MVE賞について

MVE研究会では2007年6月より、各回の研究会で発表された発表論文からベストペーパーを選出し、「M V E 賞」を贈呈することになりました。

MVE賞に選出された方々には、研究会での表彰をはじめとし、HCG賞へのご推薦や論文特集号投稿へのご推薦など様々な特典が用意されております。

皆様におかれましては、今までにも増しての研究会への積極的なご投稿をよろしくお願い申し上げます。

MVE賞の概要

この賞は、MVE研究会で発表された研究の中から内容、発表等が優秀なものを表彰することにより、研究会活動の活性化を図ることを目的とします。

原則として毎回の研究会発表から10件あたり1件程度を選びます。候補の選出は当該研究会の会場で講演を聴講した者に制限し、幹事団が合議により授賞講演を決定します。

受賞者には後日委員会名で通知を送付します。また発表のあった翌月以降の研究会会場で表彰式を行います。

受賞者(発表者)には表彰状の授与と、表彰式を行う月の研究会へ招くとともに、懇親会に無料で招待します。

MVE賞の授賞論文は、毎年度末にHCG傘下の各研究専門委員会が選出するHCG賞の候補とします。

なお、MVE賞は9月1日〜翌8月末を年度としています。

MVE賞選奨規定(2018年1月改正版)

2024年度受賞者

講演番号:MVE2023-37
題目:ウインドサーフィン競技における人の揺れ・傾き感覚の周波数特性を考慮した身体感覚再現プレイヤーの筐体制御手法の提案(1月研究会)
著者:今井良太・後藤充裕・江崎健司・瀬下仁志(NTT)
本研究では、ウインドサーフィン選手の海上での用具操作を追体験可能とする身体感覚再現プレイヤーの筐体制御手法を提案しています。アクチュエータ可動範囲の制約により搭乗者に提示できる傾きが限定され、十分に追体験が促せないことを研究課題とされました。そこで、プレイヤー制御データの周波数特性に着目し、可動範囲に応じた適切なデータ加工により、搭乗時の体感を損なわない筐体制御手法を提案しています。11名の実験参加者による評価実験や2名のプロ・トップアマ選手によるケーススタディを実施し、従来手法よりも提案手法が体感を損なわない筐体制御が可能であることを確認しています。このように、研究の背景、目的が明確であり、設定された課題の解決法および実証実験まで正確に実施されています。特に、実寸大のウィンドサーフィンシステムを構築した点や、プロ選手との連携、そして情報工学の観点からオリンピックを共に目指している熱意は、高く評価できます。以上より、MVE賞へ推薦いたします。

講演番号:MVE2023-32
題目:ゆったりとした衣服を着用した人物の姿勢推定 〜 HFRカメラと複数LEDを用いた学習データ作成 〜(10月研究会)
著者:山口貴善・三上 弾(工学院大)・松村聖司・西條直樹・柏野牧夫(NTT)
本研究は未踏領域であるゆったりとした衣服を着用した人物の2 次元関節位置の推定を目的とし、その最初のステップとして、ゆったりとした衣服を着用した被験者の関節位置の真値をオペレータの手作業でのアノテーションによって取得可能にする手法を提案しています。具体的には被験者の関節位置に複数の高速で点滅する発光ダイオード(LED)を関節に装着し、その上に光を十分に透過するゆったりとした衣服を着用することで、服の内側で発光して透過するLEDライト光をハイスピードカメラで撮影しています。これにより、ゆったりとした衣服の存在下でも正しくLED 位置を認識し、安定して関節位置をアノテーション出来ることを複数オペレータによる実験で確認しています。その結果、ゆったりした衣服着用時の関節位置推定に向けた学習データセットおよび学習モデルを構築可能となっています。本手法により著者らが目指しているスノー ボード選手の姿勢推定はもちろん、ゆったりとした衣服を着用した一般生活者の姿勢推定精度の改善にも応用が可能で影響範囲が広く、実用的観点からも高く評価できます。本研究の成果により、姿勢推定を行っている既存事業者や利用者の人的・時間的コストが削減できる未来も見えてきますので、本研究の益々の発展を期待しましてMVE賞に推薦いたします。

講演番号:MVE2023-20
題目:大規模言語モデルを用いた評価グリッド法に基づくインタビュー対話システム(9月研究会)
著者:宮嶋大輔・張 帆・杉本匡史・佐々木香暖・北野泰成(関西学院大)・橋本 翔(西南学院大/関西学院大)・長田典子(関西学院大)
本研究は、評価グリッド法のためのインタビュー対話を構成するための新しいシステムの提案を行っています。評価グリッド法はユーザニーズを構造的に把握するためのよい手法ですが、そのためのインタビューを適切に行い、解析を行うには、これまでは経験者が時間的な負担をしていく必要がありました。それに対して、本研究では、生成AI対話型モデルを利用して、インタビュー内でラダリングを適切に行える方法を示している。そこから得られた評価項目のクラスタリングと概念抽出の方法も示し、実験によってこれがシステムとして機能することを確認しています。このような研究成果が、ユーザニーズを聞き取っていくためのフレームワークを効率化していく大きな原動力となることを高く評価し、MVE賞として推薦します。

2023年度受賞者

講演番号:MVE2023-11
題目:パニック防止のための心理学的実験におけるVRの活用(6月研究会)
著者:福井桃子・濱田健夫・ハウタサーリ アリ(東大)
本研究は、列車内のパニック防止を目的とした心理学実験の環境設定として活用するVR空間の設計について提案しています。近年、走行中の列車内におけるテロ行為が増加しており、本研究が実用化されることで列車内のパニックによる被害の減少が期待できることから、社会的意義の大きな研究です。本研究では著者の経験を活用し、列車内のドア、エージェント、アナウンスといった要素を現実に近い形で実装しています。実験では、作成したVR空間による体験が没入感の面で有効であることを示唆しています。本研究はまさにこれからという段階であり、さらなる発展が大いに期待されることから、MVE賞に推薦いたします。

講演番号:MVE2022-120
題目:日常的なアルツハイマー病治療を目指した低ストレス光刺激デバイスの開発(3月研究会)
著者: 山岡裕希・ペルスキア エルナンデス モニカ・磯山直也・内山英昭・清川 清(奈良先端大)・森本 壮(阪大)
本研究は、日常的なアルツハイマー病治療のための光刺激を提示するグラス型デバイスを提案しています。本研究で提案するデバイスは、ながら作業を可能とする視野の確保、見かけ上の定常光を利用した低ストレスな光刺激の提示を特徴としており、治療継続性への期待が高く、社会的意義の大きい研究です。実験では、提案デバイスの光特性評価とフリッカ強度評価を行い、提案デバイスの有効性を示しています。今後は実際のアルツハイマー患者を対象とした臨床実験を目指しており、実用化やさらなる発展が大いに期待されることから、MVE賞に推薦いたします。

講演番号:MVE2022-118
題目:超鏡空中像におけるポインティング手法に関する基礎検討(3月研究会)
著者: 巻口誉宗・佐野文香・松元崇裕・望月理香・山本隆二(NTT)
本研究は、鏡像空間と実空間を連続的に映像が移動する超鏡空中像という概念を提案し、超鏡空中像における独自のインタラクションを設計し、実空間と鏡像空間におけるポインティングの精度比較を行っています。鏡像空間と実空間で像がシームレスに移動するための光学系はシンプルかつ妥当であり、物理的な指と虚像の指の両方を利用したインタラクションは独自性の高いものです。超鏡空中像の概念を体験できるコンテンツも実装しており、完成度の面でも優れた研究です。実験では、様々な奥行きに結像した空中像をポインティングするタスクにおいて、奥行き方向の精度とタスク実行時間を指標とし、実空間と鏡像空間におけるポインティングの差異を考察しています。当日の研究会でも活発な議論が行われ、多くの関心を集めた発表の一つでした。今後の発展も十分に期待できるため、本研究をMVE賞へ推薦します。

講演番号:MVE2022-97
題目:骨格情報の再帰的短時間主成分分析に基づくバドミントン選手の反応時間推定法(3月研究会)
著者: 佐川加奈・宍戸英彦・吹田真士・北原 格(筑波大)
対戦型のスポーツの解析では,一方の選手の動作に対する他方の選手のリアクションを分析する必要があります.そのため個々の記録を競う競技と比較して課題は複雑・困難という傾向があります.本研究は,バドミントンを対象として,ヒット時刻と反応時刻というリアクション情報を,動作情報に基づいて推定する手法を提案しています.バドミントンの競技特性から実ニーズが高く,またリアクションという定量化が困難な対象を取り扱うというとても良い課題設定になっています.現状ではモーションキャプチャにより取得された3次元骨格情報に基づいた取り組みですが,今後,映像に基づく骨格情報へ適用され,実際の試合での分析が可能になっていくとより幅広い展開が見込めると思います.大変魅力的な研究で,今後の更なる展開が期待できることから本研究をMVE賞に推薦いたします.

講演番号:MVE2022-70
題目:VR システムとモーションキャプチャを用いた野球の緩急をつけた配球に対する打撃フォームの予備調査(3月研究会)
著者: 亀山康成(県横)・進藤真人(NTT)・小川諒太郎・近藤大輝・黒住実可(県横)・青木良輔(NTT)
本研究は、VRシステムとモーションキャプチャを用いて、野球の打撃フォームを分析した事例を報告しています。具体的には、緩急をつけた配球に対して崩れがちな打撃のフォームに関し、スイングの最大速度、最大スイング速度時の垂直荷重比率、スイング時の骨盤と肩の捻転角度の時系列変化、バットの回転角度の時系列変化をモーションキャプチャからデータとして取得、分析し、詳細に考察しています。インサイドアウトと呼ばれる理想的なスイングからの乖離の確認に加え、下半身の崩れではなく上半身の捻転動作の早まりというスイング事例をデータの根拠をもって発見しています。このように、本研究は、分析自体が具体的で有用性が高い上に、通説ではなく根拠を持ってスポーツフォームを分析するデータ駆動型の分析事例を紹介しており、今後、緩急時の打撃フォームに限定しない様々なスポーツフォームの分析への発展が期待されます。以上により、MVE賞に推薦いたします。

講演番号:MVE2022-67
題目:心拍数を基準とした微細な色環境刺激がVRゲームの没入感に与える影響(3月研究会)
著者: 宮崎匠海(工学院大)・巻幡優花・市野順子・井出将弘(東京都市大)・淺野裕俊(工学院大)
本研究は、VR環境においてユーザが意識、自覚しにくい潜在的な視覚刺激によりVRゲーム中の没入感への影響を生理と心理の両面から検証してます。本研究で検証した視覚刺激はVR上での一人称視点でのシューティングゲーム中に、ユーザの心拍数に応じてゲーム背景色の濃淡を切り替えています。そして、この刺激提示を実施した際の鼻部皮膚温度や心電図、脳波といった生理指標や主観アンケート(VRSQ)による心理指標の変化を35名の実験参加者により調査しました。その結果、提案する視覚刺激により生理的には没入感を高めることを確認できた一方で、心理的には没入感へ影響を及ぼすまで作用しなかったことを確認しました.こうした潜在的刺激はVR環境におけるユーザ体験の制御への活用が期待できることから、MVE賞に推薦いたします。

講演番号:MVE2022-59
題目:嗅覚刺激と鼻腔外電気刺激によるVR空間内の進路誘導効果(3月研究会)
著者: 松井彩里・青山一真・雨宮智浩・葛岡英明・鳴海拓志(東大)
本研究は、HCI分野で注目されてはいるものの応用研究事例が少ない多感覚情報提示技術のうち、鼻腔内化学感覚提示技術の新しい実装例として、化学物質による嗅覚刺激と鼻腔外からの電気刺激による鼻腔内化学感覚提示手法を応用したインタフェースを提示したものです。本研究では鼻部の左右から鼻腔内化学感覚を提示するシステムを構築、メタバース内での進路方向の誘導など実用的な場面での活用を想定し、VR空間内の分かれ道で被験者を刺激提示側に誘導できるかどうかを検証し、感覚提示システムによる痛みの軽減が課題であるものの、その有効性を示し、また、VR 空間への注意の引きつけや没入感に寄与する可能性を示唆しました。本研究は学術的に興味深いだけでなく、数少ない多感覚情報提示技術の応用事例であり、今後の実用化やさらなる発展が大いに期待されることから、MVE賞に推薦いたします。

