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本年3月11日に発生した「平成23年東日本大震災」等に被災された皆様に、心からお見舞い申し上げます。
この5月より、通信ソサイエティ会長として、ソサイエティの会員一人一人にとって実り多き1年となるように、全力を尽くしたいと思っています。通信ソサイエティの活動は、電子情報通信学会の柱の一つであると同時に、日常生活に欠くべからざる通信基盤の発展に、学術と産業の両面で貢献してまいりました。学会活動を通して、自由に様々な可能性の議論とコンセンサスの形成がなされ、価値の高い技術の先導役として会員の働きが認められ、アジアから世界からアクティビティの高いソサイエティの一つとして認められているところであります。
単に技術的な側面だけでなく社会的な役割についても、3月の大震災により、あらためて通信基盤の重要性と課題が示されており、真摯に課題を直視し、その解決に英知を注ぐ上で、通信ソサイエティの役割は大きいものがあります。この数年を振り返っても、環太平洋地域を中心に、地震・津波による災害は、むしろ頻度を高めており、その復旧や対策が各国で試みられ、着実な前進を遂げているものの自然の驚異の前に無力感を感じざる得ない思いの方も多かろうと推察いたします。もちろん、従前より、情報通信基盤は日常の利便性と経済性の両立のみならず、大規模震災時にも持続的にサービス提供可能な頑強さの実現に取り組んできたところです。いろいろな可能性が探求され、実社会においても根幹をなす技術として活用され、大きな産業をなすとともに文字通り情報化社会を支える活動の一翼を担っております。それゆえ、情報化社会の進展は、「距離を超え」、「時間を超え」、「言語・文化すら超えて」、ネットワークを介して、過去から未来へ知識や記録を継承し知的活動の仮想フィールドとして、急速な発展を遂げています。社会や個人にとって「大事なもの」を管理し、利用し、継承していく基盤に発展してきています。「大事なもの」を管理する時に、時として利便性と信頼性がトレードオフになります。その紛失のリスクも多様化する一方で、成熟した情報化社会に向けては個人管理とパブリック管理の仕組みを効率化・高信頼化できる可能性を有しており、クラウド時代は明らかに、従来よりも災害耐性の高い社会基盤が提供できると確信しています。そのためにも、国難にも近い災害とエネルギー問題を直視して、その解決と実践に向けた、様々なアイデアや取り組みを結集できるようなフレキシビリティと責任感をソサイエティ活動の共通の基軸にして行きたいと愚考しております。そのような取り組みは、日本をはじめとした先進国全てが共有できる命題であり、その分野での活動は、通信学会のみならず日本のアクティビティの向上と情報化時代における日本の役割を果たすことになると信じています。
気がつけば、無線や光ファイバなどの物理層の進歩に支えられ、イーサネットワークやIPパケットを利用したデータ通信技術とそれを蓄積し共有を進めたWeb技術が、TV放送や著作物などのコンテンツの著作権を守りながら、配信・共有できる基盤に育ってきています。日本は、世界的にも、第一線の充実したブロードバンド環境を築き、それを活用するための表示システムなど入出力技術についても先端的なデバイス技術を提供してきました。一方で、インターネットを背景にウェブ検索やデータ利活用手段をサービスとして提供するクラウド型の仕組み作りでは、従来の枠組みを大胆に切り崩しながら圧倒的な利便性を提供するクラウド型のトータルシステムチャレンジで米国の後塵を拝しており、その枠組みの中で、好奇心と強い求心力をよりどころに、ネットワーク経由で保存・共有されるデータを利用しながら情報発信してソーシャルネットワークを楽しむことが圧倒的な物量で展開されています。
社会活動に目を転じると、人口増加に伴い地球温暖化や化石燃料など資源の不足が国際課題になってきています。ソサイエティの活動も、このような社会環境の変化に対して、柔軟かつ責任感を持って対応していくことが重要であります。便利で楽しく快適な社会環境と、個人にとって、社会にとって大事なものを「守る」という観点とを両立させてこそ、真の情報化社会であると考えます。原発事故までに及んでいる今回のような未曾有な災害は、私たちの活動に大きな決意を促していると思えてなりません。かねてより標榜している地球にやさしいグリーン社会の実現のため、エコなエネルギー資源に目を配り、エネルギーの有効活用に適した社会基盤へのシフトが不可欠であります。にもかかわらず、具体策が進みにくいのは、消費の心地よさがつきまとうからであります。この観点で、今回の国難とも言われる局面を「災い転じて、福となす」という取り組みが重要です。会員の英知を結集し、学会としてあるべき方向感と技術課題について議論・提言をしていくことが大事と考えています。
学会の活動の源泉は、好奇心や夢などの自発的な自由な考えです。遠く離れた人といつでもどこでも話が出来ると良いな、など夢を描きそれが現実になりそうになると、多くの人の創意工夫で、想定以上の進歩を遂げることになります。ところが、それまで便利だった物が突然使えなくなると、これまた、大きな不便となります。今回の震災でも、被災地はもとより離れた東京でも鉄道が止まり、大渋滞となりました。電話もつながらなくなり、不安・不便を高めることになりました。それでも、神戸の震災以降、メールや伝言ダイヤルなど少なからず対応できたこともインフラの信頼性が保てた故だと思います。
日常の便利さと災害時・非常時の通信確保について、通信学会や通信ソサイエティも会誌や企画をたびたび行って来ていますが、なかなか満足な対応が取れないのは今回の震災でも同様です。いざとなったときに最低限の確保をする覚悟と責任を持つと同時に、ボランティア的な補助手段が機能するフレキシビリティが大切と思います。産学官連携が叫ばれて久しいですが、世界の趨勢がデファクトを握って覇権をとるという争いになっている中で、学術だけを論議しているエンジニアリングは寂しさを感じます。日常的に使っている便利な道具が、当たり前のように日本製だった時代から、時代が変わって、知的集約されたプロダクトのうち、量産の効くLSIチップ・ソフトウェアがPCに代表されるようにデファクトで進んでいて、そのような分野やプロダクトに、当学会との関わりは、もはや直接的ではなくなってきています。このような傾向は広まっており、産業界からの会員減少の要因の一つになっていると考えられます。
やはり、王道は、原理原則の部分で新しいアイデアを出し、それを核にマジョリティを形成するコミュニティを地道に牽引して行かねばなりません。戦後、日本は米国の経済活動を補完する形で発展して、部分的に肩を並べるような状況が垣間見えた瞬間、グローバル化という諸刃の剣と情報社会の形成というフィールドで独り立ちを促されているように思います。学術と産業の発展に、標準化など世界的なコンセンサス形成が重要な役割を果たす現在において、産学の密な活動が特徴の一つである通信ソサイエティの活動が、会員の皆様とって、真に価値のあるサービス・活動の場を提供できるように、技術の追求と社会活動との整合を進めて行くことに、微力ながら力を注ぎたいし、皆様の力を結集できるソサイエティであり続けたいと思っています。
過日、通信方式研究会の50周年記念イベントに参加して、先人の先見性に敬意を表すと共にこれからの50年に向かって大いに議論をし、刺激し合って、柔軟で粘り強い「しなやか」な思考のもと日本をはじめとする文明社会の課題を解決する社会基盤の形成発展に尽力し、その果実を一緒に楽しみたいと思います。
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