基調講演

[Keynote Talk]Breaking the Boundaries in Iris Recognition using Deep Learning Capabilities

Ajay Kumar
Department of Computing, The Hong Kong Polytechnic University

Biometrics recognition in real environment is one of the most critical and challenging task to meet the growing demand for stringent security. Automated iris recognition has emerged as one of the most accurate and reliable biometric approaches for the human recognition. The performance and generalization capabilities for currently available iris recognition algorithms needs to be significantly improved for deployment of iris recognition technologies in real or less-constrained environments and for large-scale applications. Emerging deep learning capabilities offer tremendous potential to address open problems in iris recognition. However, lack of large-scale training data or the degradation of iris image quality, particularly for the images acquired from on the move and under less constrained imaging environments, poses serious challenges in incorporating potential from emerging deep learning capabilities. This talk will discuss on such challenges and potential solutions for the development of advanced iris recognition algorithms to match iris data from the real environments. New deep learning architectures to achieve state of the art performance for the periocular recognition will also be discussed during this talk.

招待講演

FinTechの現状、将来 ~生体認証との連携を見据えて~

岩下 直行
京都大学公共政策大学院

従来、わが国の金融業界では、安全性と安定性を重視し、閉域のネットワークでセキュリティを守ることを基本としてきた。しかし、フィンテックが注目され、オープンなイノベーションの重要性が強調されるにつれて、金融関係者の間でも、時代の趨勢に合ったITに切り替える必要性が認識されるようになってきた。オープンなネットワークにおいて、セキュリティを確保するための仕組みとして、生体認証技術は大きな可能性を持っている。ただし,金融業務に必要とされる高いセキュリティを確保するためには、生体認証が内包する様々なリスクを十分に認識し、適切に対応していく必要がある。本講演では、フィンテックにかかる国内外の事例を概観するとともに、生体認証を正しく活用していくための課題を整理して解説する。


ブロックチェーンにおける生体認証応用

柏原武利
株式会社テクノグローバル

ブロックチェーン上での取引に関して、現状の認証技術では、電子署名はデバイスや、 PC、サーバー上に格納されており、盗難や漏えいのリスクがあります。我々は、個々の 指紋をベースに直接電子署名を生成するブロックチェーンとの連携技術に取り組み、 また今後、ブロックチェーン上におけるリスクが低い指紋情報の応用として、 指紋をベースに電子署名を生成し取引記録へ付与することで、ショッピング、 あるいは株や電力などのアルゴリズムトレードや、IoTデバイスによる自動取引で 必要とされるAI技術との指紋認証技術の連携応用にも取り組んでいます。

生体情報を活用した本人認証プラットフォーム事業

和田友宏
株式会社ポラリファイ【SMFGグループ】

三井住友フィナンシャルグループは生体情報を活用した本人認証プラットフォーム事業会社、(株)ポラリファイをNTTデータ、アイルランドのDaon社との3社合弁会社として本年5月に立ち上げました。(株)ポラリファイは改正銀行法下での金融庁認可第一号のFintech企業です。生体認証によって、デジタル社会でユーザーと事業者をシームレスに繋げるサービスを提供します。生体認証は「記憶に頼らない」、「キーボード不要」など利便性の高い認証方式です。ポラリファイはFido UAF方式に準拠し、①複数の、②安全で、③最新な「生体認証」でユーザーと事業者を繋ぎます。ビジネス現場での生体認証を使ったサービスの現状と未来を皆さんと共有できればと思っています。

モバイルバンキングへの生体認証の適用可能性の検討と鹿児島銀行様への導入事例

北島弘之
株式会社サザンウィッシュ/株式会社野村総合研究所

銀行におけるインターネットバンキングはスマホ普及とともに拡大しているが、それに伴い なりすましによる被害が本年度で既に30億円を越えており問題となっております。 鹿児島銀行様は、野村総合研究所のインターネットバンキング(ValueDirevt)をご利用中で あり、ネットによる窓口業務の代替を検討されております。 そのためネット上での本人認証が重要となり、スマホで可能となる生体認証の方式を調査し、 現在日本で実現可能性のある2案(掌紋、声紋)について実証実験(PoC)を行いました。 行員試行の結果、声紋認証が有効であるとの結論に至り、10月本番稼動の予定であり、 今回この概要につき紹介いたします。


行動履歴を活用したライフスタイル認証とその実証実験

山口利恵
東京大学 大学院情報理工学系研究科 ソーシャルICT研究センター

ライフスタイル認証とは、個人の行動履歴となるライフログを活用し、そこから読み取れる個人の特性から個人認証を行う技術である。このライフログを活用することによって、既存技術のように入力操作やタッチ動作がいらない等、「認証のための動作」をすることなく本人を認証することが可能となることで利便性が高まったり、従来の認証技術との組み合わせを可能とすることで、ロバストなシステム構築を可能とするなど複数の機能を持ち合わせている。今回は、今年の1月〜4月にかけて行われたライフスタイル認証の大規模実証実験について紹介する。この実証実験では、都内の商業施設(六本木ヒルズ、東京ドーム等)や協力企業の展開する既存のスマートフォン向け商用アプリ(小学館「マンガワン」、凸版印刷「Shufoo!」)と連携することで、延べ、5.7万人の被験者が参加した。