講演番号:MVE2022-37
題目:天然・合成香料のための感性指標の構築と好ましさとの関係性に基づく個人の類型化(1月研究会)
著者:村上柚香・都賀美有紀・長田典子(関西学院大)・綿村 豪・三瓶和也(ノルコーポレーション)・寺本圭吾(アスカクリエート)
人が香りをどのように捉えているかを知ることは科学的にも産業的にも重要ですが、そのためには汎用的な感性指標が必要です。本研究では、天然香料と合成香料の感性指標を構築することを目的として、まず香りの専門家により代表的な香料と評価語を選定し、さらに香料特性・感覚知覚・印象・感情の4つの尺度を作成しています。また、選定した香料と評価語を用いて非専門家による評価を行い、感性指標の背景因子を明らかにし、香りと個人が感じる好ましさの相関を数種類に類型化しています。全体として、本研究は目的が明確で極めて網羅的な調査がなされており、有用性の高い知見が得られています。当日の発表も明快で活発な質疑が行われました。完成度が高く、今後のさらなる発展も期待できることから、本研究をMVE賞に推薦いたします。

講演番号:MVE2022-42
題目:介護職員の現実と仮想を媒介するメディアとしてのデザインプロセス -多忙な現場職員のワークショップ体験に関する事例分析- (10月研究会)
著者:井原雅行・徳永弘子(理研)・村上宏樹(白川病院)・猿渡進平(理研/白川病院)・竹下一樹(白川病院)・古賀昭彦・行平 崇(理研/帝京大)・久野真矢(理研/県立広島大)
本研究は、ワークショップ等に参加する介護職員のデザインプロセス体験に関し、職員の心理とデザインプロセス設計の観点から事例分析を行うことで、より主体的に参加しやすいワークショップ設計およびデザインプロセスの方法論化に取り組んでいます。業務効率化施策の検討には現場職員が関わる参加型デザインの共創プロジェクトが有効と考えられており、それには職員が主体性を持って参加するかどうかが大きなポイントとなります。そこで本研究では日々の本来業務を行う時空間を実世界、共創ワークショップに参加する等の本来業務とは別で活動する時空間を仮想世界と見立て、これらの二つの世界の行き来を媒介するメディアとしてサービスデザインのプロセスを位置付けています。本研究は学術的に興味深いだけでなく、実際の問題解決に役立つこと、今後の実用化やさらなる発展が大いに期待されることから、MVE賞に推薦いたします。

講演番号:MVE2022-29
題目:相撲映像からの骨格推定に基づく決まり手分類 (10月研究会)
著者:宇津呂雄生・宍戸英彦・亀田能成(筑波大)
本研究は、相撲における決まり手の分類手法を提案しています。実験ではOpenPoseを用いて相撲の取組映像から抽出した力士の骨格情報について特徴量ベクトルを時系列順に並べ、力士の土俵上の座標と合わせて時系列データとしています。得られた時系列データをLSTMで学習することによって出現頻度上位4つの決まり手の推論について有意な正解率を達成しています。本研究は学術的に興味深いだけでなく、AIによる実況中継などのサービス提供といった、今後の実用化やさらなる発展が大いに期待されることから、MVE賞に推薦いたします。

講演番号:MVE2022-13
題目:Presentation Slide Assessment System using Visual and Semantic Segmentation Features (9月研究会)
著者:Shengzhou Yi(UTokyo)・Junichiro Matsugami(Rubato)・Toshihiko Yamasaki(UTokyo)
本研究では、PPTXによるプレゼンテーションスライドの視覚的および構造的な質を評価するための、機械学習ベースの手法が提案されています。実際に初心者が作成したスライドと、それらに対する有識者レビューの結果によって得られたデータセットから、スライドの質の評価項目となる10のチェックポイントを抽出しています。本提案手法は、先行研究が抱えるユーザーのタスクおよびアプリケーション上の制約を克服しつつ、それに匹敵する予測精度を示しています。このような、対象分野の発展における性能面での寄与に加えて、ユーザーデータに基づいてプレゼンテーションスライドのデザインスペースを明確化する課題解決アプローチと、プレゼンテーションスライドに限らず今後の広い応用が期待できる点から、本研究の将来性が伺えました。このため、MVE賞に推薦いたします。

2022年度受賞者

講演番号:MVE2022-03
題目:卓上直立空中像を4方向に提示する光学系における迷光低減手法の検討(6月研究会)
著者:武縄瑞基(東大)・福嶋政期(九大)・矢作優知・菊池知世・苗村 健(東大)
本研究では,4名の作業者がそれぞれの視点から鮮明な空中像を観察可能な新しい空中像提示システムの構成法を提案しています.複数の作業者に対してそれぞれの視点から観察できる空中像を提示するシステムは,これまでにない柔軟な作業環境を実現するため注目を集めています.しかしながら,空中像提示システムで頻用される再帰透過光学素子を用いた従来手法では,迷光と呼ばれる不要な光が目立ち映像品質が低下する問題がありました.本研究では,偏光板と視界制御フィルムを用いて迷光を大幅に抑制する巧妙な仕組みを提案し,さらに関与するパラメータの制約を考慮して実際に効果的なシステムを試作しています.従来手法に比べて優れたユーザ体験を実現しており,今後の発展が大いに期待できるため,MVE賞に推薦いたします.

講演番号:MVE2021-95
題目:腱電気刺激と視覚的斜面提示が及ぼす地面の傾斜感覚への効果 (3月研究会)
著者:高橋 希実・雨宮 智浩・松本 啓吾・鳴海 拓志・葛岡 英明・廣瀬 通孝・青山 一真(東大)
本研究では、HMDで斜面映像を見ているユーザの足首の腱に電気刺激を提示することで、角度調節可能なプラットフォームに立って映像を見た際の主観的な地面の傾斜感覚と等価な傾斜角度を再現する実験を行っています。実験の結果、HMDで見ている斜面の傾斜方向と同側の足首の腱に電気刺激を提示することで主観的な地面の傾斜感覚が強まることを明らかにしています。VR体験中のユーザの主観的な地面の傾斜感覚を電気刺激によって制御できるとの知見はこれまでにないもので、没入感の高いVR体験を実現する上で新しい可能性を切り拓いたものであり、今後の発展にも大いに期待できることから、MVE賞に推薦いたします。

講演番号:MVE2021-88
題目:オンラインコミュニケーションにおける立体音響を活用した満足感・納得感向上の検討 (3月研究会)
著者:内田 聡一郎・後藤 充裕・瀬下 仁志(NTT)
本研究は、オンラインコミュニケーションにおける満足感や納得感の低い状態の解消に向けて、話者の内面において対話相手の存在感や対話相手との距離感といった主観的な感覚を形成させる立体音響の活用方法を提案しています。対面でのコミュニケーションにおける空間のあり方から調査・検討を行い、Webサイト形式のオンライン展示会を題材としたWebアプリケーションをデザインするとともに、当該アプリケーションを前提としたWeb Audio APIによる立体音響に関する基礎実験を実施しています。本提案は、オンラインの特性を活かして対面コミュニケーションの本質的な価値を提供する試みで、対面環境の忠実な再現に拘る従来手法とは一線を画すものであり、その課題発見的なアプローチと立体音響を活用する手法は、ウェブのみならずXRシフトの時代においても将来性の観点において高く評価できます。よってMVE賞に推薦いたします。

講演番号:MVE2021-72
題目:Hype Live:生体情報によるVRライブの一体感向上を目的とした感覚フィードバックシステム
(3月研究会)
著者:阿部 将士・秋吉 拓斗・澤邊 太志(奈良先端大)
本研究は、VR空間上での音楽ライブにおける一体感向上を目的に、ユーザの生体情報に基づいた各種感覚への刺激により、観客同士の反応を共有するHype Liveのコンセプト提案とプロトタイプシステムの実装・評価を行なっています。HypeLiveは,従来アプローチのようにユーザ周囲のノンプレイヤキャラクタ(NPC)観客の動きを制御し一体感を高めるのではなく、NPC観客がユーザの各種感覚刺激に働き掛けることで、ユーザが感じる一体感を高めようとする点が極めて興味深く、評価できます。また、ライブにおける観客同士のぶつかり合い行為であるモッシュに着目し、触覚フィードバックにより表現するプロトタイプシステムにより、実際に一体感向上が図れるかを検証した点も高く評価できます。NPC観客からの刺激制御や複数ユーザへの対応など、今後の発展も大いに期待できるため、MVE賞に推薦いたします。

講演番号:MVE2021-65
題目:ツンデレインタラクション - 受け手の支配的・服従的な性格の違いと作業意欲の関係の調査 -
(3月研究会)
著者:田井中 渓志・淺田 樹生・山内 翔太郎・児玉 哲哉・川瀬 寛也・澤邊 太志・神原 誠之(奈良先端大)
本研究では、作業意欲向上のための行動変容が目指されており、行動変容を促す手法として、罪と報酬を組み合わせて与えるオペラント条件付けに着目されています。オペラント条件付けを、人間関係において好意的な態度と冷たい態度の両方の性質を持つツンデレに当てはめ、ツンデレを特徴として持つエージェントがユーザとインタラクションする手法が提案されています。今回の発表では、被験者の性格を支配的・服従的に分けて評価実験を行い、提案手法が効果的に働く対象者について調査が行われています。調査の結果、提案手法は支配的な性格が弱い人ほど作業意欲の向上に効果があることが確認されました。研究会での発表では、非常に議論が盛り上がりました。その議論の内容から、本研究の将来性が大いにあることがうかがえ、今後の発展を期待できるものであることからMVE賞に推薦します。

講演番号:MVE2021-34
題目:周辺視野のみに情報提示するディスプレイシステム(1月研究会)
著者:喜多山 湧也・磯山 直也・内山 英昭(奈良先端大)・酒田 信親(龍谷大)・清川 清(奈良先端大)
本研究は、他者の存在を感じさせ、共感を喚起させることを目的に、人の周辺視野領域のみに視覚情報を提示するディスプレイシステムを新たに実装し、そこに他者のシルエットを表示する手法を提案した。中心視野領域にディスプレイを置かず、あえて周辺視領域のみにディスプレイを設置するという着眼点が極めて興味深く、評価できます。また、本研究の目的である共感の評価において、実践的なコンテンツを利用するとともに、主観指標に加え、多様な客観指標を駆使して本手法の有効性を明らかした点も高く評価できます。ハードウェアの軽量化などシステムが改善されることで、今後の発展も大いに期待できるため、MVE 賞に推薦いたします。

講演番号:MVE2021-26
題目:エッジデバイスを用いたリアルタイムな安全経路探索と可視化の検討(10月研究会)
著者:原 豪紀・斎藤 英雄(慶大)
本研究は、街中での犯罪遭遇を回避することを目的に、空間の安全性評価、安全経路探索、 経路の可視化を行うARシミュレータを実装し、そこから得られた知見と問題点を報告して います。犯罪者を想定した危険人物を仮想空間上で行動させ、仮想の街のどこの道路に危 険があるのかを可視化しています。犯罪遭遇を回避する目的以外にも、感染症感染者との 接触回避等にも活用が期待される上、このシミュレータの体験を通じて、市民の意識変容、 行動変容を促す効果も期待され、将来の実用に向けた多様な議論を促進する将来性も有用 性も高い研究と考えられます。以上により、今後の発展が大いに期待されることから、MVE賞に推薦いたします。

講演番号:MVE2021-24
題目:ヒューマン・コミュニケーション研究における社会的有用性評価 〜 新規技術の社会的有用性を評価する研究報告ガイドライン 〜(9月研究会)
著者:西村 歩(慶大)・塚常 健太(都立大)・新井田 統(KDDI総合研究所)
本研究は、ヒューマンコミュニケーション研究において疎かにされがちな、新技術の社会的有用性を評価する方法を提案しています。これは、非営利組織運営の分野で幅広く用いられている「社会的インパクト評価」を参考に、事業の設計図である「ロジックモデル」を制作し、インプットから長期のアウトカムまでの各項目について測定指標を決定しインパクト評価を行うものです。具体例を交えて評価の方法論を明快に示しており、多くの研究者にとって有益な研究であると考えられます。本研究は、工学に偏りがちなヒューマンコミュニケーション研究に社会科学の観点を導入する上で道標となりえるインパクトの大きな研究であると考えられ、今後の発展が大いに期待されることから、MVE賞に推薦いたします。

