会長だより
第6号(2026年6月2日配信)
会長だより 2026.6 第6号
植松 友彦
5月20日、九段会館テラスにて、本学会が新たに創設した「未来60年賞」の表彰式を開催しました。本賞は、36歳未満の若手研究者・技術者を対象に、次の60年を見据えて未来社会の発展に挑む構想や研究を広く顕彰するものです。革新的な研究開発、新たなビジネスモデルの創出、社会課題の解決につながる挑戦など、学術会と産業界の架け橋となり、未来を切り開く力を持つ提案を対象としています。
表彰式では、私の開会挨拶に続き、審査員長の天野浩先生による審査結果の報告と受賞者紹介が行われました。本年度の未来60年賞は、山崎雄大様による「脳と世界を結ぶテラヘルツBMI―低侵襲・高容量インターフェースによる未来型コミュニケーション基盤」が選ばれました。本提案は、未来を切り開く技術発展の先駆けとなる、極めて優れた研究提案として高く評価されました。また、優秀賞は井上飛鳥様による「誰もが使える光量子チッププラットフォームの実現―光が照らす持続可能な情報社会への道―」が選ばれました。先見性と社会的意義に富む研究として高く評価されています。さらに敢闘賞は、鳴海紘也様による「折紙の自動変形により大量生産可能な立体回路」が選ばれました。独創性あふれる挑戦として高い評価を受けています。受賞された皆様に心よりお祝い申し上げます。
当日は上記3賞に加え、書類審査を通過してプレゼンテーション審査に進まれた研究者を対象とした奨励賞の贈呈も行いました。奨励賞は、萩原圭島様、松浦未来様、別府翔平様、山口彪斗様、菊澤百々菜様の5名が受賞されました。あわせて心よりお祝い申し上げます。
未来60年賞の特徴は、一度の表彰で終わらない点にあります。授賞式後には、「未来60年ビジョン会議」を開催し、受賞者と第一線で活躍する研究者や企業幹部の方々が、受賞テーマについて活発な議論を行いました。さらに来年度以降は、歴代受賞者との交流の場として「未来60年賞アラムナイの集い」の開催も構想しています。こうした取り組みを通じて、世代や分野を超えた人的・知的ネットワークが育まれ、受賞者同士が互いに刺激し合いながら成長することを期待しています。
夕刻に行われた懇親会は、辻次期会長のご挨拶に続き、私の祝辞と乾杯で和やかな雰囲気の中で始まりました。会の中盤では、受賞者からショートスピーチをいただき、会場は大いに盛り上がりました。楽しく有意義なひとときを共有できたことを大変嬉しく思います。あらためまして、受賞された皆様に心よりお祝い申し上げるとともに、今後ますますのご活躍を祈念いたします。
最後に、ご多忙の中、審査にご尽力いただきました天野浩先生をはじめ、審査委員会の委員の皆様に深く感謝申し上げます。また、本賞の創設にあたり、多大なるご寄付を賜りました桑畑祐生様に、あらためて厚く御礼申し上げます。本賞が、桑畑様の志と理念を受け継ぎ、次の60年を切り開く新たな挑戦の礎となることを心より願っています。
第5号(2026年2月10日配信)
会長だより 2026.2 第5号
植松 友彦
11月26日、ANAインターコンチネンタルホテル東京にて、C&C賞の表彰式典が開催されました。本年度のC&C賞は、原昌宏様、渡部元秋様、黒部高広様、高井弘光様の4名によるQRコードチームと、Jack Joseph Dongarra先生の2組が受賞されました。QRコードチームは「QRコードの発明・実用化および世界的普及への貢献」が、またDongarra先生は「科学計算の高速化とその応用への貢献」が高く評価され、今回の受賞となりました。
式典には電子情報通信学会および情報処理学会の会長も招かれ、贈呈式では私から祝辞を述べさせていただきました。その中では、受賞対象となった分野が本会の中核をなすものであることに触れるとともに、受賞者の研究テーマにまつわるエピソードも紹介しました。
贈呈式後の晩餐会は、新野隆理事長による主催者挨拶に続き、情報処理学会長・萩谷昌己先生の祝辞と乾杯をもって、和やかな雰囲気の中で始まりました。会場では、QRコードチームの皆様と同席し、開発当時のご苦労や、ここでしか聞けない興味深い話を伺いながら、楽しいひとときを過ごすことができました。あらためて、受賞された2組の皆様に心よりお祝い申し上げるとともに、今後のさらなるご活躍をお祈りいたします。
なお、表彰式典の様子は、下記のNEC C&C財団のホームページからご覧いただけます。
https://www.candc.or.jp/kensyo/2025/ceremony.html
