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旧電子情報通信学会倫理綱領について(解説)

電子情報通信学会

1. はじめに
本綱領は1998年 7月21日、電子情報通信学会理事会において、学会の倫理綱領として承認された。承認に先立って、倫理綱領試案は倫理綱領試案策定ワーキンググループ (情報通信倫理研究専門委員会) によって作成された。その経緯については末尾に述べる。
作成に当たってワーキンググループは内外の電子・情報・通信関連学術/業界団体の綱領を収集し、内容を検討した。
次ページの表に示すように、諸外国においては 1980年代から 1990年代のはじめにかけて、倫理綱領あるいは行動綱領の名の下に、プロフェッショナルとしての責任および行動のルールが策定されている。共通的に見られる綱領の構成は、人間として守るべき一般的道徳規範をまず述べ、次いで公共、勤務先、クライアントなどに対する専門家としての責任を述べるというものであった。ACM の倫理・行動綱領は、さらに管理者としての位置にある者の追加的責任を述べるという形式をとっている。
本綱領もこれらの倫理綱領とほぼ同様な考え方で作成した。

2. 本綱領の構成

本綱領は基本理念に加えて、下記の9条からなっている。

第1条 基本方針
第2条 社会的責任
第3条 社会的信頼
第4条 品質保証
第5条 知的財産権
第6条 ネットワークアクセス
第7条 研究開発
第8条 実施基準
第9条 管理的立場にある者のなすべきこと

3. 本綱領の内容(概略)

基本理念および第1条[基本方針]において、専門家であると同時に一個人でもある学会員が遵守すべきことを述べた。その上で、第2条以降において逐次、学会員の行動における規範を述べるという形式を取っている。
第2条 [社会的責任]では、電子情報通信技術の進展によって生じる社会的影響に対する学会員の責任を述べた。ここでは、電子・情報・通信の何れかの技術の専門家として、学会員が社会的責任を自覚し、またその技術がもたらす社会的影響を正しく社会に知らせる努力をするよう求めている。

第3条[社会的信頼]では、職務上知りえた秘密を開示しないことや自分および他人のために不正利用をしないこと、および契約事項、了解事項、責任分担等の条項の尊重等をうたった。また、それらのことが満足されるためには、現在の法制度を知っていることが前提となるので、その学習に努めることを求めている。

第4条[品質保証]では、研究、開発、製造等の成果物の品質の保証だけでなく、学会員の行動そのものの品質も視野においた。そのために目標を設定し、体制を作ることによって品質を維持していくことを求めている。

第5条[知的財産権]では、まず他人の創意工夫を尊重することの重要性を述べている。ついで、著作権、特許権、その他の知的財産権について、他人の権利の尊重だけでなく、自己のそれの保護にも注意を怠らないことを要請している。

第6条[ネットワークアクセス]では、許されているプロセスあるいは資源にのみアクセスを限定し、他者の管理するシステムに許可なく侵入しないことはもちろん、ネットワークアクセスにおける自己責任の原則を規定している。
自己責任とは、学会員が情報発信において真正な情報のみを提供する責任だけでなく、他から情報を受け取った結果生じる事態にも責任を持つことを意味している。

第7条[研究開発]では、研究開発活動における相互の立場の尊重および自由な討論の場をつくること、および研究開発における長期的視野の必要性を強調している。

第8条[実施基準]では、学会員の相互啓発・相互評価体制の推進を要請し、あわせて社会の反応を把握する体制の確立に学会員が協力することを求めている。

第9条[管理者基準]では、学会員が自分の所属する組織内において、管理的立場にある場合になすべき事項を追加的に示している。すなわち、自分自身がこの綱領の遵守に努めるだけでなく、自分の部下が綱領を遵守するよう教育訓練を行い、また遵守する環境を作り出す必要があることを述べている。

4. 本綱領が持つ意義

本綱領の一つ一つの項目は、ごく当たり前のことを述べているに過ぎない。しかし、学会および学会員の社会的責任を再確認しようとするところに本綱領の意義がある。すなわち、学会員がおのおの自律的に姿勢を正すための標柱となることをねらいとしているのである。
綱領に違反した学会員に対するペナルティ条項をつけるかどうかは、議論のあるところである。本綱領では、学会員が誰にも強制されることなく自主的に綱領を遵守することを願う主旨から、ペナルティ条項は設けてない。

5. 今後の展望

情報処理および通信は、現在ではもはやその分野の専門家の専有物ではなく、家庭を含めた社会のすべての階層の共通の手段、媒体となりつつある。
そのような情勢を考えると、電子情報通信学会としては、学会内の倫理綱領にとどまらず、その考え方が社会一般の倫理の中に浸透していくよう展開を図っていかなければならない。そのために長期的視野のもとに、次世代の人々に対して、幼い時期から適切なコンピュータリテラシー教育を施す必要がある。それは技術教育に変調しないことを意味する。
情報通信倫理研究専門委員会は今後この分野にも研究領域を広げていく予定である。

6. ワーキンググループメンバー(アイウエオ順)

上園 忠弘 (城西国際大学)
笠原 正雄 (京都工芸繊維大学)
黒川 恒雄 (國學院大学)
坂庭 好一 (東京工業大学)
多賀谷一照 (千葉大学)
田崎 三郎 (愛媛大学)
辻井 重男 (中央大学)
土屋 俊  (千葉大学)
苗村 憲司 (慶応義塾大学)
平澤 茂一 (早稲田大学)
別府 庸子 (姫路工業大学)
満保 雅浩 (東北大学) 幹事

 

(以上)

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