講演番号:MVE2021-23
題目:減災対策の実践的な知識や体験が日常生活の中で得られる情報提示システムの検討(9月研究会)
著者:飯田 千香子・宇於崎 月香・鈴木 陽登美・谷 菜々子・辻田 喜琉・江崎 航矢・武川 直樹(東京電機大)・青木 良輔(NTT)
本研究は、日常生活において減災対策の知識・体験が受動的に得られる情報提示システムの実現を目的として、システムコンセプトを提案しています。これまでの減災対策に関する知識・体験を人々が得られるような取り組みは、人々の能動的な参加を前提としており、接触機会が限定的でした。本研究では、減災対策に消極的な人の行動特性や心理学・脳科学に基づく記憶の定着方法などを調査したうえで、包括的な減災対策の知識・体験について日常生活の中での受動的な習得等を実践するためのシステムを具体的に提案しており、アプローチの有効性および今後のさらなる発展が大いに期待されることから、MVE賞に推薦いたします。

2021年度受賞者

講演番号:MVE2021-02
題目:可視光通信プロジェクタの高画質化のための光源制御による輝度補正(6月研究会)
著者:覚井 優希・亀井 郁夫・高木 健・韓 燦教・福嶋 政期・苗村 健(東大)
本研究は、映像の中に不可視の情報を埋め込んで提示する可視光通信プロジェクタの高画質化手法を提案しています。一般に、可視光通信プロジェクタは、映像と情報を時分割で表示するため、情報量が増えるほど画質が劣化します。これに対して、提案手法では画素単位での制御に加えて、光源を点滅させることでさらに精緻な輝度制御を可能にしており、同じ情報量を埋め込んだ際のコントラスト比を改善できることを実験で示しています。本研究は、従来手法の限界を打破する優れた着想に基づいて実際にその効果を試作機を用いて示しており、今後のさらなる発展が大いに期待されることから、MVE賞に推薦いたします。

講演番号:MVE2020-43
題目:Twitterにおける商業施設フォロワーの嗜好解析とテキスト推薦(3月研究会)
著者:山田 万太郎・汪 雪テイ・山崎 俊彦(東大)
本研究は、Twitter における商業施設フォロワーのフォロー特性といいね特性を解析することで、その嗜好を明らかにすることを試みています。実験では、16種類の商業施設のアカウントを対象として解析を行い、フォロワー特性及びいいね特性の両者において、商業施設ごとに異なる特徴が示されることを確認しています。さらに、フォロワーのいいねツイートデータを用いて、フォロワー志向のワード推薦を行う手法を提案しています。これにより、いいね数を元にしたより精度の高いワードのランキングと推薦が可能になることが期待されます。本研究は学術的に興味深いだけでなく、実際の商業施設と共同で進めており、今後の実用化やさらなる発展が大いに期待されることから、MVE賞に推薦いたします。

講演番号:MVE2020-30
題目:Phantact:実世界におけるプロテウス効果生起システムの提案(1月研究会)
著者:鹿内 裕介・磯山 直也・酒田 信親・清川 清(奈良先端大)
本研究は、拡張現実環境において三人称視点からのアバターを変更することによってユー ザーの心理や行動の変容を引き起こすシステムを提案しており、その影響を一人称視点か らの映像と比較している。身体に応じて心理や行動が変容することを検証する試みは、 バーチャル環境において数多く行われており、顕著な成果を挙げているが、本研究では、 360°カメラとスタビライザーを活用することで、三人称視点からの拡張現実感システム においてもこれを検証することを可能としている。アバターの身体に応じて心理や行動の 変化が生じることは、実環境とサイバー環境を融合した今後の社会設計においても重要な 知見となると考えられるため、更なる研究の発展を期待してMVE賞に推薦いたします。

講演番号:MVE2020-22
題目:防火意識向上のための環境認識に基づくAR火災シミュレータ(10月研究会)
著者:叢 熙・磯山 直也・酒田 信親・清川 清(奈良先端大)
AR技術を用いて、日々生活している空間における火災を視覚的に擬似体験することが可能 なシミュレータを提案しています。これにより、安全に、かつ現実感を持って防火意識を 向上させられることが期待できます。本研究の貢献として、空間を構成する物体の幾何情 報だけではなく材質の燃えやすさを考慮することで、より臨場感のある炎の拡散を模擬し たことが挙げられます。材質の認識にはセマンティックセグメンテーションによる物体認 識と領域分割を応用し、物体を表現する高粒度な3次元点群への材質情報の付与が可能になっ ており、技術的な信頼性が認められます。評価実験は、まだ予備的なものですが、消防士 からの意見も得ていて、改善点の分析も改良の計画も妥当に行われています。音響や熱な どの他のモダリティの追加による拡張も検討されており、今後の多様な発展と社会貢献 も期待できるため、MVE賞に推薦いたします。

講演番号:MVE2020-18
題目:Neural Style Featureを用いた感性モデルに基づく質感表現(9月研究会)
著者:寸田 菜月・谷 伊織(関西学院大), 飛谷 謙介(長崎県立大), 竹本 敦・谿 雄祐・長田 典子(関西学院大), 森田 修史(クチュールデジタル)
本研究は衣服の柄を対象とし、感性的質感の定量化とスタイル特徴量を抽出、感性的質感とスタイル特徴量との相関モデルを生成し、このモデルから利用者が希望する感性的質感を持つテクスチャを自動生成しています。広い規模での柄の収集・柄の感性的質感の定量化・スタイル特徴量の抽出・相関モデル生成等、網羅的に実施している点、実用的観点で企業と上手く連携されている点、衣服の柄以外の他分野へも応用が可能で影響範囲が広い点などが高く評価出来ます。本研究の成果により、専門知識のない利用者でもオリジナル衣装をデザイン出来たり、既存事業者や利用者の人的・時間的コストが削減できる未来も見えてきますので、本研究の益々の発展を期待しましてMVE賞に推薦いたします。

2020年度受賞者

講演番号:MVE2020-2
題目:単一の再帰透過光学素子による空中像の奥行き反転を解消する光学系(6月研究会)
著者:松村 俊輝,阪口 紗季,苗村 健(東大)
本研究は、三次元物体を光源として物理的に正しく空中に像を結像させることを目的に、単一の再帰透過光学素子(RT plate)と2枚の鏡を組み合わせた三角形の光学系を提案し、空中像の飛び出し距離や輝度変化,視域の特性を検証しています。従来の再帰透過光学系の問題であった奥行き反転の発生を、単一のRT plateに2枚の鏡を加えるというアイデアで解決するという本提案は、シンプルな装置構成での空中像提示を実現し、実空間上でのインタラクションシステムの可能性拡大に寄与する点が高く評価出来ます。今後の本提案に基づくインタラクションシステムの考案や、空中像の輝度低下抑制や視域の改良を期待しましてMVE賞に推薦いたします。

講演番号:MVE2019-85
題目:ヒヤリハット事例の仮想立ち合いにおける注視点を用いた安心感評価(3月研究会)
著者:大西 衝,宍戸 英彦,北原 格,亀田能成(筑波大学)
本研究では、VRを用いた交通シミュレーション上のヒヤリハット事例に基づく車と歩行者の振る舞いについて、歩行者と異なる第三者視点からみた交通状況の変化に伴う安全性の主観的評価(安心感)の変化を検証しています。歩行者視点からみた安心感の検証に偏る中で、第三者視点からみた安心感の検証を実施し、第三者視点での交通状況の認知と安心感の間の関係性の一例を示唆したことは高く評価できます。本発表の検証をきっかけに、異なる視点に応じた交通状況の安全性に関する認知の違いや、歩行者の周辺にいる人々の歩行者の危険通知の可能性など、ヒヤリハット事例の減少につながる新たな知見につながることを期待しましてMVE賞に推薦いたします。

講演番号:MVE2019-69
題目:心像性に基づく画像キャプショニングの検討(3月研究会)
著者:梅村和紀・カストナー マーク アウレル・井手一郎・川西康友・平山高嗣(名大)・道満恵介(中京大)・出口大輔・村瀬 洋(名大)
本研究では、文の心像性に基づく画像キャプショニング手法を提案し、評価実験によって画像キャプションデータセットの拡張の有効性と提案手法による画像キャプショニング実現の可能性を示しています。これまではキャプショニングの正確性や詳細性が議論の中心であった同分野において、ユーザの多様なニーズに対応するために自動生成するキャプションのバリエーションを増やすという実用化における重要な観点を提示した点で本研究を高く評価できます。また、キャプションから画像内容を想像する際の想像のしやすさである心像性という概念も興味深く、今後のさらなる提案手法の深化も期待しましてMVE賞に推薦いたします。

講演番号:MVE2019-23
題目:小人が見る世界を体験する両眼立体視システム(10月研究会)
著者:伊藤 遼・宮下 令央・石川 正俊(東大)
本研究では、小人が見る両眼立体視映像の撮影を目的としたカメラ撮影システムを提案している。小人が見る世界を両眼立体視できる映像として撮影するには、両眼間距離を十分に短くする必要があるが、一般的に撮影法である左右それぞれ映像を撮影する2台のカメラを並べるシステムでは、両眼間距離を短くするには物理的に限界がある。そこで本研究では、高速に振動する鏡面球に反射するシーンを固定したカメラで撮影することで、原理的には両眼間距離が無限に短い両眼画像が撮影可能である。効果的に立体視を表現するためには物体までの距離である明視距離も短くする必要があるため、焦点調整などに課題が残るものの今後の展開が期待できる研究であるためMVE賞に推薦する。

講演番号:MVE2019-16
題目:「不便益」発想法の企業施策立案への活用における一考察(8月研究会)
著者:野坂泰生(博報堂)・川上浩司(京大)・百瀬正光(博報堂)・秋山 崇(ユーピー)・小北麻記子(玉川大)
本研究は、主にプロダクトデザインの分野で活用が試みられている「不便益」の 概念を、企業施策の立案に活かすため方法に関して検討したものである。プロダ クトデザインにおける不便-益関係を再検討し、企業施策における不便-益関係を 表した不便益マトリクスを構築することで、既存の施策群における不便益構造の 発見や、今後の企業施策への応用の可能性などを示唆している。検討した企業施 策の事例数が少ないものの、今後事例を追加していくことで、より適用範囲が広 い不便益マトリクスの構築が見込め、これまでにない企業施策の発見などが期待 される。以上から、本研究をMVE賞へ推薦する。

講演番号:MVE2019-13
題目:不動産間取り図から主観的に感じる魅力度と間取り要素の関連解析(8月研究会)
著者:楢原 太郎(ニュージャージー工科大)・汪 雪婷・山崎 俊彦(東大)
本研究は、間取り図面の部屋の繋がりをグラフ構造化し、人の主観的な印象に寄 与する間取りの特徴をグラフの特徴から考察したものである。部屋の領域を抽出 し、各部屋の繋がりをグラフ構造化した。間取りに対しての印象は、クラウド ソーシングにより6項目の評価値に落とし込んだ。多次元尺度構成法を用いてグ ラフ同士の類似度を可視化して因果関係を考察した。結果として、水回りが離れ るグラフ構造が好まれる傾向や、現代風であると感じる間取りをグラフの特徴か ら説明しうることが示唆された。少数の間取りデータであることや、グラフ化で きていない印象因子がある可能性は否定できないが、間取りをグラフ構造化する 流れは新しく、かつ合理的な一歩である。当日の研究会でも多くの議論がわき起 こり、今後の発展も十分に期待できると考えられる。以上より、本研究をMVE賞 へ推薦する。

2019年度受賞者

講演番号:MVE2018-66
題目:奥行き方向へ高速に移動する空中像を提示する光学系(3月研究会)
著者:大里 柚衣・小泉 直也(電通大)
本研究では、空間拡張現実における空中像の提示方法に関して、奥行き 方向への高速移動を実現する独自の手法が提案されている。空中像の光 源となるディスプレイ、および、光源の虚像を提示する鏡の各傾斜角を モータで回転制御するアプローチにより、従来法よりも空中像の高速な 移動を実現した点が高く評価できる。さらに、ディスプレイおよび鏡の 傾斜角の制御のみで空中像を移動できるため、従来法よりも小型の光学 設計で実装できる点も併せて評価できる。空中像の輝度、提示位置の精 度、移動範囲についてさらなる検討が必要であるが、より多様性のある 空中像提示の実現という観点から、今後の発展が期待できる研究である。 以上より、本研究をMVE賞に推薦する。