続いて1月20日には、高柳健次郎賞の贈呈式に参加しました。贈呈式は、本会元会長であられた末松安晴理事長のご挨拶で幕を開け、本年度の高柳健次郎賞は高畑文雄先生に授与されました。受賞業績は「直交周波数分割多重通信技術の高度化と地上ディジタル放送への貢献」です。また、高柳健次郎業績賞には、内藤整様による「テレビジョン技術の高度化に関する先駆的研究開発と実用化」、山崎俊彦先生による「魅力工学の先導的研究と研究コミュニティ構築への貢献」が選ばれました。いずれも我が国の放送・情報通信分野の発展に大きく貢献した優れた業績であり、受賞された皆様に心よりお祝い申し上げます。
贈呈式では、私から受賞者の皆様へお祝いの言葉をお伝えした後、高畑先生による受賞記念講演が行われました。講演では「ディジタル無線通信・放送技術に対する取り組み」をテーマに、長年にわたる研究と技術の歩みを振り返る、たいへん示唆に富んだお話を伺うことができました。
当日はこのほか、高柳健次郎財団が顕彰する各賞の贈呈も行われました。若手研究者を対象とした研究奨励賞は、車一宏様、岡田竜馬様、大原正裕様の3名が受賞されました。また、科学放送高柳賞では、最優秀賞に日本放送協会、優秀賞に南海放送株式会社および長野朝日放送株式会社の番組がそれぞれ選ばれました。あらためて、受賞された皆様にお祝い申し上げるとともに、今後のさらなるご活躍を期待しております。
受賞者や受賞番組の詳細につきましては、下記の高柳健次郎財団ホームページをご覧ください。
https://takayanagi.or.jp/sub/t_prize.html
写真提供:公益財団法人 高柳健次郎財団
第4号(2025年12月10日配信)
会長だより 2025.12 第4号
植松 友彦
11月6日、千葉の幕張メッセで開催された2025 PIERS (Photonics and Electromagnetics Research Symposium)の開会式に出席しました。PIERSは、電子情報通信学会が日本学術会議や電磁波工学アカデミーと共同で主催するシンポジウムで、7年ぶり4回目の日本開催となります。今回、全世界から1600名以上の参加者が集まりました。
開会式には、主催者や来賓のほかに天皇陛下にもご臨席いただき、お言葉を賜りました。天皇陛下には、水分野のご研究に触れられ、“Electromagnetic waves, like water flow and cross borders freely, connecting people across vast distances.” とお述べになり、若手研究者を励まされるお言葉も賜りました。開会式では主催者として、私のほかにも大会委員長の小林一哉先生、日本学術会議の光石衛先生、組織委員会委員長の川添雄彦氏が挨拶を行いました。また、ご来賓として内閣府副大臣の鈴木隼人氏、千葉県知事の熊谷俊人氏、千葉市長の神谷俊一氏が順に祝辞を述べ、さらに内閣総理大臣の高市早苗氏からのメッセージも司会の八木谷聡先生によって代読されました。
開会式後、別室で天皇陛下と主催者側の代表7名との非公式な懇談が行なわれました。天皇陛下は、参加者それぞれの専門分野やその分野を研究するようになったきっかけについて質問され、懇談が進む中で終了時間を迎えました。懇談後、天皇陛下を車寄せでお見送りした際、一人一人にお言葉をかけてくださったことが非常に印象的でした。
11月10日、第40回京都賞の授賞式に参加しました。授賞式は国立京都国際会館で700人の参加者を集めて開催されました。本年度の京都賞は、先端技術部門は甘利俊一博士、基礎科学部門はアジム・スラーニ博士、思想・芸術部門はキャロル・ギリガン博士にそれぞれ授与されました。授賞式のハイライトや受賞者紹介のビデオは、YouTubeの京都賞チャンネル(https://www.youtube.com/c/kyotoprize_org)から閲覧可能です。
授賞式の後、隣接するザ・プリンス京都宝ヶ池で開催された晩餐会には、300名近くが参加して、受賞者をお祝いしました。京都賞は、文化の都、京都を挙げての行事であり、京都府、京都市および裏千家の協力のもとで開催され、京都ならではの「おもてなしの心」のこもった授賞式ならびに晩餐会でした。受賞された甘利先生には、会長として晩餐会においてお祝いを申し上げました。なお、地下鉄の国際会館駅の出口には、本年の京都賞の受賞者と業績が大きなパネルで飾られていたのが印象的でした。
第3号(2025年10月9日配信)
会長だより 2025.10 第3号
植松 友彦
9月8日、ソサイエティ大会の「第0日目」にあたる日に、岡山の能楽堂ホールtenjin9で「GlobalNet Workshop(GNW)」が開催されました。このイベントは通信学会が主催する国際的な学術交流の場で、主に国内外の学生や若手研究者、特に留学生を対象に、英語でのポスター発表やネットワーキングの機会を提供しています。
