就任挨拶:
通信ソサイエティ会長就任にあたって

漆谷重雄会長


Junji NAMIKI

 


 2018年度の通信ソサイエティ会長に就任致しました漆谷です。現代の社会基盤である通信ネットワークならびに関連技術の発展を支えてきた通信ソサイエティの会長に選任頂いたことは、大変光栄に存じます。最初に、通信ソサイエティの活動・運営に日頃ご貢献頂いている研究者・技術者の皆様方に深く感謝申し上げます。通信ソサイエティの活動がさらに活性化され、その重要性が益々認識されるよう、全力を尽くす所存です。
 通信ソサイエティは、現在世界50カ国以上、1万人以上の会員を擁しており、出版と研究会が大きな二つの柱です。出版活動では、英文論文誌、和文論文誌、英文レターの3つの月刊ジャーナルを出版しており、英文論文誌の約半数は海外からの投稿です。また、通信ソサイエティ活動の宣伝のために、英文情報誌と和文マガジンを四半期毎に電子出版しています。研究会活動では、21の研究専門委員会と7つの特別研究専門委員会による研究会を全国各地で開催し、海外のシスター学会と連携して20以上の国際会議も開催しています。これまで紙媒体であった研究会論文(技術研究報告)は、2018年4月から完全に電子化され、固定ライセンス料金で2006年度以降の全論文が閲覧できるようになりました。
 通信ソサイエティの強みは、上記の活動にこれまで学術界だけではなく産業界も深く関与してきたことです。しかしながら、昨今のICT業界を取り巻く急激な環境の変化を受け、産業界の学会に対する見方がかなり変わってきていると感じています。特に、OTT (Over The Top)事業者の通信ネットワークへの巨大な投資額は、通信キャリアの総額を超える勢いであり、通信機器市場に強烈なインパクトを与え、アーキテクチャを変えようとしています。通信ソサイエティには、このような動きを敏感に捉えて将来の展望を示すことが期待されています。次世代アプリケーションのトレンドを分析し、適宜活動領域を拡大して、産業界にとって魅力のある活動をしていかなければいけません。
 ICT分野以外の幅広い分野との連携により、ICT技術の新たな活用や次世代技術の方向性に関して意見交換する場を提供することも重要です。最近は様々な業界がビッグデータと人工知能(AI)に興味を示していますが、その基盤技術であるICT技術の高度化も同時に重要となってきます。モノのインターネット(IoT)の世界では、ICT基盤の機能配備が大きく変化する可能性があります。様々な産業分野におけるICT技術の活用事例や市場動向等を情報共有する場を形成し、高度な複合技術の研究開発や新しいビジネス展開を促進できればと考えています。
 出版・研究会活動においては、論文誌のインパクトファクターも重要ですが、通信ソサイエティで発表されたコンテンツ自体が尊重されることがより重要です。例えば、産業界に影響を与える可能性のある論文がフィーチャーされ、産業界から大学等への研究投資が増えるようになれば、大学等の学会発表の趣旨も変化していく可能性があります。学会を通じて産学連携が加速され、学生の実践力向上にも役立ち、新しいビジネスが生まれて生活が豊かになる、と言った好循環を作れるのが理想です。ここで、研究会で発表される論文の中には、産業界にとって価値のある萌芽的な研究が多く含まれます。2018年4月から開始された技報アーカイブの環境を活かし、魅力的なコンテンツを効果的に発信できればと思います。
 最後になりますが、今後とも、通信ソサイエティの活動・運営にご支援・ご協力の程、どうぞよろしくお願い申し上げます。