講演番号:MVE2018-47
題目:多人数講義における講師分身エージェントを用いたコミュニケーションの促進(1月研究会)
著者:北岸 佑樹・田中 友樹・米澤 朋子(関西大)
本発表では、一人対多人数コミュニケーションにおける講師-受講生間の 個別コミュニケーションの支援を目的として、影と移動軌跡の描画によ る視覚定位と移動する足音音源による音源定位で表現される講師分身エー ジェントを提案しています。実験の設計や評価軸に関して議論の余地は ありますが、プレゼンテーションや質疑応答での様子から、発表者は現 状の実装方法に問題があること、実用に向けて改良すべき点を理解して おり、今後のさらなる検討に期待がもてます。エージェントの存在感の みでも会話の声が小さくなる等、今回の実験で得られた知見は興味深く、 今後より適切な実験条件で実験を行う際の評価の方針や今後の研究の方 向性を考える上での重要なデータが得られていると思います。また、移 動音源のデバイスを持ち込んでデモを実施しながらの議論にも積極的で、 メディア体験を通じて研究議論を深められたと思います。今回は、講師- 受講生間のコミュニケーション支援をターゲットとしていますが、保育 施設や介護現場等、一人対多人数の他のコミュニケーションシーンへの 応用も期待し、MVE賞に推薦します。

講演番号:MVE2018-27
題目:タッチ操作拡張によるディジタル紙芝居システムの開発と評価(10月研究会)
著者:村田 真隆・牛田 啓太・陳 キュウ(工学院大)
本研究では,紙芝居の作成および上演をディジタル化した環境下で実現するシ ステムを開発し,小学校の低・中学年に実際に使用してもらった上で,操作の 容易性や,作成されたコンテンツの多様性を議論しています.従来のような紙 で作成・上映する紙芝居との比較や,作成・上演に係る機能に関する検討など, 今後も検討すべき課題は見られるものの,手軽に効果的なディジタルコンテン ツを作成する手法の提案という観点から,今後のシステムの発展を期待し,本 研究をMVE賞に推薦します.

講演番号:MVE2018-18
題目:CNNを用いたマルチモーダル処理によるテレビ広告動画の影響予測(9月研究会)
著者:中村遵介(東大)・河原達也(ビデオリサーチ)・山崎俊彦(東大)
著者らは本発表で,テレビ広告(CM)映像に含まれる視聴覚情報及び付随する メタデータ,さらには出演者に関する関連情報を統合的に解析し,反響を予測 する手法を提案しました.広告製作時に事前に反響を予測できることが期待さ れる点で実応用も十分視野に入った研究であると考えます.特に,画像特徴の みを用いた著者らの先行研究と比較して大幅に性能が向上し,映像解析に周辺 情報を用いることの有効性を示した点でも評価できます.一方,現状では,動 画像中の動きや,映像の時系列性やストーリ内容については無視されており, 今後さらに高度な手法に発展することへの期待も込めて,MVE賞に推薦します.

2018年度受賞者

講演番号:MVE2018-1
題目:手遊びのハンドジェスチャを用いた3Dモデル操作手法(6月研究会)
著者:辻 天斗・牛田 啓太・陳 キュウ(工学院大)
本研究では,左右の手によって非拘束で仮想空間上の3Dモデルをリアルタイムに操作する手法を提案している. この手法は,左右の手の組み合わせを動物などの形に見立てて影絵として投影して動かす影絵遊びから着想を得ている. 実装システムでは,3Dモデルを読み込み,手指とモデルの骨格を対応付けてさまざまなモデルに対して動きを設定でき, 例えば,ヤドカリのモデルのハサミの開閉や,鳥のモデルの羽ばたきなどが表現できる.提案手法は, 影絵遊びに着想を得ていることから,利用者の手にグローブやセンサを付けることなく,かつ, 子供でもできる簡単な手の動きで利用できるという特徴がある.技術が利用者に与える制約と得られる価値,体 験のバランスがうまく設計された技術と言え,メディアエクスペリエンスの観点から大変興味深い研究事例であり, MVE賞に価する成果である.
講演番号:MVE2017-71
題目:場所に関連した単語の音声提示による偶発的語彙学習手法 (3月研究会)
著者:濱田健夫(東大)・福嶋政期(JST/産総研)・ハウタサーリ アリ(東大)
言語習得の初期段階での語彙習得という実践的な問題に対し、日常的に 繰り返し歩く道という物理的な空間と言語の語彙空間を対応付けること で学習の促進を図っている。特に従来の言語-言語間のマッピングでは なく、実物と言語を直接的に対応づけようとしている点や、それをVR技 術を使って無理なく実装している点は高く評価できる。以上より、本研 究をMVE賞に推薦する。
講演番号:MVE2017-104
題目:睡眠誘導のための渦輪を用いた頬触覚インタフェース『PomPoco Sleeper』の製作(3月研究会)
著者:佐藤優花・上岡玲子(九大)
本研究では,睡眠という社会問題に対し,空気砲の渦輪を頬に当てる非接触型触覚 インタフェース『PomPoco Sleeper』を製作し,眠気の誘発による良質な睡眠を目指 している.特に寝具以外での触覚刺激による取り組みは,あまり例がなく,試作機 において安定した渦輪を生成する工夫や,睡眠環境への実現可能性も検証している 点は高く評価できる.眠気に対する科学的な効果検証という点では,改善の余地が あり,PSGなどの医療検査での効果検証が必要となってくるが,着眼点および今後の 発展性のある研究課題であり,MVE賞に値する成果である.
講演番号:MVE2017-105
題目:Laugh Log −テキスタイルセンサを用いた腹巻き型笑いログシステムの提案− (3月研究会)
著者:島崎郁花・上岡玲子(九大)
本研究では,圧力を計測可能なテキスタイルセンサを内蔵した腹巻き型圧力計測シス テムを試作し,日常で装着した状態で笑いを検出,記録することを提案している.ま ず,本論文では日常の中での笑い検出を行う為,日常を想定した笑いシーンを設定し 計測実験を行っている.その計測結果を用いて深層学習による機械学習で笑いの検出 を試みている.さらに笑いログを実現する機械学習に適した学習データの検討を行い, その精度を比較している.とくに生活シーンとして,買い物,料理,ボードゲーム, 食事などの6つのシナリオを設定して,実際に延べ20時間のデータを収集し,笑い 区間の検出を行った.認識率や実験手法などまだ改善の余地があるが,着眼点にすぐ れ様々な発展性のある研究課題であり,MVE賞に値する成果である.
講演番号:MVE2017-62
題目:可視光通信プロジェクタの高画質化・高効率化を実現する符号化方式 (1月研究会)
著者:荒見篤郎・平木剛史(東大)・福嶋政期(JST)・苗村 健(東大)
本研究では,空間分割型可視光通信(PVLC)において,通信に使うプロジェクタの 映像品質を維持しつつ,画素単位に情報を効果的に埋め込むための新しい方法を 提案している.まず,各画素の輝度値と最大データ伝送量の間に存在するトレー ドオフから伝送の理論的上限値を示し,それに基づいて,高画質化法と伝送量を 高める高効率化法について述べている.さらに,これらの手法を踏まえて,混信 による伝送誤りを低減する高安定化手法を提案している.実際にプロジェクタに 提案手法を適用し,実験でも理論限界値に到達できることを示している.PVLCに ついて,単により大きい伝送量を実現するだけでなく,理論と実用の両面から優 れた成果を上げていることは特筆に値し,MVE賞に値する成果である.
講演番号:MVE2017-29
題目:実環境運動計測に向けた着衣型ウェアラブル伝播筋電センサの一検討 (10月研究会)
著者:青木良輔・伊勢崎隆司・新島有信・渡部智樹(NTT)
着衣型ウェアラブル筋電センサには,体動などによる電極と肌との接地状態の変 化に弱いという問題がある.本研究は,計測対象の筋の直上ではない位置で計測 された表面筋電(伝播筋電)から,運動学特性や筋電の伝播特性に基づいて計測 対象の筋活動を推定する技術について提案している.検証実験では,咀嚼・歩行 の基本動作を対象に,咀嚼筋・下腿部の主要な筋を,帽子型・ソックス型の着衣 型ウェアラブル伝播筋電センサから推定できる可能性を示した.推定精度および 適用条件などについて検討項目はまだ多いが,そのアプローチの特性から,適用 範囲を大きく広げられる可能性を秘めており,将来性は高い.今後の益々の研究 進展に期待しつつ,本研究をMVE賞に推薦する.
講演番号:MVE2017-14
題目:プレゼンテーションスライドの特徴抽出と印象予測 (9月研究会)
著者:大山真司・山崎俊彦・相澤清晴(東京大学)
プレゼンテーションスライドのよい作成方法についての指南書等は存在するが, 現在でも,実際に作成したプレゼンテーションスライドの良否を調べたり,まし てその数値化指標を得ることは容易にはできない.本研究は,よいスライドを識 別できる方法を学習ベースで実現している.検証実験では,画像特徴や単語特徴 を用いることで,スライドの分かりやすさを認識できることを示した. 本稿の発表は,1枚スライドに対する取り組みにとどまっているので,プレゼン テーション特有の時間的遷移に対応できていないところはまだ大いに研究の余地 がある.その一方で,提案手法は,そのアプローチの特性から,適用範囲を広げ られる可能性を秘めており,将来性は高い.今後の益々の研究進展に期待しつつ, 本研究をMVE賞に推薦する.

2017年度受賞者

講演番号:MVE2017-6
題目:実写VRのための複数全天周動画の合成手法に関する基礎検討(6月研究会)
著者:水口直哉・青木大樹・鳴海拓志・谷川智洋・廣瀬通孝(東大)
本研究では,異なる視点で取られた2つの全天周動画を合成する際の視点の違いを補正する手法を提案している。従来のVR向けのシーン合成手法にはSfMによる三次元再構成や複数視点画像からの任意視点画像合成などの手法があるがそれぞれ特徴点が少ないシーンに対応できない、画像が不自然なものになりやすい、などの問題があった。これに対し、提案手法では全天周画像を用いることで三次元再構成なしに、かつ、複数画像の合成なしにVR空間を生成することを検討している。従来手法の問題点の根本的な解決を目指した新しいアプローチである点、および、提案手法が用いる視点位置補正モデルの妥当性から、VR空間の生成に対する新たな展開が期待される。以上の理由により本研究をMVE賞に推薦する.
講演番号:MVE2016-76
題目:TMR高精度磁気トラッキングによる広域空間における3次元位置の計測手法の提案と評価(3月研究会)
著者:森本龍之助・田野俊一・橋山智訓(電通大)・岩田満(都立産技高専)
VRにおけるモーショントラッキング技術の代表格の一つ,磁気式トラッキングに革新をもたらす可能性が期待される研究である. 磁気式トラッキングは,人体によるオクルージョンが発生しないなどの優れた特徴を持つが,コイルやホール素子を用いる従来方式は高精度化,計測範囲拡大,小型化を両立させるにあたって一定の制約が存在した. 本研究では,トンネル磁気抵抗効果(TMR: Tunnel Magneto Resistance Effect)素子を利用した磁気センサをモーショントラッキングへ導入することにより,その高感度・広ダイナミックレンジ特性を活かしてセンサのみならず磁場基地局(発生源)を小型化・モジュール化し,分散配置を行うことによって高精度化と計測範囲拡大の両立を図る方式を提案している. 提案原理に基づいてシステムを試作・評価しており,アイデアおよび将来期待される実用性が高く評価される.以上より,本研究をMVE賞に推薦する.
講演番号:MVE2016-66
題目:肋骨骨折時の疑似振動提示を行う胸骨圧迫シミュレータの研究 - 圧迫部位学習手法の提案 -(3月研究会)
著者:山本拓弥・柳田康幸(名城大)
マルチーモーダルインタラクション分野における運動学習に貢献する可能性が期待される研究である. 胸骨圧迫(心臓マッサージ)が適切に行えていない,特に適切な位置で圧迫していても,力のかける方向が運動中にズレていくという問題に対し,本研究では,視聴覚フィードバックだけでなく触覚フィードバックを加えた胸骨圧迫学習装置を提案し,解決に取り組んだ. この装置の特徴は,肋骨を骨折させてしまう方向に力がかかった場合に,骨折させてしまった骨の位置の方向から骨折時に類似した振動と音でフィードバックすることで,圧迫部位のズレの学習を促すというものである. その特徴の効果は,提案装置の試作・検証により評価されており,アイデアおよび将来期待される実用性が高く評価される. 以上より,本研究をMVE賞に推薦する.
講演番号:MVE2016-42
題目:FunCushion:プッシュ入力と発光出力機能を有するクッション型インタフェース(1月研究会)
著者:池田昂平(東大)・小泉直也(電通大)・苗村健(東大)
本論文は,クッションなど布製の柔軟物体上に自然な入力インタフェースを実現するためのアイコンディスプレイ手法と入力センシング技術について新しいアイデアを提案し,丁寧な実験を通じてシステム設計をして実装している. 入出力のどちらかを提案するものが多い中で,両方を統合して備えたデバイスとして成立させるアイデアと工夫,さらに丁寧なシステムデザインはMVE賞にふさわしい.
講演番号:MVE2016-15
題目:反射型光センサを使用した没入型HMD装着時に利用可能な表情認識技術の提案(10月研究会)
著者:鈴木克洋・中村文彦・正井克俊・伊藤勇太・杉浦裕太・杉本麻樹(慶大)
HMD装着時には外部より装着者の表情を認識することは困難なため,HMD内に設置した反射型光センサから得られるデータから推定するシステムを提案している.これは,HMD装着時における多者間のコミュニケーションにおいて,従来では困難であった表情情報の伝達を可能とするものである.HMD内に装着可能な基盤を試作し,機械学習に基づく表情認識の精度を定量的に評価しており,実利用も期待できる.以上の理由により,本研究をMVE賞に推薦する.