今回は73件のポスター発表が行われ、発表者の半数以上が日本人ということもあり、例年以上に活発な質疑応答が交わされました。懇親会は岡山城の天守閣で開催され、100名以上の参加者で盛況な会となりました。学生の懇親会費用が無料だったおかげで、学生同士の交流も盛んに行われ、GNWの目的がしっかりと達成されたと感じています。懇親会費用を援助していただいた株式会社LabBase様に、心から感謝申し上げます。
天守閣最上階からの岡山の夕景や、日没後にライトアップされた天守閣の姿は本当に素晴らしく、参加者の心に残る素敵なGNWになったと思います。ただ、少し心残りだったのは能楽堂の舞台で記念撮影ができなかったことです。予算の問題もあり仕方がない部分もありますが、次回岡山を会場にする理由ができたと前向きに捉えています。素晴らしい会場と懇親会のセッティングをしてくださった、おかやま観光コンベンション協会にも感謝申し上げます。
次回のGNWは総合大会の「第0日目」にあたる来年3月9日に九州産業大学(福岡市)にて開催予定です。多くの皆様の研究発表と参加を期待しています。
本年度のソサイエティ大会は9月9日から12日まで岡山大学津島キャンパスにて開催されました。大会初日の午後には、企画戦略室が主催する大会企画「科学技術・イノベーションの推進に向けた日本の取り組みと電子情報通信技術への期待」が行われました。
このセッションでは、内閣府、総務省、文科省、経産省の方々に登壇していただき、科学技術政策の最新動向についてお話しいただきました。また、学会からは会長声明「第7期科学技術・イノベーション基本計画に向けての提言」を紹介しました。続いて、企画戦略室長の今井尚樹さんが司会を務め、政府から見た学会への期待、学会側から見た政府の政策、学会と政府の関係についてパネル討論を行いました。
パネル討論を通じて、政府と学会は情報通信技術について共通の目標を持っていることが確認され、今後どのように連携を深めていくかが重要であることが分かりました。
他にも多くの特別企画が同時に行われていたにも関わらず、このセッションには100名以上の方が参加され、会場もリモートも大変盛況でした。次回の総合大会でも、政府機関との連携をテーマとしたセッションを予定していますので、ぜひご期待ください。
第2号(2025年9月1日配信)
会長だより 2025.9 第2号
植松 友彦
6月11日に情報通信エンジニアリング部門発足パーティが行われ、キャリア関係者を含む多くの皆さまが集まり、部門の発足をお祝いしました。パーティは本部門幹事の岡様の司会のもと、準備委員会委員長の森川先生の開会挨拶を皮切りに、会長の私の祝辞、前会長の山中先生の乾杯が続き、しばらくの歓談の後、総務省と4大キャリアの代表の方からご挨拶をいただきました。
情報通信エンジニアリング部門とは、本学会のソサイエティと同等の組織であり、情報通信インフラの運営に関わる企業の方が、本来は競争相手となる企業とともに、共通の課題を洗い出し、その効率的な解決策を議論していくことを大きな使命としています。部門の発足を良い機会として、より多くの情報通信エンジニアリング関連の企業の皆さまに特別会員として学会にご参画いただき、ともに社会課題の解決に取り組んでいただければ幸いです。
現在、学会は3つの未来戦略を掲げています。1つ目が「グローバル化の推進」、2つ目が「ステータスの向上」、3つ目が「新しい時代に向けたサスティナブルな運営」です。この中の「ステータスの向上」に関しては、産官学連携の推進による社会課題の解決を一つの具体的な柱としており、その取り組みの一環が、この情報通信エンジニアリング部門の設立です。とりわけ、少子化や労働力不足といった社会背景のもと、今後のインフラの維持・更新は我が国にとって重要なテーマです。この部門を通じて、どのような社会課題が取り上げられ、どのような実践的な解決策が提示されていくのか、期待されるところです。
第11回プラチナクラブが、8月18日に関西支部との共催にて初めて関西で開催されました。開催にあたりご尽力いただいた関西支部の皆様に感謝申し上げます。本企画はもともと2020年秋に実施を予定していたもので、当時は準備が整っていたものの、コロナ禍の影響によって中止となった「幻の企画」でした。今回は、そのときに予定していた講演者である東京大学の河東先生と東京科学大学の山田先生にご登壇いただき、それぞれ「量子コンピュータと結び目理論との関係」、「不動点定理の最適化問題への応用」について、熱意あふれるご講演を頂きました。今回のテーマは、企業や大学への見学を中心としてきたこれまでのプラチナクラブとは異なり、「現代数学の応用と抽象の魅力」というやや専門的な内容でした。しかし、初めての大阪開催ということもあり、20名を超える多くの方にご参加いただき、盛況な会となりました。講演会後の懇親会では、「以前からプラチナクラブに参加したかったので、今回参加できて嬉しい」、「30年前に研究専門委員会でご一緒した方と再会できた」など、嬉しいお声を多数いただきました。
