設立の背景

光ファイバ一芯あたりの伝送容量の拡大は、1990 年代には電子回路の高速化、1996 年以降は波長分割多重(WDM)技術及び半導体レーザ励起光ファイバ増幅器(EDFA)の実用化に伴い、いわゆるムーアの法則(10 年で100 倍)に近似した急激な伸びを見せてまいりました。しかし、2001 年の光ファイバあたり10Tbps 伝送実験達成以来、2009 年の32Tbps伝送実験に至る8 年間では、わずか3 倍の向上に留まり、伝送容量の伸びは明らかな飽和状態を呈しております。この要因としては、信号パワーの増大に伴う非線形光学効果による信号品質の劣化、さらにはより高い挿入パワーによってファイバそのものが損傷するファイバフューズによる制限があり、今後のファイバ伝送容量拡大に向けた制限要因として大きな課題となっています。 このように、いかなる容量向上のエフォートも、伝送路への絶対的な挿入パワー限界によって制限されうると言う問題意識に基づき、2008 年1 月より、独立行政法人情報通信研究機構(NICT)の呼びかけにより「光通信インフラの飛躍的な高度化に関する研究会(EXAT 研究会)」が世界に先駆けて発足し、産学官連携での研究戦略策定、技術検討の場とし、 光パワー限界を打破し、3 桁〜5 桁の伝送容量拡大を実現しうる革新的光通信インフラ技術の検討を行ってまいりました。また、2008 年11 月には、その報告会を兼ねた国際シンポジウムEXAT2008 を開催しました。他方、諸外国においても、OFC2009においては”Capacity crunch challenge(容量危機)”と題したRump session がAlcatel-Lucent 主導で開催されたほか、ECOC2009のPlenary session においては関連する主題にて”The rise of Exaflood optics” (George Guilder)および”The coming capacity crunch” (Andrew Chraplyvy)の2件が講演され、情報通信インフラを担う光通信技術の容量限界に対する問題意識が急速に高まっています。

委員会の目的

以上掲げた3桁〜5桁の飛躍的な伝送容量拡大を実現しうる次世代の光通信インフラ構築のためには、伝送路である光ファイバの新規開発にとどまらず、これまでにはない新規の変復調技術、増幅中継技術、伝送路接続技術、スイッチング技術、ノード制御技術などを創出し、横断的に糾合することが不可欠であり、研究戦略に加え、新規技術をインキュベートし、育てる新たな検討の場が緊急に必要となっていると考えます。 これまで、上記研究会においては、限られたメンバで、現状技術の限界と今後の展望、および次世代の光通信インフラの根幹技術となり得る萌芽技術を探索し、課題の整理を行ってまいりました。今般、広く産学官の関係者の参画を呼びかけ、情報通信技術を束ねる電子情報通信学会の時限研究専門委員会として発足し、オールジャパン体制での技術分野の啓発・促進、次世代の光通信インフラを目指した研究戦略の検討に加え、新規技術のインキュベーションを目指し、幅広い議論を加速する場を提供したいと考えております。 本研究専門委員会で取り扱う技術分野は、上記のように多岐に亘り、また、個々の実現技術は、これまでの既成概念に捉われない新規技術であるため、個別の技術課題を深めていく議論と、種々様々なフェーズをバランス良く取りまとめる学際的な議論を両立させる研究会運営を目指したいと考えております。 また、このような光通信インフラの抜本的な改革は、国家的事業であると共に、今後の世界の高速通信網の要となることから、我が国の国際競争力向上の観点が不可欠であり、国際標準化などの活動も併せて奨励していく必要があるため、本研究専門委員会をその発信源としたいと考えております。

担当する研究分野

下記の技術分野の技術の啓発・インキュベーション、課題抽出、研究戦略策定、標準化戦略策定を行う。

活動期間

 2020年4月1日〜2022年3月31日(第6期)
 2018年4月1日〜2020年3月31日(第5期)
 2016年4月1日〜2018年3月31日(第4期)
 2014年4月1日〜2016年3月31日(第3期)
 2012年4月1日〜2014年3月31日(第2期)
 2010年4月1日〜2012年3月31日(第1期)


Last-modified: 2020-12-15 (火) 11:47:36