2016年度受賞者

講演番号:MVE2016-8
題目:タスク処理行動に関するライフログを用いたタスク成否予測の基礎的検討(7月研究会)
著者:三田涼介・竹内俊貴・谷川智洋・鳴海拓志・廣瀬通孝(東大)
タスクの適切な管理は多くの人に関わる重要な課題であるが,これまで「定番ツール」と言えるような普及した解決策はなかった.本研究は,実際のタスク処理に関するライフログを解析し,機械学習を用いてタスクが締め切りまでに完了するかを予測することにより,効果的なタスク管理ツールの構築を目指すものである.学術的なアプローチにとどまらず,ライフログの実データが取得可能で,機能等の修正が随時可能なタスク管理サービスプラットフォームを用いている点が研究の将来性を期待でき,実際にタスク管理に関する知見が得られている点が評価できる.以上より,本研究をMVE賞に推薦する.
講演番号:MVE2016-4
題目:SNS投稿写真の画像内容に基づく地域間の類似度算出に関する検討(6月研究会)
著者:滝本広樹・川西康友・井手一郎・平山高嗣(名大)・道満恵介(中京大)・出口大輔・村瀬洋(名大)
本研究では,SNSへ投稿された写真の画像内容に基づいて地域間の類似度を算出する手法の検討結果について述べている.未だに訪れたことがない地域の雰囲気を旅行計画者が把握することは難しいが,既に雰囲気を知っている地域とコンテキストが似ていることが分かれば,知らない地域の雰囲気を想像できる.そこで本研究では,地域間の類似度を算出するために,各地点で撮影されたSNS投稿写真の内容を分析し,その特徴を大勢の人の興味対象に基づいた地域の雰囲気を表すものとして利用することで,旅行計画者に未知の地域の雰囲気の把握を手助けする仕組みの検討を行っている.このSNS投稿写真から撮影場所の雰囲気を推定する手法の着眼点が評価できるものである.以上より,本研究をMVE賞に推薦する.
講演番号:MVE2015-65
題目:磁性シートの磁力制御に基づく積層させた複数紙面への同時描画システム(3月研究会)
著者:塙克樹・橋田朋子(早大)
本研究では,磁力により印字や消去が可能な積層したリライタブルシートに濃淡のある同時描画システムを構築するための基礎実験を行っている.筆者らは磁力を制御することで任意の複数紙面に同時に印字できるシステムを試作し,磁束密度に対する磁性シートの特性を明らかにするため2種類の基礎実験を行い,磁束密度の制御により色濃淡や描画枚数の関係を制御可能であることを示した.現時点では萌芽研究のため用途が明確化されておらず,基礎実験にとどまっているが,柔軟性のある積層シートに同時に描画することや濃淡が変えることができれば様々な応用が考えられ今後の研究の大きな発展が期待できるため萌芽的研究として優れている.以上の理由により本研究をMVE賞に推薦する.
講演番号:MVE2015-62
題目:電気刺激を用いたバーチャル食感提示手法に関する一検討(3月研究会)
著者:新島有信・小川剛史(東大)
本研究では,電気刺激を咀嚼筋に提示することにより様々な食感をユーザに提示するシステムの提案とその基礎的評価実験を行っている.EMGセンサを用いた食感計測システムにより様々食材の食感を電気信号の最大振幅値とパルス幅によってパラメータ化し,それを医療用電気刺激装置を用いてユーザに提示するシステムを構築している.また,このアプローチの有効性を被験者実験により評価している.システムの評価が被験者1名という問題はあるものの,バーチャルな食感を与えるというシステムの着眼点は大きな新規性と今後の発展が期待できるものであり,ユーザに新たな経験を与えるメディアの研究として評価できるものである.以上より,本研究をMVE賞に推薦する.
講演番号:MVE2015-58
題目:視線による描画動作を用いた個人認証手法に関する一検討(3月研究会)
著者:向井寛人・小川剛史(東大)
視線による描画動作は,その動作を行っている様子を外から観察することが難しく,個人認証の新しい一方式となりうる力を秘めている.視線で描画を行うという全く新しい作業をユーザに要求することが技術的関門となるが,基礎的な実験によって,その見通しについても議論がしっかり成されている.このような,新しいHI技術で社会をよりよくしていく取り組みを,本研究会として高く評価する.
講演番号:MVE2015-25
題目:力覚提示によるストリートダンス訓練システムの提案と開発(9月研究会)
著者:川崎太雅・赤羽克仁・長谷川晶一・佐藤 誠(東工大)
本研究では,ワイヤ駆動型の力学提示装置を用いて身振りの訓練を行うシステムを提案している.従来のシステムは視覚による訓練情報の提示が主であったのに対し,本研究では発表者らがこれまでに構築してきた力覚提示システムを拡張し全身への提示を行うために必要なシステムを設計している.現時点では縮小スケールでの実験に 留まっているが,学提示による教示により人の体験を拡張させ人の能力向上を実現するものであり,今後の研究の大きな発展が期待できる.以上の理由により本研究をMVE賞に推薦する.

 

2015年度受賞者

講演番号:MVE2015-9
題目:性別印象操作による男性間の遠隔コミュニケーションにおけるソーシャルタッチの効果向上手法に関する研究(7月研究会)
著者:鈴木啓太(東大)・横山正典(NTT)・木下由貴(東大)・望月崇由・山田智広(NTT)・櫻井翔・鳴海拓志・谷川智洋・廣瀬通孝(東大)
本研究では、遠隔地の状況を正確に伝えることを目指すテレプレゼンスシステムと比べ,伝送情報を拡張することを特徴とし、これを利用した対面を超える遠隔コミュニケーションのあり方を検討している。従来のテレプレゼンスシステムの概念を拡張するものであり、今後の発展を期待させるものである.以上より,本研究をMVE賞に推薦する。
講演番号:MVE2015-3
題目:可視光通信プロジェクタを用いた映像上における群ロボット制御の基礎検討(6月研究会)
著者:平木剛史・高橋一成・福島政期・苗村健(東大)
本研究ではARにおける基本的な問題の一つである,仮想空間と実空間の位置合わせの問題に対して,不可視情報を平面に投影する装置と,それを読み取って行動する群ロボットの組み合わせによる解決を提案している.空間への不可視情報の埋め込みそのものは近年では良く知られた方法であるが,タンジブル・メディアである群ロボット自身にそれを読み取る機能を実装することで,人間にシステムの存在を意識させないシンプルな構成となっている点は高く評価できる.また実装したシステムの輝度特性や空間分解能についてもしっかりとした精度評価がなされており,タンジブル・メディア の一つの形として,今後の発展を期待させるものである.以上より, 本研究をMVE賞に推薦する.
講演番号:MVE2014-116
題目:空気玉触覚インタフェース『Puff・Puff System』による生理状態制御のための基礎的研究(3月研究会)
著者:山口真美・上岡玲子(九大)
本研究ではオフィスワークにおける眠気や集中力低下状態の緩和を目的とし,空気砲の原理を利用してユーザへの働きかけるインタフェースを 提案している.触覚刺激に敏感であると知られる頬に空気玉をあてるというアイディアは周囲に影響を与えずに個人にのみ働きかけるという意味で優れているだけでなく,空気玉の速さや衝撃をコントロールすることにより,ユーザへの多様な働きかけができる可能 性があり興味深い.これらの多様な可能性や,より複雑な作業に対する反応などについてはさらなる調査が待たれる面があるものの,報告にある実験の中でも特に空気玉を放つ間隔の違いが引き起こす効果の違いなどの結果は示唆に富んでおり,この基礎的なデータは関連する後続の研究に大きく資するものであると考えられる.以上より, 本研究をMVE賞 に推薦する.
講演番号:MVE2014-99
題目:文書特徴と音声特徴を用いたプレゼンテーションの印象推定(3月研究会)
著者:山崎俊彦・福島悠介(東大)・徐 建鋒・酒澤茂之(KDDI研)
本研究ではTED・フプレゼンテーションデータを対象に,そのプレゼンテーションの印象推定を行う手法を提案している.プレゼンテーションの発話文からword2vecによって得られる内容特徴と,内容に左右されない構文特徴,さらにプレゼンターの音声の高低や強弱からなる音声特徴を入力とし,informativeやconfusingなどのような印象をクラス識別により推定している.プレゼンテーション動画についてはまだ分析対象とはされていないものの,マルチメディアを用いた印象推定の手法はMVE関連研究の新たな研究アプローチとして斬新であり,また,プレゼンテーションだけでなく他のアプリケーションへの発展も期待できる.以上の理由によりMVE賞に推薦する.
講演番号:MVE2014-73
題目:眼球特性と等距離制約を用いたカメラとその視野外に存在する物体の最小構成外部キャリブレーション(1月研究会)
著者:高橋康輔・三上 弾・小島 明(NTT)
スマートフォンのようなディスプレイ・カメラシステムでは、カメラの撮影範囲内にディスプレイが存在しないため、カメラとディスプレイの位置関係のキャリブレーションを行うためには鏡等の器具を用意する必要があるが、本研究は眼球の角膜球を球面鏡として用いることで、追加の装置を用いることなくキャリブレーションを可能とする方法を提案し有効性を示した。多くの不確定なパラメータが存在するが、人の眼球の平均的な大きさを用いた眼球モデルを用いることで、必要なパラメータを算出可能とした。等距離制約が満たされない場合や角膜球の半径の誤差の影響等に対応する必要があるが、これらの影響についても検討結果を示している。ユニークな着想に基づき、しっかりと分析、実装を行い、的確に説明しており、今後のより実用的な評価が期待される興味深く優秀な研究である。よって、MVE賞に推薦する。
講演番号:MVE2014-54
題目:ユーザーの心拍数を利用した恐怖情動増幅システムの構築(1月研究会)
著者:石垣弘哉・上岡玲子(九大)
デジタルコンテンツの中でも広く流通する映像コンテンツの面白さを高める手法として本研究ではバイオフィードバックと同期現象に着目し,ホラー映画を視聴中のユーザーの心拍数に合せて振動を提示する装置による引き込みの影響を検討している.被験者実験を通じて,ユーザーの心拍数に影響を与えるために高い心拍数を提示することで,コンテンツ視聴・・フ被験者の心拍数を高く保てる効果が観察されている.本研究は,今後のデジタルコンテンツの応用の在り方を考える上で,有益な研究であり,将来の発展が期待される.よって,MVE賞に推薦する.
講演番号:MVE2014-37
題目:特徴量の削減と合成に基づく体感品質に優れた画像修復(9月研究会)
著者:五十川麻理子・三上弾・小島明(NTT)
本研究は、画像中に映り込んだ意図しないオブジェクトを画像から除去し欠損部分を補う補完方法に関するもので、入力画像・映像をグレースケール空間に変換し、グレースケール空間で画像を修復し、修復後に画像を再着色することで、欠損部分を修復した画像を生成する方法を提案している.次元を下げた特徴量空間において欠損部分を補う画像を探索するため、より容易に修復に使用可能な画像片を発見することができる。本研究では、提案手法を実装し画像修復実験を行うことで、提案手法の効果と課題を示しており、内容、発表ともに優秀であった。以上により、本研究をMVE賞に推薦する。

