大学・大学院生の教育機会を尊重した求人スタイルへの移行に向けて

電子情報通信学会 会長声明大学・大学院生の教育機会を尊重した求人スタイルへの移行

2024年8月26日
一般社団法人電子情報通信学会
会長 山中直明

電子情報通信技術は、AI,IoTさらにはスマート社会実現のための基礎技術としてその重要性が世界中で高まっています。当学会は、この領域をカバーする日本最大級の学会です。

近年の大学や大学院の学生の就職状況においてもこの領域は極めて良好で、人手不足の様相が見られます。教育現場でも、即戦力があり、かつ創造性と問題解決能力を持った人材を育てることに日々努めています。
しかしながら、就職協定廃止後、日本におけるこの領域の就職活動は年々過熱しています。本来は長期的就業体験を行うタイプ3~4(出典:採用と大学教育の未来に関する産学協議会 2021年度報告書「産学協働による自律的なキャリア形成の推進」)がインターンシップと定義されていますが、実際は1day、2dayインターンシップと称する企業体験・説明会(就活)が行われ、実質的な就職活動が早期から開始されています。学生は長期間にわたる就職活動に不安を抱え、疲弊しきっているとも言えます。企業側も、長引く就職活動で多くの労力とコストを払っていると推察されます。この状態が続くと、実際の教育研究を行う時間が減少し、優れた人材の供給に支障をきたし、ひいては日本の産業競争力にも悪影響を及ぼすと考えられます。

海外では、基本的に卒業後に、大学や大学院での経験、業績をベースに就職選考が行われます。さらに、トップコンファレンスでは、学生たちが自信をもって自分の研究成果を発表し、その場で就職の交渉が行われることは珍しくなく、学生たちは優れた研究を行い、トップコンファレンスで発表することが就職活動となり、真に学業や研究に励む姿がポピュラーです。実際、日本でも元気でレベルの極めて高い研究を学会で発表する学生は大勢いますが、ほとんどが就職活動とは結びついておらず、また企業の注目度も十分ではありません。

そこで、以下を提案します。

  1. (1)企業の方々には、学会に対して積極的に人材発掘活動をお願いしたい。
  2. (2)現状の就職活動のスタイルを見直し、大学の実際の研究室や学会などで普段から学生との接点を持ち、コミュニケーションを取っていただきたい。
  3. (3)経済団体は、就職活動が過度な競争とならないように、就職協定を再構築し、早期の活動に一定程度の歯止めをかけることを検討していただきたい。
これらの取り組みにより、日本の科学技術は、アカデミアと産業界が連携し、人材という貴重で本質的な競争力の源泉を強化できると思います。
是非一度、学会で活躍する学生たちの本当の姿を見てください。