動きをとらえる高フレームレート画像処理とその応用

鏡慎吾
東北大学 大学院情報科学研究科 システム情報科学専攻

高フレームレートカメラの低価格化とコンピュータの高性能化により,高速に運動する対象の画像追跡・解析とその結果のリアルタイムフィードバックを比較的容易に応用することができるようになった.本講演では,計測応用,映像提示応用といったいくつかの応用事例とそこで用いられる基盤技術を紹介するとともに,高フレームレート画像処理のメリット・デメリット,応用による適否などについて議論する.


深層学習による画像変換について

石川博
早稲田大学理工学術院

深層学習は一般画像分類問題で大きな進歩を印象づけたが、最近ではその他の多くの問題にも応用されている。ビジョン分野では、分類のようにラベルを出力するのではなく、画像のような構造を持つ空間に出力する構造つき予測問題が研究され、セグメンテーションやステレオなどの伝統的問題における性能も、深層学習が他の手法を凌駕するようになってきた。本講演では、ビジョンとグラフィックスの境界にある、入出力とも画像である問題に、深層学習を用いてとりくんだ例をいくつか紹介する。具体的には、JST CREST数理モデリング領域で進めている研究のうち、白黒写真色づけ、ラフスケッチ線画化、および画像補完について解説する。


ASVspoof: 話者照合における生体検知

山岸順一
国立情報学研究所 コンテンツ科学研究系

音声による話者照合技術は、所望の人の声をテキストから合成する音声合成技術、他人から所望の人の声へ変換する声質変換技術により、「他人になりすませる」という脆弱性が問題となっている。このような生体の音声と詐称音声の微妙な差の識別には機械学習が有効であると期待されるが、モデルを学習し、それぞれの攻撃のリスクを定量的に評価できるコーパスは存在しなかった。それに対し我々は、音声合成技術および声質変換技術を利用することで、大規模詐称音声コーパスを世界に先駆け構築するとともに、話者照合システムの生体検知精度を競うASVspoof Challenge 2015を開催し、大盛況を収めた。本講演では、このASVspoof Challengeと現在の生体検知技術、および、現在の課題を紹介する。


自動運転のための認識技術

二宮芳樹
名古屋大学 未来社会想像機構

これまで人が行っていた運転をAIがその一部や全部を担当する自動運転が現実のものになり,半自動運転システムは既に商品化され,その次に登場する完全自動運転システムは車の在り方や産業構造の変革につながると言われている。本講演では運転の情報処理の大部分を占めると言われている視覚情報のセンシングと処理技術に焦点を当てる。完全自動運転で必要になる認識機能を示し,そのために必要なLiDAR等のアクティブなセンシング情報とパッシブな画像情報との融合,さらに認識を補完する高精度地図の役割を示す。運転に必要な予測(先読み)とそれに必要な認識技術等について,最近のトレンドであるDNNのアプローチを含めて概観する。


個人ゲノム情報の統計的解析とプライバシ保護

佐久間淳
筑波大学システム情報系 / 理化学研究所 革新知能統合研究センター

近年の分子生物学の発展により、大規模SNP解析のコストは劇的に減少し、個人の体質に合わせた効果的な予防医療・先制医療が広く普及すると予想されている。近い将来、研究者のみならず、医療業務従事者や患者自身が個人ゲノムに触れる機会をもつことになると予想されるが、その一方で個人ゲノムは「究極の個人情報」とも呼ばれ取扱に注意を要するセンシティブな情報である。講演では、個人ゲノムの医療応用と医学研究の統計的解析において、個人ゲノム利用のプライバシー上のリスクを議論し、秘密計算や差分プライバシーなどに基づく、個人ゲノムを用いた統計的解析におけるプライバシー保護について紹介する。


バイオメトリクスと個人情報保護制度 ー改正個人情報保護法とEU一般データ保護規則(GDPR)における生体情報の取扱い-

新保史生
慶應義塾大学 総合政策学部

改正個人情報保護法では、新たに「個人識別符号」の定義が追加された。文字、番号、記号その他の符号のうち、その情報「単独」で個人情報に該当するものを明記することが目的である。DNAの塩基配列や生体情報の特徴量を抽出した情報など定義に列挙されているものに限定される。欧州連合の一般データ保護規則(GDPR)もバイオメトリック・データを個人データの定義において明記している。個人情報の定義は、国内外の個人情報保護制度でその範囲が異なる。日本の法改正では当初の定義の拡充から明確化へと帰着したが、バイオメトリクスの利用と個人情報保護制度における個人情報の取扱いにあたって留意すべき問題について解説する。