 

2014年度受賞者

講演番号:MVE2014-11
題目: アクティブマーカを用いた注視判別システム(6月研究会)
著者: 加藤大暁・中澤篤志・西田豊明(京大)
本研究は,奥行きが異なったり位置が固定されない対象についても視線が向けられていることを安定して判別可能とすることを目的に,異なるパターンで点滅する赤外線LEDによるアクティブマーカを用いた方法を提案している.今・縺C対象が多い場合の対応方法や,コミュニケーションの文脈で使用しやすい装置形状の設計などが進めば,実空間で行われる動的な活動の中の視線の動きを効果的に観測する方法として,コミュニケーション分析などに効果を発するものと考えられる.また,このようなアプローチを引き出した課題設定も評価できる.これにより,本研究をMVE賞に推薦する.
講演番号:MVE2013-66
題目: 時空間拘束を利用した車両前照灯の路上反射位置推定(3月研究会)
著者: 小林直樹・北原 格・亀田能成・大田友一(筑波大)
道路監視カメラを利用して夜間の車両位置推定を行う研究である.前照灯の光により車両位置を推定する際,前照灯の高さが未知であるため,前照灯の像単独では正確な位置推定を行うことができない問題が存在した.本研究では,・H面による前照灯の鏡面反射光を利用し正確な位置推定を行う手法を提案しており,さらに本発表では道路標示などによる路面反射係数の相違の影響を避け・驍スめ,探索範囲を絞り込むことにより精度の高い位置推定を実現した.利用環境を考察した上で実用性の高いアイデアが提案されているとともに,実際の画像を用いた検証を通して提案手法の効果が明確に示されており,今後の実用化が期待される.以上により,本研究をMVE賞に推薦する.
講演番号:MVE2013-68
題目: 料理レシピと特許データベースからの料理オントロジーの構築(3月研究会)
著者: 土居洋子・辻田美穂・難波英嗣・竹澤寿幸(広島市大)・角谷和俊(兵庫県立大)
本研究では,料理コンテンツの解析において必要になる料理オントロジーを構築している.従来,このようなオントロジーは人手で小規模に構築された・烽フがほとんどであったが,著者らは自動的に大量の料理コンテンツを解析することで,大規模なオントロジーを構築した点で高く評価できる.その際に,厳密に記述されていることが期待される特許公開公報からエントリの上位・下位を抽出しておき,その次に,曖昧に記述されることも多い料理レシピから同義語を収集する,というデータの性質をうまく利用した手法は秀逸である.また,構築したオントロジーを一般公開している点でも高く評価でき,今後食メディアの研究分野で広く使われる情報資源となることが予想される.以上より,本研究をMVE賞に推薦する.
講演番号:MVE2013-115
題目: ユーザの仮想カメラ操作を考慮した位置姿勢補正による自由視点映像の生成(3月研究会)
著者: 大川原友樹・北原 格・亀田能成・大田友一(筑波大)
本研究では,自由視点映像視聴での体感品質向上に重要な要素のひとつである視聴インタフェースの研究に取り組んでいる.従来より,仮想カメラの位置姿勢を操作することで直感的に自由視点映像の視点を制御することが行われてきた.しかし,映像撮影技術を持た・ネい視聴者が仮想カメラ操作を行う場合,適切な構図で撮影されず,映像として見やすいものにならない可能性がある.本研究ではこの点に着目し,撮影される映像を,被写体同士の重なり,撮影対象の移動,そして,前提とする自由視点合成手法における解像度の変化までを考慮に入れ,ユーザの入力視点を見やすい仮想カメラ視点へと自動補・ウする.この映像としての見やすさに注目した仮想カメラ視点補正は高い新規性と有用性を兼ね備えたものであり,今後さらなる発展が期待される.以上より,本研究をMVE賞に推・Eする.
講演番号:MVE2013-23
題目: 可視光プロジェクタの多重化に関する基礎検討(9月研究会)
著者: 田中恭太郎・福嶋政期・苗村 健(東大)
本研究では,プロジェクタの投影光を比較的高周波に点滅させることで情報を埋め込んだ画像を投影する「可視光通信プロジェクタ」に関する技術と,複数のプロジェクタの投影画像をつなぎ合わせる「マルチプロジェクション」に関する技術を組み合わせる方法を提案している.このような技術はこれまでになく,さまざまな応用可能性を秘めた面白い挑戦である.また,本研究ではそのために必要な受光方式の比較検討を行っている.これは本技術を実現するために必須の基礎的になると考える.以上の点から,本研究をMVE賞に推薦する.

 

2013年度受賞者

講演番号: MVE2013-7
題目: ビデオチャットを用いたブレインストーミングにおける表情変形の効果(6月研究会)
著者: 中里直人・吉田成朗・櫻井 翔・鳴海拓志・谷川智洋・廣瀬通孝(東大)
本研究ではビデオチャットの対話者の容貌を笑顔に変化させブレインストーミングの能力を向上する手法を研究していた。これまでの研究では、実際のFace To Faceのコミュニケーションにより近づくことを目的とし様々な技術を導入していた。しかしながら、本論文はVR・AR技術を適用することで、実際のFace To Faceでのコミュニケーションを超えた効果的・効率的なコミュニケーションの実現の可能性を探る挑戦的な論文であり、この点を受賞理由とする。
講演番号: MVE2013-5
題目: 雑音抑圧法を用いたステレオ型自動カラオケアプリの開発(5月研究会)
著者: 武田 駿(諏訪東京理科大)・名取隆廣(東京理科大)・田邉 造(諏訪東京理科・蛛j・古川利博(東京理科大)
本研究は,ボーカル入りのステレオ楽曲から,ボーカル信号を抑圧してBGM(カラオケ用)信号を生成する手法の提案と実装に関するものである.従来手法におけるステレオ楽曲の臨場感損失という問題を解消し,高品質なステレオBGM信号の抽出を可能にした.提案手法の効果は,信号のスペクトル・ヘおよびユーザによる主観評価により確認されている.さらに,提案手法をスマートフォン上に実装して公開し,一般ユーザが手軽に利用できる形で提供している.提案された手法の有効性が高く評価されるだけでなく,開発したソフトウェアを積極的に世の中に送り出し普及に努める姿勢は,工学的な見地からも特に高く評価される.
講演番号: MVE2012-144
題目: 名札を用いた来館者の鑑賞方向センシングにおける展示物の配置間隔の影響(3月研究会)
著者: ソ ミギョン・苗村 健(東大)
来館者へのフィードバックのために非常に有効である。本研究では、UHF帯のパッシブRFIDを埋め込んだ紙メディアの名札を各来館者に首から下げてもらい、ミュージアム館内に横並びに設置した複数のアンテナで、その名札(来館者)の位置と方向に関する情報を取得する手法を開発し、性能評価を進めている。タイトル・ナは、方向センシングとしているが、位置と方向は分離できないため、アテンションをセンシングしていると言うべきであろうが、来館者側の装置コストを低く抑えつつ、リッチな情報を取得できる本手法の将来性は高く評価できる。以上のことから、本研究をMVE賞に推薦する次第である。
講演番号: MVE2012-137
題目: スポーツハイライト映像作成のためのTwitter熱狂度に基づいたイベント検出(3月研究会)
著者: 富田大志(名大)・道満恵介(中京大)・井手一郎・出口大輔・村瀬 洋(名大)
本研究では、ツイッターの投稿より、スポーツにおける“Twitter熱狂度”を算出し、これに基づきスポーツハイライト映像を作成するためのイベント検出手法を提案している。この手法では、視聴者の熱狂した瞬間に発せられる興奮を表す文字列特徴を検出に用いるために、言語やスポーツ種目に依存しないハイライト場面の抽出を可能にした。このように、スポーツだけでなく様々な状況に適用可能な本手法のスケーラビリティの高さは目を見張る。これにより、本研究をMVE賞に推薦する。
講演番号: MVE2012-53
題目: オープンスペース内における複数人・物間の偶発的インタラクションの参与者グループ認識(1月研究会)
著者: 喜住祐紀・角所 考(関西学院大)・舩冨卓哉・飯山将晃(京大)
本研究では、オープンスペースに複数人の人物や物が存在している場合に、空間の排他性を考慮して偶発的インタラクションの参与者グループを認識する試みがなされている。より現実的な状況での精度評価は今後の課題であるが、空間の意味は、人と人、さらに物と配置で動的に変化するため、それに応じてアンビエント環境やロボットを制御し・トいく必要があることを考えただけでも、本アプローチの適用範囲は広い。これは、MVE研究会で扱うべき課題の開拓にもつながる。以上のことから、本研究をMVE賞に推薦する次第である。

 

2012年度受賞者

講演番号:MVE2012-20
題目:拡張現実感を利用した物体の明度操作による重量知覚および作業疲労の 操作手法の基礎検討(6月研究会)
著者:藤井達也・伴 祐樹・井村 純・鳴海拓志・谷川智洋・廣瀬通孝(東大)
本研究は、物体の見かけを加工して提示することにより、その見かけ上の重みを操作しようとする面白い試みである。このような操作が可能になれば、実世界の様々な用途におけるインタフェースへの適用が期待され、将来性が期待される研究である。また、将来、本発表において実験がなされた明度のみではなく、他の画像特徴や形状も加工することで、多彩な提示方法の実現が期待される。以上の点から、本研究をMVE賞に推薦する次第である。
講演番号:MVE2012-6
題目:快適な飲酒を支援するコースター型飲酒検知デバイスの開発(5月研究会)
著者:植田将基・久原政彦・伊藤 誠・遠藤 守・山田雅之・宮崎慎也(中京大)
心身が健康的でいられないほどの飲酒を防ぐために、飲酒量を検知するコースター型デバイスを提案し実装した萌芽研究である。組み込み技術を用いたコースター型デバイスに飲酒量を表示することで、飲酒者自身はもとより周囲の人々にその飲酒量を的確に認識させられる。さらにスマートフォンなどを用いて、その飲酒量に応じたケアを提示することで、心身を健康な状態に保つことを提案している。これら新規性とその独特の着眼点によりMVE賞に推薦する。
講演番号:MVE2011-103
題目:電気味覚の応用による食メディア開発(3月研究会)
著者:中村裕美(明大)・宮下芳明(明大/JST)
本研究は、電気刺激により舌上に仮想的に味覚を生じさせる技術を用いて、飲食物に味を添加する方法及びその応用例を提案している。これまで、五感のうち、視覚・聴覚の再現については広く普及しており、また触覚・嗅覚についても様々な研究事例がある。しかし、味覚の再現についてはほとんど取り組まれておらず、今後本研究が発展すれば、マルチメディア・仮想環境技術の発展に及ぼす影響は大きいと思われる。また、食メディアの分野においても、新たに応用分野が広がる可能性がある。以上の点から、本研究をMVE賞に推薦する次第である。
講演番号:MVE2011-129
題目:環境変化に適応する映像投影手法“Adaptive Image Projection”に関する研究(3月研究会)
著者:渡邉 暁・橋本直己(電通大)
本研究は,映像投影用に用意された専用スクリーン以外のさまざまな投影対象に対して,環境の動的変化に対してリアルタイムに適応しながら,幾何的整合性および光学的整合性を確保しつつ映像投影を行う研究である.幾何補正,輝度補正は,これまでにそれぞれ先行研究が存在するが,多くは静的な環境を対象とした,もしくは変化への対応に時間を要するものであった.これに対し,本研究では幾何補正と輝度補正を同時に実時間で高速に(0.5秒程度以内で)行っており,動的な投影環境変化が生じる状況における有用性は大きい.本研究における手法の基本原理自体は過去に提案された手法を基礎としてはいるが,幾何補正用の形状計測にKinectを導入し,GPUを利用した高速実装を行うなどのさまざまな工夫を行い,リアルタイムシステムを構築して検証を行ったことは,システム化技術の観点で高く評価される.
講演番号:MVE2011-80
題目:無人飛 行船に搭載された2台の全方位カメラを用いた不可視領域のない全天球HDR画像の生成(1月研究会)
著者:大倉史生・神原誠之・横矢直和(奈良先端大)
本発表は、無人飛行船で空撮した動画像を、高品質なテレプレゼンス用全天球映 像コンテンツに変換するために、撮影機器の映り込み等による不可視領域や,ダ イナミックレンジ不足による白とびに関する課題について論じたものである。飛 行船の上下に搭載した全方位カメラを用いた、ハイダイナミックレンジ(HDR) 撮影、NDフィルタの利用と色補正、2台の全方位カメラ画像の位置合わせや合成 等、各技術の新規性が高いとは言えないが、今回の条件に対して効果的に各技術 を適用し、システム研究としてレベルの高いものとなっている。さらに、実際に 無人飛行船で空撮を行い不可視領域のない全天球HDR映像の生成をしているが、 そのコンテンツとしての品質はアプリケーションによってはすでに実用に耐えう るレベルであり、その点も評価できる。

