IEICE ICT PIONEERS WEBINARシリーズ~第25弾~

聴講
無料

主催:(一社)電子情報通信学会サービス委員会

企業での研究開発を経験して―ディジタル信号処理からネットワークビジョンまでー

津田 俊隆(早稲田大学GITI・顧問)

【開催日時】2022年5月20日(金)13:30~15:00

講演内容

 私は1975年から長い期間を企業の研究所で過ごし、その間様々な分野・テーマを担務し貴重な経験をさせて頂きました。このような経験から、今回頂きました機会では、特定技術の歴史的な流れを紹介するのではなく、この間取り組んできた様々な研究についての概要および当時の思いを紹介しつつ、企業での研究生活の一端を紹介できればと思っています。また現状からから当時の活動を顧みてみたいと思います。ただ、日本の企業を取り巻く環境も当時とは大きく変化しており、研究活動も様相を異にしているため直接お役に立つ話ではないかと思いますが、何かのヒントにでもなればと思います。
 簡単に経験を紹介します。基本的には通信分野の研究開発に関連した活動ですが、大きく分類するとディジタル信号処理とDSP LSI開発、ディジタル伝送方式と関連LSI開発、動画像符号化、および最終的にはネットワークビジョンへの取り組みといえます。大学院卒業後研究所に入所すると同時に、ディジタルMODEM開発プロジェクト開発に従事し、当時核となるディジタル信号処理プロセッサ(DSP)というもの自体がなかったため独自のDSP LSIの研究開発の取り組みに従事しました。その後3世代にわたるDSP LSI開発に携わり、最後は汎用プロセッサの研究開発につながっています。次に、加入者までディジタル通信を可能にするISDN加入者伝送方式および伝送用LSIの研究開発に従事しました。また伝送技術については、光通信用3R中継器LSIはじめ光通信の研究開発にも従事しています。その後無線通信やネットワークについてもマネジャーとして関与しています。通信サービスとしては、草創期の動画像符号化の研究にも取り組んでいます。ISDN、BISDNおよび動画像符号化については、企業として重要な側面である標準化活動にも参加しました。
 次第にマネージメントの役割が増え、担務として見る範囲が増えてきたある時に会社の将来の姿の在り方についての課題を受け、システムの将来ビジョンまとめに取り組みました。これをきっかけに、その後ネットワークシステムビジョンへの取り組みを行い、現役をはなれた現在も一部取り組みを続けています。
 今回は、このような研究取り組みの流れを紹介したうえで、DSP、動画像符号化、およびネットワークシステムビジョンへの取り組みについて、お手本がない課題に、あるいは草創期の課題にどのように取り組んだか、また合わせて当時どんな事を考え議論していたかを紹介し、現在の状況と照らし合わせながら紹介したいと思います。

山本剛之企画理事からの紹介文

 津田俊隆先生は、通信が電話網からインターネットへと大きく発展する時代に、富士通研究所において、ディジタル信号処理技術やその応用に関する研究開発に取り組み、国際標準化活動にも参画して技術の実用化に大きく貢献されました。研究所のマネジメントに立場を移された後にはネットワークシステムビジョンの策定などを進められ、後年には早稲田大学で後進の指導にもあたられています。本会では会長をはじめ要職を歴任され、活性化に尽力されました。今回のご講演では、新しい技術を創るところから、世の中へ提供するところまで行う企業での研究開発において、津田先生がいろいろな立場でご経験された課題や取り組み方についてお話いただきます。

講師略歴

津田 俊隆

津田 俊隆

1975年3月 東京大学電気工学科博士課程卒業。工学博士
1975年4月 株式会社富士通研究所入社。
2000年6月 同社取締役
2005年6月 同社常務取締役
2012年4月 早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
2018年4月 早稲田大学大学院国際情報通信研究センター顧問、現在に至る。