IEICE ICT PIONEERS WEBINARシリーズ~第45弾~
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主催:(一社)電子情報通信学会サービス委員会
私にとってのファンダメンタルズ
―エラーフリープラスチック光ファイバー(POF)の誕生に至るまで―
小池 康博(慶應義塾大学)
【開催日時】2023年12月13日(水)16:00~17:00
講演内容
Beyond 5G(6G)は、次世代の基幹的な情報通信インフラとして、あらゆる産業や社会活動の基盤となり、普及が著しく進んでいくことが見込まれています。本講演では、Beyond 5G時代を見据えたフォトニクスポリマーの最先端の研究成果をご紹介するとともに、世界最速プラスチック光ファイバーの開発に至るまでを振り返り、自分にとっての研究におけるファンダメンタルズ に戻ることの大切さを述べたいと思います。
山中直明次期会長からの紹介文
慶應義塾大学の小池康博先生を紹介いたします。 小生と、比較的近い分野の光ネットワーク、その中でもキーとなるPOF(プラスチックファイバー)の発明者であり、研究者、さらには事業を進める技術者でもいらっしゃる小池先生のウエビナーを開催します。 小池先生は、GIPOF(屈折率を段階的に中心部から外に向かって減少させ、光を効率的に閉じこめる、プラスチック製のファイバー)の発明者であり、世界トップの事業を推進している方です。このGIPOFは、いわば小池先生のライフワークで、その実現には、いばらの道だったと思います。屈折率を増やすには 不純物を入れる。それはロスを大きくしてしまうというもともと矛盾のあるアプローチです。それを変えたのが、世界の通信系の中心的研究所である、ベル研 (ニュージャージ・米国)1989年にいた時の経験にヒントがあります。きっと、その発明のきっかけや、それからの長い長い歴史や苦労をお話しいただけると思います。プラスチックファイバーは自由な加工が可能なだけではなく、比較的大口径のファイバーを作れるため、手でカットして接続できる等、いままでのファイバーで問題となる、工事の容易性を持っています。 そのため、車の中とかデータセンターとか、安くて高性能なファイバーとして期待され、いま、どんどんと入って行っています。慶應義塾大学にある KPRI(Keio Photonic Research Institute)があり、そこの所長でもいらっしゃいます。KPRIは、大学の中で、産官学連携させた、基礎研究から応用、実用化までを目指す、連携研究所です。そのお人柄にもぜひ触れてみましょう。 先生は、エンジニアのお父さんの仕事で宝塚から、信州の諏訪で、高校時代を過ごし(意外と見えないけど田舎育ち?)、慶應義塾大学工学部に入り、それから慶應の看板教授です。優しいお人柄で、先生の研究室では多くのサイエンティストが誕生し、 大学だけではなく、企業で大活躍です。じつは、趣味は研究とお答えになるのですが、ワイン好き、犬好き、ピアノ好き、さらには、鉄腕アトム好きという話を 同僚の私も知っている、おちゃめなところもあります。これから、人生をスタートさせる学生の方にも、とても夢のあるご講演になると思います。
講師略歴

小池 康博
折率分布型プラスチック光ファイバーの発明者。科学技術振興機構ERATOプロジェクト、内閣府最先端研究開発支援(FIRST)プログラム等で生まれた成果をベースに、現在NICT Beyond 5G研究開発促進事業「エラーフリーPOFによる革新的通信システムの開発」を推進中。藤原賞、紫綬褒章、SID Special Recognition Award等を受賞。