 

2011年度受賞者

講演番号:MVE2011-46
題目:リンク機構を構成するリール式アクチュエータ群による動的3次元形状表・サ(10月研究会)
著者:武井祥平・飯田誠・苗村健(東京大)
本研究では、リール、具体的には金属製の巻尺を用いてコンパクトに格納できるようにしつつ、従来と比較して大幅に伸長距離を延ばした機構を提案し、様々な利用方法を検討している。本発表では、この機構を用いる際の力学的限界を測定するとともに、駆動部を移動できるようにすることで、様々な3次元形状を動的に表現できるようにしたことが報告された。リールを用いた機構という発想が斬新であるだけでなく、物理的限界もふまえたうえで、様々な応用可・\性を検討している点で評価できる。また、今後はブレーキ機能の導入により、装置全体を移動することもできるようになると考えられ、メディアアートに限らず、様々な応用への発展が期待される研究である。
講演番号:MVE2011-24
題目:頭部前面における風覚の水平角分解能の測定(6月研究会)
著者:中野拓哉・佐治翔太・柳田康幸(名城大)
嗅覚を対象としたバーチャルリアリティにおいて,匂い源の方向定位のために,香りの媒介となる風に着目し,鼻先における風覚の水平分解能に着目した研究である。計測のためのシステムを構築し・C80cm離れた位置に10度間隔で左右に60度ずつ合計13地点からの風を識別する実験を行っている。風覚のみによる判断を促すために,視覚や聴覚による手掛かりを排する工夫がよく凝らされている。頭部を固定した場合の方が,自由に動かしてよい場合に比べて高い正答率が得られている点が興味深い。これは,側面に比べて正面の方が風を感じ難いためであると考察されており,風覚の特徴をよく表している。まだまだ未開拓の分野であり,意欲的なテー・}に正攻法で臨んでいる点が高く評価される。
講演番号:MVE2011-4
題目:ソラ・カラ −太陽光を活用した発色による空間演出−(5月研究会)
著者:橋田朋子(東大)・筧 康明(慶大)・苗村 健(東大)
太陽を紫外光及び可視光の光源として用い,フォトクロミック材料と組み合わせて光・w設計を工夫することで,発色を制御して場を演出する仕組み”ソラ・カラ”を提案している大変興味深い研究である.太陽の動きや空の様子を反映した演出を行い,可視光でそれを確認できることと,発色に要する時間と消色に要する時間のバランスの取れた材料設計を行うことで,場に入ると直ちに人の影が現れ、しばらくそれが残るような演出を実現することの2つを目標として設計され,ミニチュアサイズの模型を用いた実証実験によってその高い有効性が示された.これは太陽や空といった自然環境と,その場の様子を利用して演出を行う新しい概念に基づいた情報提示手法であり,発色材料のさらなる検討や発色制御の多様化に加えて,パブリックスペース等への実装及びその評価が大いに期待される.
講演番号:MVE2010-166
題目:色盲者支援のための混同線理論に基づく認識困難領域検出(3月研究会)
著者:藤井裕士・小川剛史(東大)
日常生活において,色覚異常を持つ人にとって認識困難な色遣いを検出し,その領域を提示することにより色覚異常者に対する支援を行う研究である.提案方式では,情報発信者側に色覚異常を考慮したコンテンツ制作を強いることなく,情報受信者側での対応によって色覚異常者を支援するアプローチをとっており,情報発信者,受信者双方にとって負担が少なくなると予想される.開発されたツールは,混同色線に基づいて抽出した認識困難箇所を絞り込んで提示するものである.色めがねなど色変換を行う従来方式と比較したところ,異なる使われ方をされることが明らかになり,より広い範囲での支援が可能になると考えられる. 社会におけるニーズを的確に把握し問題の解決を試みる研究であり,今後のさらなる進展と実用化が大いに期待される.
講演番号:MVE2010-162
題目:Twitterの実況書き込みを利用したスポーツ映像の要約(3月研究会)
著者:小林尊志・野田雅文・出口大輔(名大)・高橋友和(岐阜聖徳学園大) ・井手一郎・村瀬 洋(名大)
Twitterの即時性と投稿情報数の大量さを利用し,ユーザの属性に近い集団の投稿数の推移を参考にしながら,それぞれの属性に合わせてスポーツ映像を自動的に要約して提示する興味深いシステムである.実験には例として野球中継が取り上げられ,各投稿をどちらのチームを応援しているものかに自動的に分類する手法が示され,テレビ局が制作したハ・Cライト映像との比較によって提案システムによる要約映像の有用性が示された.本手法によれば,Twitterの投稿という自動的に用意されるデータベースを基にして,ユーザごとに多種多様な好みの視点が存在するスポーツ映像を,様々な切り口で即興的に自動要約できる可能性がある点が評価できる.情報として価値の低い投稿の排除など,システムとしての品質を向上させるためには取り組むべき課題が幾つかあるとは考えられるが,今後のさらなる発展を期待したい研究である.
講演番号:MVE2010-111
題目:織物のデジタル文化財のリアルタイムかつ直接的視触覚提示システム(1月研究会)
著者:脇田 航・野村和義(立命館大)・赤羽克人(東工大)・一色正晴(愛媛大) ・田中弘美(立命館大)
上記講演では,直接触れて計測することのできない文化財を高精度にモデル化し,視覚と触覚の両面から実時間処理によって再現するシステムが提案されている.レーザレンジスキャナやマルチバンドカメラを用いた文化財の高精度モデル化手法は,従来提案された技術を具体的な対象に応用した実例として貴重な報告であり,その他多くの対象への応用も期待される。また,それらのデータに対する触覚インタラクションは,高精度なモデル化とリアルタイム処理を両立したデザインとなっており,デジタルアーカイブの新しい提示方法を提案するものであるといえる.今後は,等身大システムへの拡張や,実現された触覚情報の再現性評価等にも期待される.

 

2010年度受賞者

講演番号:MVE2010-73
題目:スマートフォンを用いた強化現実型コミュニケーションシステム(10月研究会)
著者:田中秀明・廣野大地・富澤勇介・高井昌彰(北大)・野本義弘(NTT)
本発表は、携帯端末のカメラで撮影された画像に対して特徴量抽出と高速なマッチング処理を行い、建造物や看板等の現実世界のオブジェクトにメッセージを貼り付け、モノを契機とするコミュニケーションを支援する・coイルARシステムのための技術開発に関するものである。本発表に含まれる概念や個々の技術モジュールは従来から存在するものであるが、スマートフォン、サーバ(SURF特徴量やLSHハッシュ値を用いた画像処理・検索部、データベース部)を含むプロトタイプシステムを実際に構築して動作実験を行っている点は評価できる。また、この分野は近年非常に注目されており、国際会議での非常に多くの発表がなされている。その意味においても、本研究の今後の発展が期待される。
講演番号:MVE2010-25
題目:聴覚提示を用いた靴型デバイスによる歩行リハビリ活動支援システムの提案と試作(6月研究会)
著者:久原 政彦・山本 恭大・遠藤 守・伊藤 誠(中京大)
歩行リハビリの回復進捗を患者・ヨ実時間でフィードバックするための聴覚提示システムが提案されている.提案システムは,回復進捗を定量化するための靴型デバイスと歩行評価を実時間フィードバックするための聴覚提示デバイスから構成されている.靴型デバイスは,圧力センサを靴の中敷きに配置した構成になっており,患者が普段利用する靴に容易に装着できるように工夫されている.さらに,靴型デバイスを利用することで,患者の歩行運動を無拘束で計測でき,さらにリハビリ場所を制限しなくてよい利点が得られる.また,映像ではなく音声による回復進捗の提示により,患者の注視点を奪うことなくリハビ リに専念できる環境も提供できる.以上,提案システムは,実際の歩行リハビリ活動を支援する視点からさまざまな工夫が施され点が評価でき,今後の展開が期待できる.
講演番号:MVE2010-20
題目:無数の画像群の構図に着目したモノクロ画像の自動Colorization(5月研究会)
著者:森本 悠嗣,苗村 健(東大)
モノクロ画像のカラー彩色という,ユーザによる多くの手動操作が必要とされる作業に対し,完全な自動化を実現し・ス有用性の高い手法が提案されている.提案手法では,入手が容易かつ日々更新・増加し続けるWeb上の画像群の特徴に着目し,これらの中から類似した構図,及び輝度情報を持つ参照画像の適切な選択・決定を実現している.また,彩色の過程で必要不可欠な,参照画像からの適切な色情報の転送,及び色ムラの除去に ついても,高汎用性,及び完全自動化という観点からの工夫がなされている.これら一連の手順により,モノクロ画像の自然な彩色を・ゥ動化できた点は評価に値する.今後はモノクロ動画等への応用も期待され,将来性の点も併せて評価できる.
講演番号:MVE2009-132
題目:インタラクティブなデジタル展示ケースに関する基礎的研究(3月研究会)
著者:梶波 崇・林 織部・鳴海 拓志・谷川 智洋・廣瀬 通孝(東大)
博物館・ナの独立型展示ケースの展示手法・形式を踏襲しながら,デジタル展示の特性を活かしたインタラクティブな情報提示を行う基礎的な技術を構築し,実際の博物館展示を通じて,検証・評価した興味深い研究である.両眼視差と運動視差の組み合わせによる3次元表示や,操作用オブジェクトを用いた操作インタフェースなど,技術的な観点での取り組みに加え,博物館が培ってきた展示に関するノウハウを尊重しながら,これまで・フ博物館展示では実現が難しかった展示物の背景情報を効果的に伝えるための技術要素を開発した点が高く評価できる.多人数向けへの展示など,コンテンツの提示方法も含めたさらなる研究の発展が期待できる.
講演番号:MVE2009-150
題目:FTIR テーブルによる圧力センシングのためのフレームワークの構築とアートシミュレーションへの応用(3月研究会)
著者:原 健輔(中京大)・浦 正広(名大)・山田 雅之・遠藤 守・宮崎 慎也(中京・蛛j・安田 孝美(名大)
アートシミュレーションへの応用を想定した,テーブルトップでの圧力センシングのためのフレームワークを構築した興味深い研究事例である.本フレームワークを利用して,手で表面を直接操作する「サンドアニメーション」と,器具を用いて表面を操作する「レインボーアート」という異なる性質を持ったアートシミュレーションを実現しており,フレームワークの汎用性・有効性が高い.また,従来手法と異なり,接地面の形状を保持しながらその移動を追跡しポインタとして扱えるようにしているが,そのための処理時間が十分短く・Cインタフェースとしての操作性が高い点も評価できる.他のアートシミュレーションや卓上インタフェース一般への応用など,今後も研究の発展が期待できる.
講演番号:MVE2009-113
題目:ウィンドシールドディスプレイを用いた道路鏡像提示に於ける幾何整合性と見易さの関係(1月研究会)
著者:川俣 貴也,北原 格,亀田 能成,大田 友一(筑波大)
自動車のフロントガラス上に運転支援情報を提示するためのUI研究として,興味深い実験結果を示している.従来研究では,現実世界と仮想世界を継ぎ目なく融合するために,CG映像と現実風景の幾何整合性が重視されてきた.しかし,本研究の主観評価実験では,幾何整合性を厳密に持たせるよりも,ある種のずれを認めて提示したほうが,運転支援にとっては効果的であることを示唆している.多様な運転シーンに対して有効な知見を得るには,まだ多くの課題が残されているものの,複合現実感の運転支援への応用という文脈のなかで,新しい観点を生み出した点が高く評価でき,今後の研究展開も期待される.

