就任挨拶:
通信ソサイエティ会長就任にあたって

守倉 正博 会長


Junji NAMIKI

 


 このたび,通信ソサイエティの会長に就任しました守倉です。電子情報通信学会は2017年に創立100周年と言う大きな節目を迎えますが,これから1年間よろしくお願いします。通信ソサイエティは当学会の中でも最大のソサイエティであり,これからの学会の発展を担う組織と考えております。短い期間ではありますが与えられた職責を全うしたいと考えています。
 当学会ではいろいろな方から最近の会員数減少(過去5年間で約5,000人が減少)や赤字の財務体質(2012年度以来赤字体質)について報告されています。このような状況で学会活動を活性化させ,日本の技術力を高める議論が種々行われています。この課題について適切な処方箋を示すことは困難ではあると思いますが,議論の素材となる私見を述べたいと思います。
 日本の強い分野は,技術として世代を重ね改良を図り,装置やシステムの性能を向上させる点にあると思いますし,着実に先輩から後輩へ人材育成が行われていると思います。その一方,従来技術の延長上ではなく,新しくパラダイムシフトした技術を生み出す力が不足しているように思えてなりません。これまでの常識にとらわれず,複数の技術分野横断的な要素を組み合わせ,そこから新たな技術分野を確立するような活動です。今までになかった技術の組み合わせから生み出される技術は,既存概念の上に構築された学問分野とは異なり複合的な分野になるのではないかと思います。そのようなパラダイムシフトを生む人材育成が大学や企業,学会で重要だと思います。
 日本の人口が減少し,日本の電機産業界が世界の激しい競争の中で製品の選択と集中により研究者や技術者が減少する傾向において,当学会の会員数が減少するのは止むを得ないという意見があります。その一方,情報通信技術は従来のサービス領域を越えて,世の中の様々なサービスや製品に適用されることが期待できるという意見もあります。後者の場合,当学会の会員企業以外の異業種だがその企業の製品にICT技術を組み込みたいと考える技術者・研究者を当学会に加入していただくことを考えなければなりません。昨年度篠原会長が行った企業に対するアンケート調査では,異業種ではあるがICTを活用する企業の方々の約半数は当学会で扱う研究内容に関心を持っています。これらの異業種の方々がICT技術に関して情報を取得するにあたり,インターネットや技術情報誌等から情報を得ているというアンケート調査結果です。これらの方々を当学会に参加していただくためにも,異業種分野でICTを具体的に適用する場合の課題設定を当学会の会員も加わって議論し,創造的な技術革新を行い,新分野を開拓する必要があると思います。そのためにも,古くから言われている次の学会の役割が重要です。(1)研究者が集まり情報交換をする場(human network)を提供,(2)研究者への最新技術の情報提供,(3)peer reviewによる品質の高い論文誌の発行,(4)将来技術への提言や社会問題の解決。
 ICT分野に業務を広げつつある異業種の研究者たちを当学会に参加してもらうためにも,高品質でわかりやすい技術情報を当学会が提供することが重要です。また異分野間でのイノベーションを起こすためにも,異なる技術的背景を有する研究者が互いに交わり,その輪を拡げていくhuman networkの重要性が増しているように思えます。当学会が現会員からなる内部だけでなく外部からも大きく期待され,異業種の分野からも入会を希望されるような学会にしていきたいと思っています。この1年間よろしくお願いします。