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研究賞2023年被表彰者

委員による厳正な審査の結果,2023年の優秀研究賞・学生研究賞はそれぞれ以下のように決定しました(2024年1月31日決定,2024年2月6日公表).なお,規程に基づき,優秀研究賞は共著者を含む全員,学生研究賞は筆頭著者である学生が表彰の対象となります.

優秀研究賞 (Best Paper Award)

受賞者

鈴木雅弘・平野正徳・坂地泰紀(東大)

タイトル

日本語インストラクションデータを用いた対話可能な日本語大規模言語モデルのLoRAチューニング

  • 2023年9月 第20回テキストアナリティクス・シンポジウム における発表
概要

本研究では,日本語インストラクションデータを用い,日本語と英語のそれぞれをベースにした大規模言語モデル (LLM) に対してLoRAチューニングを行った.チューニングしたモデルに対し定量と定性による両面から評価を行い,日本語インストラクションデータによるチューニングの効果を確認した.また幅広いインストラクションデータや実際のモデルが出力した文字列による評価の必要性など,日本語における大規模言語モデルや言語資源における課題を明らかにした.

選奨理由

日本語インストラクションデータを構築し,それを用いて日本語と英語のそれぞれをベースにした大規模言語モデル (LLM) に対してLoRAチューニングを行い,性能検証を行った研究です.初めて大規模な日本語インストラクションデータの構築を行っており,高い新規性を持っています.加えて,日本語大規模言語モデルの発展のための重要な知見の最初の一つとしてまとまっていることから,高い有用性を示しています.また,LLMの良さをPerplexityを用いて測定するなど得られた実験結果の信頼性は高く,今後続く研究への影響が大きく,発展性も高いことを示しています.これらの新規性・有用性・発展性から本研究が優秀研究賞にふさわしいと判断しました.

学生研究賞 (Best Student Paper Award)

受賞者

竹尾匡貴(九工大)

タイトル

マルチタスク学習の枠組みを用いた複数の評価観点を擁するレビューデータの評価値推定

  • 2023年9月 第20回テキストアナリティクス・シンポジウム における発表
  • 著者:竹尾匡貴・川嵜慎乃介・嶋田和孝(九工大)
概要

本研究では,複数観点の評価値を擁するレビューデータにおける評価値推定タスクに取り組む.従来手法では,各観点の評価値を推定するモデルが独立していた.しかし,各観点の評価は何らかの関連性を持つ場合があり,ある観点の評価が別の観点の評価に影響することがある.そのため,各観点のモデルが独立していてはモデルの性能を十分に発揮できない.そこで,複数のモデル間で同時に学習を行うマルチタスク学習の枠組みを,各観点の評価値推定モデルに適用させた手法を提案する.提案手法の検証には,ゲームソフトに関するレビューデータを用いる.このレビューには7種類の観点が含まれている.評価値推定モデルとしてBERTを用い,7観点のモデル間で互いに内部のパラメータを共有しながら並列的に学習を進める.この手法を並列学習と呼ぶ.実験の結果,提案手法であるパラメータ共有による並列学習の有効性を確認した.また実例分析より,並列学習を行わない場合は捉え切れなかった情報を,並列学習によって補完できた例も見られた.

選奨理由

複数のタスクを解くモデルを並列的に学習するマルチタスク学習の枠組みを取り入れて,複数アスペクトを擁するレビューデータにおける各アスペクトの評価値推定を行った研究です.目的に対して適切な手法が提案されており,結果の分析も適切に行っていると考えられることから信頼性が高いです.また,複数観点の評価という実用性の高いタスクに対して直感的な手法で改善を試みており,対応する考察も丁寧に記述されております.詳細な実験結果は言語処理研究者の参考になりうると考えれます.これらの理由から,本研究が学生研究賞にふさわしいと判断しました.

リンク

最終更新時間:2024年02月06日 11時45分40秒