 

2009年度受賞者

講演番号:MVE2009-71
題目:panavi − センサ・アクチュエータ・無線通信機能を内蔵するフライパンを中心とした、
   料理スキルの習得を支援するシ・Xテム −(11月研究会)
著者:生井 みづき,瓜生 大輔,徳久 悟,柏樹 良,稲見 昌彦,奥出 直人 (慶大)
料理初心者にとって習得が困難とされる、フライパンを用いた加熱調理に着目した新しい支援システムが提案されている。専用フライパン、及びタッチパネルディスプレイからなる本システムでは、調理全体の進行状況や個別の工程の詳細、フライパンの温度変化や調理動作の指示をインタラクティブ・ノ選択・提示可能とするための工夫がなされており、これに、フライパン上への温度のプロジェクション表示、ハンドル部のLED表示色と振動パターン変化、並びに警告音を組み合わせることで、加熱調理における適切な温度管理動作への円滑な誘導が期待できる。また本システムは、瓜生らの発表「デザイン思考とxtelプラットホームを統合的に活用する「Smart Kitchen Utensil」の開発- panaviシステムの着想から製作・展示までの開発過程-」で述べられている通り、いくつかのユーザスタディにおける知見に基いて試作されていることから、有効性や実環境への親和性の点も評・ソできる。今後は、調理の楽しさの体験とスキル習得を同時に実現するシステムへの発展も期待され、将来性の点も高く評価できる。
講演番号:MVE2009-32
題目:ホームヘルスケアシステムにおける遠赤外線画像を用いた鼻呼吸検出法の検討(7月研究会)
著者:小出 泰介,山川 真悟,鈴木 慧,塙 大,小口 喜美夫(成蹊大)
在宅医療向けに,遠赤外線カメラを用いて非侵襲・遠隔観測により鼻呼吸を検・oするという興味深い取り組みである.呼気と吸気に現れる温度差に着眼することで,周囲環境にそれほど依存せず,正確に呼吸を検出できている.評価実験に際しては,カメラと顔との角度の影響についても検討しており,実用面からの考察も含んだ信頼性のある発表であった.実用化に向けては,より広範な場面を想定したさらなる評価実験や,ホームヘルスケアシステムとしての全体の設計と実装など,まだ,多くの課題が残されているが,遠赤外線カメラによる患者見守りの可能性を示した点が,高く評価できる研究であった.
講演番号:MVE2009-18
題目:匂い情報を手掛かりにしたライフログシステムにおけるイベント検出手法の基礎検討(6月研究会)
著者:ソン ヨンア(東大),筧 康明(慶大),高橋 桂太,ドロネー ジャン・ジャック,苗村 健(東大)
ライフログの検索に、匂いを手掛りとして用いるという着眼点が非常にユニークであり、将来的に発展する可能性のある研究として評価できる。本発表では、基礎的検討として、人間が主観的に感じる匂いの感覚と匂いセンサからの出力との相関について調査し、センサ出力の時間変化量との相関が高いこと、匂いセンサの種類により相関の現れる特徴が異なることを明らかにしている。匂いを扱う際は、風向や時間遅れ,人間側の刺激への慣れ等、扱いが難しい面があるが,このような基礎的な検討を積み重ねることで、今後の着実な研究の進展が期待できる発表であった。
講演番号:MVE2008-119
題目:3Dマウスのためのクラッチ機構の設計(3月研究会)
著者:一色 正晴,馬場 次郎,赤羽 克仁,佐藤 誠(東工大)
通常のマウスなどの2Dポインタでは、操作範囲を拡大するためにデバイスの物理位置とポインタ座標との連動・非連動を切り替える「クラッチ操作」が一般的に行われているが、3Dポインタでこれに相当する操作は殆ど考慮されていなかった。本研究では、直感的なクラッチ操作を3Dインタフェースで実現するためのグリップ機構を提案し、実装している。小さなギャップを介して2つの半球を組み合わせた球形グリップとして構成されており、グリップを握り込むと、2段階のスイッチ機構によりクラッチ動作とクリック動作が行える。通常のコンピュータ操作に慣れたユーザならば違和感なく操作でき、3D操作に特有な位置・姿勢の複合操作に対しても効率的な操作が可能と期待され・驍スめ、従来インタフェースとの親和性、有用性、将来性などの点で高く評価できる。
講演番号:MVE2008-103
題目:EMGUI:筋電ユーザインタフェースのための動作認識手法(1月研究会)
著者:伊藤 大司,尾関 基行,中村 裕一(京大), 櫻沢 繁,戸田 真志(はこだて未来大),秋田 純一(金沢大)
筋電を用いたユーザインタフェースにおける動作認識精度の問題に着目し、ユーザインタフェースの基本的な操作と利用者の直感的な動作を対応付けて動作認識を行うことにより、良好な認識精度を実現した点が高く評価される。また、研究の位置付けや方向性が明確であり、発表においては、エンターテイメントシステムへの適用事例を交えて、提案手法の新規性や効果が分かりやすい形で説明されていた。適用範囲について更なる検討の必要があるが、筋電インタフェースの将来性を示す発表であった。

 

2008年度受賞者

講演番号:MVE2008-68
題目:多人数会話シーン分析に向けた実時間マルチモーダルシステムの構築〜マルチモーダル
   全方位センサを用いた顔方向追跡と話者ダイアリゼーションの統合〜(11月研究会)
著者:大塚 和弘,荒木 章子,石塚 健太郎,藤本 雅清,大和 淳司(NTTコ ミュニケーション科学基礎研究所)
多人数対面会話シーンにおける「話者同定」と「参加者の注視方向推定」を実時間で行う本システムは、会議等の対話記録・解析を行う際の基盤的ツールとなるもので、コミュニケーション解析研究の発展に大きく寄与することが期待できる将来性の高い研究である。機器をコンパクトに設置可能な点、汎用的な機器で実時間処理を実現している点、評価実験により4〜8名程度の小規模な会議に適用可能であることが示されている点から、システムの完成度、有効性も高く評価できる。会議支援システムへの応用など、本システムを利用して、更に研究を発展させることを期待する。
講演番号:MVE2008-55
題目:区分・分散オフィスを仮想的に大部屋化する軽量なコミュニケーションメディア(10月研究会)
著者:西本一志(北陸先端大)
文字ベースの軽量なプロトコル/ソフトウェアにより、物理的に隔絶された作業従事者間に大部屋で作業しているような一体感を醸成することを目指しており、実用性のあ・骼タ践事例として興味深い取り組みである。仮想的な大部屋化に必要なアウェアネス情報を、意図的-非意図的、静的-動的の2軸で分類し、それぞれの情報共有を支援するという分析的なアプローチは合理的である。また、1年以上にわたる運用を通じて得られた、「ブロードキャスト的な1対1通信」という利用事例には、仮想的な大部屋化に必要な自然な情報共有の本質が現れており、システムの有効性を高く評価できる。
講演番号:MVE2008-5
題目:香りプロジェクタのための距離画像カメラを用いた軌道予測の検討(6月研究会)
著者:増田 雄一(名城大),北野 啓一(名城大/リンナイ),柳田 康幸(名城大)
従来は立ち止まっている人および着座している人に対象が限定されていた局所的香り提示技術に関して、対象を歩行者へ拡張し、歩行者のトラッキング結果を用いて香り提示装置を制御するシステムを実現した点が高く評価できる。非接触の位置検出が可能な距離画像カメラを用いて、システム全体としての非装着性が確保されており、将来、公共空間での五感広告等に応用できる可能性が期待できる。香り提示の精度向上等、まだ検討の余地は残されているものの、香り研究の新たな領域を切り拓いた点、および、新たな応用の可能性を示した点は評価に値する。よって、MVE賞の授賞に相応しい。
講演番号:MVE2007-86
題目:可視光通信プロジェクタを用いた3次元形状ディスプレイの基礎検討(3月研究会)
著者:大口 諒,谷田 英生(東大),筧 康明(JSTさきがけ),高橋 桂太,苗村 健(東大)
可視光通信プロジェクタを用いた3次元形状の表現という独自の技術提案において、ピンの駆動部に用いる形状記憶合金を分割・積層し、個々に伸張・収縮の制御を行う手法を考案した点、プロトタイプの試作により、一定の精度でピン高の階調表現を実現した点が高く評価される。ピンアレイの多数化、及・ム高密度化等については更なる検討の必要があるが、プロトタイプの簡便な実装により、3次元形状ディスプレイにおける可搬性向上の可能性が示された点も併せて高く評価される。よって、MVE賞の授賞に相応しい。
講演番号:MVE2007-80
題目:いろどりん−食卓の彩り支援システム(1月研究会)
著者:森 麻紀(お茶の水女子大),栗原 一貴(産総研),塚田 浩二(産総研),椎尾 一郎(お茶の水女子大)
日常生活に欠かせない食卓という環境に着目し、プロジェクタ、カメラ、画像処理という簡易システム構成ながら、食卓の彩りという新しい技術適用領域を切り拓いた点を評価する。プロジェクション内容の決定方法、視覚的に感じるおいしさの評価等、更なる検討の必要性はあるが、プロジェクションの内容、対・ロ等に関する多様な適用可能性を示し、今後の発展性を感じさせる発表であった。よって、MVE賞の授賞に相応しい。

 

2007年度受賞者

講演番号:MVE2007-5
題目:仮想物体の変形に対する視触覚間同時性知覚の順応(6月研究会)
著者:高橋 康介(JST),齋木 潤(京大),渡邊 克己(東大)
知覚心理学的な見地から異種感覚間の同時性知覚の順応に焦点を当て、視触覚間では視聴覚間と同様に主観的な同時点が10-20ミリ秒移動すること、聴覚とは異なり受容器間では順応の転・レが起きないこと、などを示した点が評価される。また研究の目的が明確であり新たな結果を導いていることや、発表も要を得ており明快であったことも併せて高く評価される。
講演番号:MVE2007-28
題目:ゲーム木に基づくカーリングの戦略分析(7月研究会)
著者:浦 正広(名大),山田 雅之,遠藤 守,宮・・慎也(中京大),安田 孝美,横井 茂樹(名大)
高度な戦略とショット時の難しさを要因として持つ不確定ゲーム「カーリング」を題材に、ゲーム局面とショットをそれぞれゲーム木のノード、枝と捉え、さらに、物理シミュレーションと組み合わせることで、ショットの難しさも考慮した戦略探索手法を実現した点が高く評価される。また、オリンピックの具体的事例への適用において効果も示されており、有効性、信頼性の点でも評価できる。
講演番号:MVE2007-37
題目:多重解像度ファジーグリッドスナッピング法によるファジー平面曲・・フ三次元姿勢スナッピング(10月研究会)
著者:栗田 英皇(室蘭工大),佐賀 聡人(室蘭工大)
VR環境で3次元的に手書き入力された軌跡から3次元モデリングを行うBlueGrotto システムに対して、軌跡の大きさや描画の早さに応じて適切な解像度を自動選択する MFGS法を導入することで、多様な幾何形状をもつ物体を容易に作成可能とした点が評価できる。特に、提案手法を導入したシステムでは、様々な大きさの物体を短時間に生成できており、その操作性の高さから、有効性が高く評価できる。また、発表においても、従来手法の問題点とそれに対する解決法を実例を交えて分かりやすく説明するなど、適切な説明のための工夫がなされていた。

 

※ 著者の敬称は省略させて頂いております。