問題にまで踏み込むと経済論とか科学的な切り口では全く歯が立たず,人類の歴史,国家,貧困,民族,宗教の争い,地球規模の変動などなど,経済性だけではなく社会性を含めたそれこそ三次元的で間口の広い議論が必要になる.かといって即効性のある解決策はそう簡単には思い浮かばないが,島国日本が育んだ固有文化,「もったいない」概念は少なくとも大量消費社会が抱える課題に対して一助になると筆者は考える.
「お・も・て・な・し」もいいのだが,もったいない,無駄にしない,つまり工学的にはエネルギー効率を上げることである.生体のエネルギー効率に比べれば足元にも及ばないが,とどのつまり人類が作り出した機械社会にはまだまだ多くの可能性と改良の余地があるということである.永続は無いとしても,長続きさせるためには,産業の良し悪しが世界と連動していることも見据えて,有限の財産を後世に残す,それが工学屋として取り組むべき課題である.

世話人

北見工業大学工学部地球環境工学科 教授 武山 真弓