今年度のプラチナクラブは、9月29日に同志社大学にて開催される京都ワークショップとの共催企画の他、来年2月には東海支部でも開催を計画しています。関東地区以外にお住まいの会員の皆様も、ぜひ支部開催のプラチナクラブにご参加ください。プラチナクラブは新たな出会い、そして懐かしい再会の場になると思います。
第1号(2025年6月11日配信)
会長だより 2025.6 第1号
植松 友彦
皆さんこんにちは。2025年6月から1年間、会長を務めることになりました放送大学の植松友彦です。どうぞよろしくお願いします。
さて、6月5日に定時社員総会が行われ、前年度の事業報告や本年度の事業計画が例年どおり審議されました。あわせて、新しい理事・監事の方々も選任されました。新しく理事・監事になられた皆さんには、2030年を見据えた学会の発展、会員サービスの更なる向上に力を貸していただきたいと思っています。
総会のあとの式典では、名誉員推薦や各種表彰(功績賞、業績賞、論文賞など)に加え、今年から新たに「長期継続会員表彰」と「職員表彰」が始まりました。長期継続会員表彰とは、20年・30年・40年・50年といった節目の年数に応じて、それぞれ異なる色のピンバッジを贈呈するものです。学会への継続的なご参加・ご支援に感謝を込めた取り組みです。今後とも本学会と長くお付き合いいただければ幸いです。
また職員表彰では、特に顕著な功績を上げた事務局職員の方々に対し、その貢献を称えました。今年は3名が表彰されました。学会の円滑な運用は日々事務局で仕事をしている職員あってのことです。これからも、創意工夫をもって学会を支えて下さる職員の皆さんをしっかり応援していきたいと思います。
今年の式典のハイライトとして、パネル討論会「AIの開拓者たち:ニューラルネットワークの歩みと展望」が開催されました。ご存知の方も多いと思いますが、昨年のノーベル物理学賞は、人工ニューラルネットワークによる機械学習の研究で、ジェフリー・ヒントン先生とジョン・ホップフィールド先生に授与されました。ただ、日本にもこの分野の黎明期から活躍されてきた素晴らしい研究者がいます。それが、本学会の名誉員である甘利俊一先生と福島邦彦先生です。甘利先生は1972年に、ホップフィールドネットワークに先んじる形で、ほぼ同様のモデルを発表され、また1967年にはバックプロパゲーションに類する手法を提案されています。福島先生は、今で言うディープ・ラーニングの原型とも言える「ネオコグニトロン」を1979年に開発されました。まさに世界に先駆ける独創的な取り組みです。今回のパネル討論会には、甘利先生にご登壇いただき、基調講演をいただきました。福島先生は残念ながらご体調を崩されてご参加が叶いませんでしたが、ご回復を心よりお祈り申し上げます。討論会には、第一線で活躍される中島秀之先生、川人光男先生、上田修功先生、松尾豊先生、岡野原大輔さんの5名をパネリストにお迎えし、篠田浩一先生の進行で、1)2024年のノーベル賞になぜニューラルネットワークが選ばれたのか、2)ニューラルネットワークの技術について、3)今後の社会的課題、の3点について活発に議論が行われました。パネリストの方からはなかなか聴くことのできない本音も飛び出し、オンライン・会場ともに多くの参加者から質問も寄せられ、非常に盛り上がった時間になりました。お忙しいなか参加していただいたパネリストの皆さんに、心から感謝申し上げます。討論会の内容は、今後、会誌記事として公開予定ですので、ぜひご覧ください。

もうひとつ式典の場で発表したのが、「第7期科学技術・イノベーション基本計画に向けての提言」です。これは、政府の政策に対して、私たち学会としてももっと積極的に意見を届けるべきではないか、という問題意識から取りまとめたものです。
提言では
- 研究力の向上・人材育成
- イノベーション力の向上
- サイエンスとビジネスの近接化
- 新たなグローバリズムの推進
最後になりますが、1年間、誠心誠意会長を務めて参ります、会員の皆さんには、研究会や大会へのご参加、論文投稿、そして学会活動へのさまざまな形でのご参画を、これまで以上にお願いできれば幸いです。今後ともどうぞよろしくお願いします。