IEICE ICT PIONEERS WEBINARシリーズ~第19弾~

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主催:(一社)電子情報通信学会サービス委員会

面発光レーザーの創案と応用分野の広がり

伊賀 健一(東京工業大学・名誉教授/元学長、本会元会長)

【開催日時】2021年11月16日(火)13:30~15:00

講演内容

 面発光レーザーの発明から最近の発展までをお話します。面発光レーザー(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)とは、半導体レーザーの一つで、1977年に講演者によって発案されました。半導体基板に対して垂直に光が共振し、図のように表面から光が出るのでこのように名付けました。ウエハプロセスによって大量生産が可能です。


面発光レーザー

 共振器長を波長と同じ程度にできるので、単一波長動作が可能です。共振器長と横方向が数ミクロンの大きさにすればレーザー発振に必要なしきい値電流が0.1-1 mA以下と通常の半導体レーザーの1桁から2桁ほど小さく出来、消費電力の大幅な低減が可能です。また、2次元アレー状の特徴を活かした並列処理を可能にします。LAN、コンピュータ用マウス、レーザープリンター、スマートフォンにおける顔認証、レーザーレーダー、OCT、各種センサーなど広く用いられるようになりました。産業的にも急成長期を迎えています。IoT(Internet of Things)技術からAI(人工知能)技術の物理層を支える光源としてその動向に注目が集まっているのです。デバイスの売り上げも2025年には1兆円に達すると予測されています。レーザーの登場以降に発展してきた光エレクトロニクスの歴史を振り返り、これからの飛躍への一里塚(Milestone)ともなれば幸いです。
参考文献
[2020IGA] 伊賀健一:“面発光レーザーが輝く”、第2版(電子版)オプトロニクス、2020
[2020IGA] 伊賀健一、波多腰玄一:”面発光レーザー:原理と応用システム”アドコムメディア社、2020

高橋浩エレクトロニクスソサイエティ会長からの紹介文

 今回のwebinarには、面発光レーザーの発明者である伊賀健一先生をお招きし、発明の経緯や初期のご苦労と常温連続動作に至るまでの様々な創意工夫、その後の幅広い分野への応用研究や今後の面発光レーザーの展開に関してご講演を賜ります。1つのデバイスに関して発明から商用応用に至るまでの研究プロセスの話は私たち研究者にとって示唆に富むものとなるでしょう。また、先生は研究室の学生の指導はもちろんのこと、本会をはじめ多くの学会・国際会議の運営においても重要な役職を務められ、幅広い見識と建設的な議論を通じて後進の育成と光エレクトロニクス研究分野全体を牽引することにもご尽力されています。そのご経験を生かし、ご自身が奏者でもあるコントラバスのように重厚な心に響く話術で、わかりやすいご講演なること間違いありません。奮ってご聴講くださいませ。

講師略歴

伊賀 健一

伊賀 健一

1959年広島大学附属高等学校卒業。1963年東京工業大学理工学部卒業、1968年同大学院博士課程修了(工学博士)。同年より、東工大精密工学研究所に助手として勤務、1974年助教授、1984年教授に就任。面発光レーザー、微小光学の研究に従事。1979-1980年ベル研究所客員。2001年東工大名誉教授。2001-2007年日本学術振興会理事、2007-2012年東工大・学長。応用物理学会フェロー/微小光学研究会代表。電子情報通信学会名誉員・フェロー・会長(2002年度)。レーザー学会フェロー。紫緩褒章、東レ科学賞、市村学術賞(功績賞)、朝日賞、藤原賞、C&C賞など受賞多数。2013年フランクリン賞(ゴールドメダル・バウワー賞)、2018年瑞宝重光章。2021年応用物理学会光工学賞、IEEE Edison Medal受賞。趣味はコントラバス演奏。